24~はじまりの場所で~
テラの時空干渉により突然魔物化を始めたデューと、消滅が始まったモカ。
すぐにでも原因を突き止め、元に戻してやりたいが……
「パパ、なんか心当たりとかないの?」
「あるとすればヤツとの最終決戦……いや、まてよ」
デューは娘に言われて苦しみに俯いていた顔を上げ、契約精霊の顔を見た。
「水辺の乙女……昔お前がオレに見せた“もしもの可能性”……あの幻影の中だとオレが魔物化していたよな」
『……ええ』
水煙を纏った美女は静かに頷き、事情を知らないカカオ達のために言葉を続ける。
『私と契約を結ぶためやって来たデューを試すのに、私は彼のかつての過ちを幻として見せました。一度記憶を失い“デュー”として仲間達に出会う前の……簡単に言ってしまえば、調子に乗った若造だった頃ですね』
「魔物に取り憑かれていた王様に命令されて、シブースト村近くの山奥へ聖依獣を狩りに……深く考えず、ただ乱暴に剣を振るった」
「ッ!」
聖依獣の血を引くクローテとガレが、びく、と身を強張らせる。
僅かとはいえ怯えの色を滲ませた彼らに、デューは改めて胸を抉られた心地になった。
「ごめんな、ひどいよな。今思えば、バカなことをしてた。その罰がなくした記憶と、子供の姿だった訳なんだが」
『……そこまでは記憶を取り戻した貴方が知る事実。ですが、本当はまだ曖昧な箇所があるのではないですか?』
ランシッドはいつもの青年の姿に戻ると、彼らの話を聞きながら目を閉じて探るように意識を集中させる。
『時空の歪み……見つけた。確かにミレニア達と出会う前だ』
「じゃあ行くか! モカは、えーっと……デュランダルさんの傍にいた方がいいのか?」
カカオが心配そうに、あちこち消えかけた少女に問いかける。
彼女の性格上、自分もついて行きたがりそうではあるが、今の状態で戦闘するのは不安だ。
「ボクは……」
「モカ……傍にいてくれねーかな。その方が正気保てそうだ」
父に呼ばれ、少女は小さく驚きの声をこぼした。
うずくまったままじっと動かなくなってしまったデューは、恐らくもうだいぶ辛いのだろう。
「暴れだしたら全力でぶん殴っていいからな。頼む」
「わ、わかった! 容赦なくブッ飛ばすよ!」
『私もついて、暴走を出来るだけ抑えています。両手に花なのですから、みっともない姿は見せないでくださいね、デュー』
「はは、厳しいねえ」
ひきつった笑みを浮かべながら、デューはランシッドに目配せをする。
『……じゃあ、モカを除いたメンバーで行こうか』
「あたしも残るわ。万が一おじさまが暴走しても、あたしのゴーレムならしばらくはおさえられると思うから」
アングレーズはそう言って地のマナを集めると、土塊から土人形を生み出した。
大柄なブオルよりもさらに大きくがっしりとした体躯は、なるほど耐久力も高そうだ。
『その方が安心か……わかったよ』
「なるべく早く帰ってくるからな!」
「ええ、いってらっしゃい」
過去へ転移していくカカオ達を笑顔で見送るアングレーズ。
デューにとっては両手どころか大輪の花が更に増えたこの状況だが、
「この状況じゃ何もできねーからなぁ……」
「パパ、一応言うけどアンはボクの友達で、本来ボクより年下だからね……?」
『しかも仲間の娘に手を出すとか、最低にも程があるでござる……ですよ?』
両サイドの花達に一斉に睨まれてしまい「冗談だって」と降参のポーズをとるのだった。
すぐにでも原因を突き止め、元に戻してやりたいが……
「パパ、なんか心当たりとかないの?」
「あるとすればヤツとの最終決戦……いや、まてよ」
デューは娘に言われて苦しみに俯いていた顔を上げ、契約精霊の顔を見た。
「水辺の乙女……昔お前がオレに見せた“もしもの可能性”……あの幻影の中だとオレが魔物化していたよな」
『……ええ』
水煙を纏った美女は静かに頷き、事情を知らないカカオ達のために言葉を続ける。
『私と契約を結ぶためやって来たデューを試すのに、私は彼のかつての過ちを幻として見せました。一度記憶を失い“デュー”として仲間達に出会う前の……簡単に言ってしまえば、調子に乗った若造だった頃ですね』
「魔物に取り憑かれていた王様に命令されて、シブースト村近くの山奥へ聖依獣を狩りに……深く考えず、ただ乱暴に剣を振るった」
「ッ!」
聖依獣の血を引くクローテとガレが、びく、と身を強張らせる。
僅かとはいえ怯えの色を滲ませた彼らに、デューは改めて胸を抉られた心地になった。
「ごめんな、ひどいよな。今思えば、バカなことをしてた。その罰がなくした記憶と、子供の姿だった訳なんだが」
『……そこまでは記憶を取り戻した貴方が知る事実。ですが、本当はまだ曖昧な箇所があるのではないですか?』
ランシッドはいつもの青年の姿に戻ると、彼らの話を聞きながら目を閉じて探るように意識を集中させる。
『時空の歪み……見つけた。確かにミレニア達と出会う前だ』
「じゃあ行くか! モカは、えーっと……デュランダルさんの傍にいた方がいいのか?」
カカオが心配そうに、あちこち消えかけた少女に問いかける。
彼女の性格上、自分もついて行きたがりそうではあるが、今の状態で戦闘するのは不安だ。
「ボクは……」
「モカ……傍にいてくれねーかな。その方が正気保てそうだ」
父に呼ばれ、少女は小さく驚きの声をこぼした。
うずくまったままじっと動かなくなってしまったデューは、恐らくもうだいぶ辛いのだろう。
「暴れだしたら全力でぶん殴っていいからな。頼む」
「わ、わかった! 容赦なくブッ飛ばすよ!」
『私もついて、暴走を出来るだけ抑えています。両手に花なのですから、みっともない姿は見せないでくださいね、デュー』
「はは、厳しいねえ」
ひきつった笑みを浮かべながら、デューはランシッドに目配せをする。
『……じゃあ、モカを除いたメンバーで行こうか』
「あたしも残るわ。万が一おじさまが暴走しても、あたしのゴーレムならしばらくはおさえられると思うから」
アングレーズはそう言って地のマナを集めると、土塊から土人形を生み出した。
大柄なブオルよりもさらに大きくがっしりとした体躯は、なるほど耐久力も高そうだ。
『その方が安心か……わかったよ』
「なるべく早く帰ってくるからな!」
「ええ、いってらっしゃい」
過去へ転移していくカカオ達を笑顔で見送るアングレーズ。
デューにとっては両手どころか大輪の花が更に増えたこの状況だが、
「この状況じゃ何もできねーからなぁ……」
「パパ、一応言うけどアンはボクの友達で、本来ボクより年下だからね……?」
『しかも仲間の娘に手を出すとか、最低にも程があるでござる……ですよ?』
両サイドの花達に一斉に睨まれてしまい「冗談だって」と降参のポーズをとるのだった。