27~闘士舞うサラマンドル~
片方が打てばもう片方が防ぎ、反撃に転じればひらりと避けられて。
どちらも決定打を与えられないまま、武闘大会の決勝戦は白熱していく。
「いけーパンキッドちゃーん!」
「職人の兄ちゃんも負けるなー!」
見応えのある試合に観客達も楽しげで、あちこちから声援が飛ぶ。
「楽しいね! いつまでもこうしていたいよ!」
気の抜けない戦いの最中、パンキッドはカカオにそう笑いかける。
「オレはいつまでもはちょっとな……やらなきゃいけないことがあるんだ、よっ!」
大振りな戦鎚の一撃をパンキッドがかわし、一旦ふたりの距離が開いた。
「なんだよ、あの腕輪を手に入れることか?」
「……いや。もっと大変な……」
カカオの言葉にパンキッドが目を瞬かせた、その時。
『空間の歪みが……!』
「来たわっ!」
客席でランシッドとアングレーズがほぼ同時に言葉を発した。
すると闘技場内のあちこちで空中に穴が開き、どす黒い負の化物がぼとぼとと落ちてくる。
「ひえぇっ!」
「な、なんだ!?」
場の空気は一転、恐怖と混乱に包まれた。
カカオとの試合を楽しんでいたパンキッドも何が起きたのかと辺りを見回す。
「なんだよ、これ……何もないところから、魔物?」
「これか、アングレーズの言っていた予感は……」
出入り口の限られたこんな閉鎖空間で魔物の襲撃など、どれほどの被害が出るかわからない。
どう対処したものか……まずは、と客席にいる仲間達を探していたカカオだったが、
「カカオ君!」
「うぉっ!?」
メリーゼの声と共に、カカオの足元に氷の刃が勢い良く刺さった。
さすがの彼も一瞬驚くが、魔術の氷はすぐさま霧散して大気に還り、あとには布にくるまれた腕輪……この大会の優勝賞品と同じものが残る。
「お前、その腕輪……」
「オレはこの腕輪を作った職人の……多くの町や人々を救った名工の、孫だ」
カカオはすぐに腕輪をはめ、パンキッドと同様に目を丸くしていた司会者に詰め寄った。
「この大会の優勝賞品にされてる腕輪、そいつをパンキッドに渡せ!」
「えっ、ですが……」
「あの化物は二十年前に世界中で暴れまわった魔物だ。あいつらには普通の攻撃は効かねえ! 腕輪が必要なんだよ!」
戸惑う司会者の視界の端では異変を察知した大会の出場者達が戦っているが、その誰ひとり魔物を倒せていない。
「こ、こいつら、いくら攻撃しても倒せねえ!」
闘士達の動揺の声が逃げ惑う人々の不安を煽る。
それどころか、辛うじて倒したと思われた魔物が平然と起き上がる光景まで見えて……
「ひっ、わ、わかりました!」
背に腹はかえられないと判断した司会者によって、パンキッドに腕輪が手渡された。
「……普通の攻撃は効かないって言ったな。この腕輪を身につけると倒せるのか?」
「それはお前次第だ。けど……お前に託すのが、ここの人達を救える可能性が一番高い選択だと思ったし、たぶんじいちゃんもそうしただろうから」
そんなことを言われては、目の前の腕輪が急にずっしりと重いものに感じられてしまうが、
「責任重大だね……」
「お前だってあれ、ぶん殴りたいだろ?」
カカオの言葉で、パンキッドは破顔した。
「はは、確かにね! ひとの楽しみ邪魔するヤツは……」
そして彼女が拳を打ち鳴らすと、その気合に呼応するように腕輪が煌めき、
「片っ端からブッ飛ばす!」
その周囲に、弾けるような金色の闘気が巻き起こった。
どちらも決定打を与えられないまま、武闘大会の決勝戦は白熱していく。
「いけーパンキッドちゃーん!」
「職人の兄ちゃんも負けるなー!」
見応えのある試合に観客達も楽しげで、あちこちから声援が飛ぶ。
「楽しいね! いつまでもこうしていたいよ!」
気の抜けない戦いの最中、パンキッドはカカオにそう笑いかける。
「オレはいつまでもはちょっとな……やらなきゃいけないことがあるんだ、よっ!」
大振りな戦鎚の一撃をパンキッドがかわし、一旦ふたりの距離が開いた。
「なんだよ、あの腕輪を手に入れることか?」
「……いや。もっと大変な……」
カカオの言葉にパンキッドが目を瞬かせた、その時。
『空間の歪みが……!』
「来たわっ!」
客席でランシッドとアングレーズがほぼ同時に言葉を発した。
すると闘技場内のあちこちで空中に穴が開き、どす黒い負の化物がぼとぼとと落ちてくる。
「ひえぇっ!」
「な、なんだ!?」
場の空気は一転、恐怖と混乱に包まれた。
カカオとの試合を楽しんでいたパンキッドも何が起きたのかと辺りを見回す。
「なんだよ、これ……何もないところから、魔物?」
「これか、アングレーズの言っていた予感は……」
出入り口の限られたこんな閉鎖空間で魔物の襲撃など、どれほどの被害が出るかわからない。
どう対処したものか……まずは、と客席にいる仲間達を探していたカカオだったが、
「カカオ君!」
「うぉっ!?」
メリーゼの声と共に、カカオの足元に氷の刃が勢い良く刺さった。
さすがの彼も一瞬驚くが、魔術の氷はすぐさま霧散して大気に還り、あとには布にくるまれた腕輪……この大会の優勝賞品と同じものが残る。
「お前、その腕輪……」
「オレはこの腕輪を作った職人の……多くの町や人々を救った名工の、孫だ」
カカオはすぐに腕輪をはめ、パンキッドと同様に目を丸くしていた司会者に詰め寄った。
「この大会の優勝賞品にされてる腕輪、そいつをパンキッドに渡せ!」
「えっ、ですが……」
「あの化物は二十年前に世界中で暴れまわった魔物だ。あいつらには普通の攻撃は効かねえ! 腕輪が必要なんだよ!」
戸惑う司会者の視界の端では異変を察知した大会の出場者達が戦っているが、その誰ひとり魔物を倒せていない。
「こ、こいつら、いくら攻撃しても倒せねえ!」
闘士達の動揺の声が逃げ惑う人々の不安を煽る。
それどころか、辛うじて倒したと思われた魔物が平然と起き上がる光景まで見えて……
「ひっ、わ、わかりました!」
背に腹はかえられないと判断した司会者によって、パンキッドに腕輪が手渡された。
「……普通の攻撃は効かないって言ったな。この腕輪を身につけると倒せるのか?」
「それはお前次第だ。けど……お前に託すのが、ここの人達を救える可能性が一番高い選択だと思ったし、たぶんじいちゃんもそうしただろうから」
そんなことを言われては、目の前の腕輪が急にずっしりと重いものに感じられてしまうが、
「責任重大だね……」
「お前だってあれ、ぶん殴りたいだろ?」
カカオの言葉で、パンキッドは破顔した。
「はは、確かにね! ひとの楽しみ邪魔するヤツは……」
そして彼女が拳を打ち鳴らすと、その気合に呼応するように腕輪が煌めき、
「片っ端からブッ飛ばす!」
その周囲に、弾けるような金色の闘気が巻き起こった。