34~想い、彼方に~

~消えたブオル~

オグマ「ブ、ブオル殿が消えた……」
清き風花『時空の裂け目に呑み込まれちゃいましたね……』
蒼雪の舞姫『恐らくは別の時代や場所に転移してしまったのだろうな……だがオグマ、どうしてさっき動きを止めた?』
オグマ「そ、それは、声が聴こえた気がして」
蒼雪の舞姫『声?』
オグマ「……聴こえなかったのか?」
清き風花『いいえ、何も……』
蒼雪の舞姫『気の所為ではないのか?』
オグマ「その割には、はっきりと……どこか懐かしいような声が……」
蒼雪の舞姫『まあいい。時の調律者が戻れば消えたあの男を探し出せるかもしれん』
清き風花『さすがに時空転移が絡むと、彼の力なしではお手上げですからね』
オグマ「ブオル殿……」


~なつかしき場所~

ブオル「さっきまで北大陸にいたのに、いきなりグランマニエの王都に飛ばされるなんてなあ……もうなんか、懐かしい空気だぜ」

ブオル「っていうか、ここはいつの王都なんだ? 帰ってきた訳じゃ……ないよな?」

ブオル「……いや、違うな。俺の時代にしては、城下町に知り合いが誰もいない」

ブオル「何にせよ、手がかりを探すしかないか。またオバケとか言われなきゃいいけど……なるべく顔を隠して、と……」

ブオル「…………我ながら、こそこそ行動するには向かない見た目だよなあ、ほんと」


~ホイップを追って~

ブオル「貴族街の方から人が逃げていく……くそ、なんでそっちに向かっちまうんだよホイップ!」

ブオル「いや、あいつらしいといえばらしいけど……ちょっとは年齢考えてくれよなあ……」

ブオル「とにかく追わないと……もし現れたっていう魔物が“総てに餓えし者”の眷属だってなら、いくらホイップでも……」

ブオル「無事でいてくれ……ひとりで無茶するんじゃねえぞっ!」


~秘密のインク~

ブオル「火で炙ると色が浮き上がるインクか……」
アングレーズ「あたし達はよく使っていたから、その香りはよく知っているわ」
モカ「最初に手紙を見つけた時、ボクに嗅がせてくれればすぐわかったんだけどなー」
クローテ「普通わざわざ嗅がせたりはしないだろう」
ブオル「自分だけ読んですぐしまっちゃったからなあ」
メリーゼ「手紙に秘密のメッセージを隠して……なんだか素敵ですね」
モカ「知ってると炙り出す時わくわくするんだよ、これ」
カカオ「けど今の今まで気づかなかったし、ずっとそのままの可能性もあったんじゃ?」
アングレーズ「それならそれでいいのよ。そっと隠すこと自体が楽しいんだから」
ランシッド『悪戯を仕掛けているような心地だよねえ』
カカオ「ふーん……?」
ガレ「お子様なカカオどのにはまだわからないでござるな」
パンキッド「手紙とかマメなことするタイプにも見えないしねえ」
カカオ「うっ、うるせー!」
モカ「ていうか、パン姐はそれ棚上げしてない……?」


~また惚れ直す~

クローテ「また惚れ直した、か……」
ガレ「ら、らぶらぶでござるなあ……」
ブオル「うぉ、聞かれてたのか」
ガレ「それがし達の耳がいいこと、すっかり忘れてたでござるな?」
ブオル「たはは、いろいろあってそれどころじゃなかった……」
クローテ「……ひいおばあさまは、幼い私によくブオル殿の話を聞かせてくださいました。普段は厳しく凛としているのに、その時の表情はやわらかく優しかったのをよく覚えています」
ブオル「そうか……」
クローテ「私にはまだあまり恋愛というものがピンと来ませんが、それでもお二人が互いに想い合う、素敵な夫婦だというのは伝わってきます」
ガレ「ブオルどのが奥方の話をする時も、いつもとても幸せそうでござる」
ブオル「へへ、だって幸せだもん。何度だって惚れ直すぜ」
クローテ「さ、さらりと言われると、なんだかこちらが照れてしまう……」
ガレ「最強夫婦でござるなあ」


~新鮮な衣装~

ブオル「ホイップには敵わねえなあ」
カカオ「いきなり惚気かよ、おっさん」
ブオル「んー、なんかな、この服を用意したのはやっぱりホイップで、いつか必要になると踏んでたらしいんだ」
クローテ「不思議なこともあるものですね」
ブオル「ほんとになあ。ん? なんかまだ手紙に小さく書いてあるな……」

『追伸。あの衣装姿のお前をもっと目に焼きつけておきたかったのが心残りだ。どうにかして写真か何か撮って残しておけ。なんなら着て帰って直接見せろ』

ブオル「む、無茶言うなあ……んなことしたら歴史に影響あるだろ……」
クローテ「どうかしましたか?」
ブオル「いや、俺はほんとに愛されてるなって」
カカオ「?」
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