25~流星、閃く時~

 山奥に響き渡る、剣戟の音。
 硬化した皮膚が作り出した黒い鎧を身に纏い、魔物と化した過去のデュランダルを相手に、カカオ達が戦っている。
 もはや剣すらもその腕に同化させた化物は、大柄なブオルが降り下ろす斧の一撃も難なく受け止めてみせる。

「なんだコイツ、細いなりしてなんつー馬鹿力だよ!」

 腕力には自信があるであろうブオルが押し負かされてよろめいた。
 その隙を逃さず更に斬り込もうとするデュランダルの前に、割って入るカカオとメリーゼ。

「デュランダル騎士団長は魔術は使いませんが、大剣を軽々と振り回すパワーファイターです」
『その力が魔物によって増強されているんだろう……簡単な相手じゃないよ』

 メリーゼの言葉にランシッドもそう続ける。

「ごちゃごちゃうるせぇ!」
「うわぁっ!」

 でたらめな力に弾き飛ばされたカカオが、岩壁に背中を打ちつけてしまう。

「カカオ!」

 クローテがすかさず駆け寄り、治癒術をかける。
 それでもすぐに立ち上がるのは厳しいのか、カカオの足はふらついていた。

「ぐ、一撃だけでも貰うときっついな……」
「単純な力のぶつかり合いではこちらが不利でござるか……」

 デュランダルの足元に倒れていたカッセを抱き抱え、戦場から離れた壁際に避難させていたガレは後に父になる小柄な聖依獣に視線を移す。

(ちちうえ……)

 デュランダルが魔物化した現場に居合わせて襲われてしまったのだろうカッセは気を失っているが、呼吸で上下する胸や微かに漏れる呻き、何より実の息子であるガレの存在に影響が起きていないことからどうにか無事らしいことはわかる。

……わかっていても、心臓に悪い光景には違いないが。

「ガレ、やれるか?」
「それがしは問題ないでござる」

 気功術で多少は回復させたものの、力なく横たわるカッセが気掛かりなガレは一瞬そちらに目を向けるが、これ以上戦線を離れるのは他の仲間が危険だ。

「力押しがダメなら、別の方向から崩すしかなさそうでござるな」
「何か手はあるのか?」

 尋ねるクローテにガレは笑顔で、

「隙を作って魔術でどーん! ぐらいしか浮かばぬでござる」
「……まあ、そんなものか」

 予想通りの答えだが、基本的だろう。
 その隙をどうやって作るのかが問題ではあるのだが……

「わたしが、やってみます」

 そう発言したのは、双剣の少女だった。

「わたしが突破口を開きます。ガレさんはそれを拡げて、クローテ君は魔術の詠唱を!」
「じゃあ防御はおじさんに任せろー!」

 この相手は、皆の力をひとつにせねば。
 仲間達に目配せをすると、瑠璃色の長い髪をなびかせ、メリーゼは地を蹴った。
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