28~可能性の光~
結局、パンキッドには時空干渉やら何やら、事情を話す羽目になってしまった。
まあ、過去から来たブオルだって最終的には知られては不味い箇所の記憶を消されてしまうのだろうから、パンキッドに対しても場合によってはそうなるというだけらしい。
「喋る毛玉は精霊で、過去や未来から来た人間に、時空干渉……何もない所から二十年前の化物が出てきたのも、そういう事かい」
どのみちカカオ達のことを只者ではないと睨んではいたが、ようやく合点がいったパンキッドが腕組みをして唸る。
「そういうわけだ……正直、様々な偶然が重ならなければ死んでいた身としては、半端な覚悟でついて来られるとかえって邪魔なんだが」
切れ長の目で彼女を見つめるクローテは、実際に時空干渉を行っている大元と思われるテラに殺されかけただけに厳しい言葉をぶつけるが、
「クロ兄、危ないから巻き込みたくないって素直に言えばいいのに」
「クローテどのは不器用優しいでござるからなあ」
「うっ、うるさい!」
後ろからひょこっと顔を出したモカとガレによって台無しにされ、赤面する。
「あはは! アンタの仲間は楽しいやつらだね、カカオ」
「ま、まあな」
どうにも緊張感に欠ける仲間達に、カカオやランシッドが苦笑いをする。
そして、ランシッドは大きな溜息を吐くと、メリーゼの肩の手乗り毛玉から青年の姿にかわり、パンキッドに向き直った。
『わかった。じゃあパンキッド、もう俺はどうこう言わない。ただし、みんなの言う通り命は保証できないし、目的のある旅だから自由に思うままとはいかないよ』
「わかってるよ」
頷く少女の真剣な表情を見つめ、精霊はもうないはずの肉体に胸をチクリと刺すような痛みを錯覚した。
(アングレーズ達の知る未来……メリーゼ達の全滅を防ぐには、このぐらいの不確定要素が必要なのかもしれない。これは賭けだな……)
時空を司る精霊である彼にとっても、未来は不明瞭なものだ。
カレンズ村の滅びやクローテの死を回避して少しは歪んだ歴史を修正できたものの、圧倒的な力をもつテラにはまだまだわからないことが多い。
カカオを残して全滅、そしてそのカカオまでテラと刺し違えたという未来を変えるには……
「そんな不安そうな顔しないでよ、精霊サン」
『今まで何かしら二十年前に活躍した英雄絡みの人間ばかりだったからね。通りすがりに仲間が増える、っていうのは新鮮なのさ』
「悪かったね、通りすがりの一般人で」
時精霊の言いぐさにパンキッドが顔をひきつらせるが、
「……それなんだけどさ、パンキッドって名前どっかで聞いた気がするんよねぇ」
というモカの言葉で空気は変わる。
「もしかしてさ、パン姐の両親の名前……エクレアとラクレム、とかじゃない?」
「あれ? そうだけどなんで知って……」
「やっぱり! フローレットおばちゃんの友達でたまに城に来るんだよ。娘がいるって言ってた」
その娘の話で聞き覚えがあったんだ、と言われたパンキッドは思わぬ偶然に驚く。
「う、うそだろ……?」
「ひょっとして、ほんとにただの偶然じゃないのかもね。よろしく、パンキッドちゃん♪」
アングレーズににっこりと極上の微笑みを向けられ、気恥ずかしさに目をそらすパンキッド。
『パンキッドさんの両親ってフローレット王妃がさらわれた時、騙されてつけられた見張りの人たちですよね……あの洞窟の』
「妙なところで繋がる縁だな……」
当時を知る風精霊のつぶやきに、冒険の序盤を思い出したクローテはなんともいえない顔をする。
こうして、彼女も仲間の一員となるのだった。
まあ、過去から来たブオルだって最終的には知られては不味い箇所の記憶を消されてしまうのだろうから、パンキッドに対しても場合によってはそうなるというだけらしい。
「喋る毛玉は精霊で、過去や未来から来た人間に、時空干渉……何もない所から二十年前の化物が出てきたのも、そういう事かい」
どのみちカカオ達のことを只者ではないと睨んではいたが、ようやく合点がいったパンキッドが腕組みをして唸る。
「そういうわけだ……正直、様々な偶然が重ならなければ死んでいた身としては、半端な覚悟でついて来られるとかえって邪魔なんだが」
切れ長の目で彼女を見つめるクローテは、実際に時空干渉を行っている大元と思われるテラに殺されかけただけに厳しい言葉をぶつけるが、
「クロ兄、危ないから巻き込みたくないって素直に言えばいいのに」
「クローテどのは不器用優しいでござるからなあ」
「うっ、うるさい!」
後ろからひょこっと顔を出したモカとガレによって台無しにされ、赤面する。
「あはは! アンタの仲間は楽しいやつらだね、カカオ」
「ま、まあな」
どうにも緊張感に欠ける仲間達に、カカオやランシッドが苦笑いをする。
そして、ランシッドは大きな溜息を吐くと、メリーゼの肩の手乗り毛玉から青年の姿にかわり、パンキッドに向き直った。
『わかった。じゃあパンキッド、もう俺はどうこう言わない。ただし、みんなの言う通り命は保証できないし、目的のある旅だから自由に思うままとはいかないよ』
「わかってるよ」
頷く少女の真剣な表情を見つめ、精霊はもうないはずの肉体に胸をチクリと刺すような痛みを錯覚した。
(アングレーズ達の知る未来……メリーゼ達の全滅を防ぐには、このぐらいの不確定要素が必要なのかもしれない。これは賭けだな……)
時空を司る精霊である彼にとっても、未来は不明瞭なものだ。
カレンズ村の滅びやクローテの死を回避して少しは歪んだ歴史を修正できたものの、圧倒的な力をもつテラにはまだまだわからないことが多い。
カカオを残して全滅、そしてそのカカオまでテラと刺し違えたという未来を変えるには……
「そんな不安そうな顔しないでよ、精霊サン」
『今まで何かしら二十年前に活躍した英雄絡みの人間ばかりだったからね。通りすがりに仲間が増える、っていうのは新鮮なのさ』
「悪かったね、通りすがりの一般人で」
時精霊の言いぐさにパンキッドが顔をひきつらせるが、
「……それなんだけどさ、パンキッドって名前どっかで聞いた気がするんよねぇ」
というモカの言葉で空気は変わる。
「もしかしてさ、パン姐の両親の名前……エクレアとラクレム、とかじゃない?」
「あれ? そうだけどなんで知って……」
「やっぱり! フローレットおばちゃんの友達でたまに城に来るんだよ。娘がいるって言ってた」
その娘の話で聞き覚えがあったんだ、と言われたパンキッドは思わぬ偶然に驚く。
「う、うそだろ……?」
「ひょっとして、ほんとにただの偶然じゃないのかもね。よろしく、パンキッドちゃん♪」
アングレーズににっこりと極上の微笑みを向けられ、気恥ずかしさに目をそらすパンキッド。
『パンキッドさんの両親ってフローレット王妃がさらわれた時、騙されてつけられた見張りの人たちですよね……あの洞窟の』
「妙なところで繋がる縁だな……」
当時を知る風精霊のつぶやきに、冒険の序盤を思い出したクローテはなんともいえない顔をする。
こうして、彼女も仲間の一員となるのだった。