27~闘士舞うサラマンドル~

~闘技場のアイドル~

ブオル「あのパンキッドって子、なかなかやるなあ」
モカ「おまけにちょっと可愛いもんだから、女っ気のないここじゃ野郎共の声援がすごいね」
クローテ「みょ、妙にトゲがないか?」
アングレーズ「あら、でもあの子アイドル呼ばわりは本意じゃないみたいよ?」
ガレ「そのようでござるな」
メリーゼ「なんにせよ、実力は本物です。素早い身のこなしから一点集中で繰り出す一撃の威力……」
ブオル「メリーゼと似ているようで、また違うタイプだな。我流っぽい動きはどっちかと言うとカカオに近い」
メリーゼ「はい。学ぶことは多そうです」
モカ「まじめだなぁ」
ランシッド『そういう子だからね』


~観客席にて~

ガレ「カカオどの、そこでござる! あっ危ない! にゃー!」
クローテ「もう少し静かに観られないのか」
ブオル「でも、熱くなっちまうのもわかるよ。おまけに身内が出てるもんだしな」
アングレーズ「お父さんとしても心配かしら?」
ブオル「そうだなあ、ところどころ危なっかしくてひやっとさせられるけど……カカオならきっと大丈夫だろ」
モカ「ほんと、もうすっかりみんなのパパだよねブオルおじちゃん……ねぇ、メリーゼ姉?」
メリーゼ「……」
モカ「メリーゼ姉、どったの?」
メリーゼ「えっ!? あ、えっと……なんでもありません」
アングレーズ「随分心配そうにカカオ君を見てるのね」
メリーゼ「い、いえ、その……」
モカ「ブオルおじちゃんも言ってたし、カカオ兄なら大丈夫だよ」
メリーゼ「そ、そうね。大丈夫、よね」
クローテ「メリーゼ……?」


~キケンなフンイキ?~

ランシッド『決勝戦はやっぱりカカオとパンキッドの一騎討ちになったね』
ガレ「それにしてもあのふたり、随分仲が良さげというか……パンキッドどのはよくカカオどのに喋りかけているでござるな」
ブオル「確かに口元が動いているが……」
モカ「このうるささでよくわかるねえ」
クローテ「集中すればどうにか、な。彼女の声はよく通るからわかりやすい」
メリーゼ「な、なんて言ってるんですか?」
ガレ「楽しい、カカオどのといつまでもこうしていたい、と」
メリーゼ「!」
モカ「えっ」
アングレーズ「あらあら」
クローテ「お、おいガレ、間違ってはいないがその言い方だと……」
ガレ「てへぺろでござる。けど彼女がカカオどのになついているっぽいのは本当でござろう?」
クローテ「それは、まあ……」
モカ「なんかふたりだけわかってるのいいなあ。ボクもなんか遠くの音声を拾う装置でも作ろうかなあ」
アングレーズ「あら、それは楽しそうね」
クローテ「悪用するなよ?」
モカ「うぐっ、し、ないよー?」
ブオル「おいおい、そこで目をそらすなよ」
ランシッド『ま、実体のない精霊ならあそこまで行って直接聴けるけどね』
清き風花『ですね』


~予感、的中~

ランシッド『また空間に穴が!』
モカ「アンが予知したのはこれだったんだね!」
アングレーズ「そのようね。早くみんなを避難させないと……」
ガレ「手分けして行くしかないでござるな」
クローテ「まずは私とガレが反対側の客席に!」
ブオル「お前らは身軽で足が速いからな。頼む!」
メリーゼ「わたしは西側、ブオルさんは東側に行ってください!」
ブオル「あいよ!」
モカ「ボクとアンはこの近辺で魔物の対処したり、遠くから魔術で援護するよ」
アングレーズ「機動力はないけど、対処できる範囲は広いわよ」
ブオル「よし! それじゃあみんな、また後でな!」
クローテ「はい!」
メリーゼ「ええ!」


~荒っぽい?~

パンキッド「なあ、その腕輪なんだけど……」
カカオ「大会には着けていくつもりがなかったから仲間に預けてたんだよ」
パンキッド「そうじゃなくて、さっきなんかドスッて刺さってなかったか?」
カカオ「あ、ああ、仲間が魔術で飛ばして届けてくれたからな」
パンキッド「足元ギリギリだったろ……お前の仲間もなかなか荒っぽいんだな」
カカオ「いやメリーゼはそこまで荒っぽくはない、はず……」
パンキッド「なんでだんだん語尾が消えていくんだ」
カカオ「……結局だいたいブッ飛ばして解決してるし、突撃娘だし……言われてみれば、そうなのか……?」
パンキッド「アタシに聞くなよ……メリーゼ、ね」
カカオ「どうかしたのか?」
パンキッド「いや、別に」


~混乱の収束~

ブオル「みんな、無事か!?」
ガレ「どうにかなったでござるな」
クローテ「まったく、ここのやかましさも相当だがあの司会者の声を増幅する装置はどうも苦手だ……」
アングレーズ「けど、ああやって声を届けてくれたお陰で騒ぎも早く収束しそうよ」
ガレ「耳がキーンとするけど皆のためには必要なことでござる」
モカ「それにしても、カカオ兄が腕輪をわざわざ外して大会に出てたなんてねえ」
ブオル「確かに大会には人間しか出ないからな。腕輪をしなくても問題はない……けど、俺達はこいつをつけた、少なからず能力を引き出された状態に慣れちまってる」
クローテ「カカオにしては、それなりに考えた上での選択でしたね。もしもの時のためにメリーゼに託したのも含めて」
モカ「えー? 優勝賞品が欲しいなら楽に勝てた方が効率的じゃん?」
クローテ「それだと他の出場者に不誠実だろう」
モカ「睨まないでクロ兄ぃ、冗談だってば」
ガレ「カカオどののそういう真っ直ぐで気持ちのいいところ、好きでござるなあ。ねっ、メリーゼどの?」
メリーゼ「そうですね」
アングレーズ「何のあれもなくさらっと返せちゃうのねぇ」
ガレ「それもメリーゼどのでござるな!」
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