24~はじまりの場所で~
――青年は、戦士の顔になっていた。
初めて会った時とはまるで別人のそれは、精悍で、けれども悲哀に満ちていて。
度重なる激戦ゆえか、それともかつては賑やかだった周りに今は誰もいなくなってしまったからか。
『……これが最後になるかもな』
ぽつりと、青年が呟いた。
『みんな、みんないなくなっちまった。けど、ようやっと追い詰めたんだ……だから、これが最後。時空干渉は、これで食い止める』
最後、という言葉に深く深く感慨をこめる青年を、ただ見上げることしかできない少年。
(さいご……)
倒すべき相手のことだけを指しているとは感じられなかった。
青年は恐らく、戻ってこない……直感がそう告げているのに。
『……じいちゃんの顔も見ておきたかったけど、たぶん今オレひっでえ顔してるよな。こんな顔見せられねーなあ』
『っ……』
『それじゃあ、元気でな』
いかないで。
その言葉を吐き出すには去り行く青年の背にあるものがあまりにも重たくて、少年の喉をきゅっと絞めつけた……――
「カカオどのっ!」
跳ね起きる、そんな表現がしっくりくるような目覚めだった。
悪夢に魘された体は睡眠時間の割に重く、呼吸が荒く……そして妙に首が痛む。
「……なん、だよ?」
「あ……」
夢の中で追い縋りたかった人物の驚いた顔で、ガレは我にかえった。
「ゆめ、でござるか……」
「もしかして、未来のオレの?」
そう尋ねるカカオは夢の中とは違って、普通の……世界の命運と仲間の遺志を背負った英雄ではない、ごく普通の青年に見えた。
既に起きて支度をしていたクローテとブオルが手を止め、心配そうにのぞきこむ。
「大丈夫か? すごい汗だぞ」
「こ、これしきのこと、大丈夫でござる!」
こんなことで余計な心配をさせてはいけない。
握り拳をつくって元気アピールをするガレだったが、それをじとりと睨んだクローテがつかつかと歩み寄ると指先でガレの額を思いっきり弾いた。
「ぎにゃ!?」
「……汗臭いんだよ。一回シャワー浴びてこい」
そんなに臭うだろうかと腕を近付けて嗅ぐガレを「さっさと行け」と後ろから蹴って追い出すクローテ。
ちょっと前までは考えられなかった距離感に、二人で行動している間にいろいろあったのだろうことがうかがえる。
「泣きそうな顔してるから洗ってこいって素直に言えば良かったんじゃねーの?」
「うるさい。聴こえるだろう」
くく、と笑いを噛み殺すカカオとブオルを振り返り、クローテはきりりとした切れ長の目を更に鋭くさせた。
初めて会った時とはまるで別人のそれは、精悍で、けれども悲哀に満ちていて。
度重なる激戦ゆえか、それともかつては賑やかだった周りに今は誰もいなくなってしまったからか。
『……これが最後になるかもな』
ぽつりと、青年が呟いた。
『みんな、みんないなくなっちまった。けど、ようやっと追い詰めたんだ……だから、これが最後。時空干渉は、これで食い止める』
最後、という言葉に深く深く感慨をこめる青年を、ただ見上げることしかできない少年。
(さいご……)
倒すべき相手のことだけを指しているとは感じられなかった。
青年は恐らく、戻ってこない……直感がそう告げているのに。
『……じいちゃんの顔も見ておきたかったけど、たぶん今オレひっでえ顔してるよな。こんな顔見せられねーなあ』
『っ……』
『それじゃあ、元気でな』
いかないで。
その言葉を吐き出すには去り行く青年の背にあるものがあまりにも重たくて、少年の喉をきゅっと絞めつけた……――
「カカオどのっ!」
跳ね起きる、そんな表現がしっくりくるような目覚めだった。
悪夢に魘された体は睡眠時間の割に重く、呼吸が荒く……そして妙に首が痛む。
「……なん、だよ?」
「あ……」
夢の中で追い縋りたかった人物の驚いた顔で、ガレは我にかえった。
「ゆめ、でござるか……」
「もしかして、未来のオレの?」
そう尋ねるカカオは夢の中とは違って、普通の……世界の命運と仲間の遺志を背負った英雄ではない、ごく普通の青年に見えた。
既に起きて支度をしていたクローテとブオルが手を止め、心配そうにのぞきこむ。
「大丈夫か? すごい汗だぞ」
「こ、これしきのこと、大丈夫でござる!」
こんなことで余計な心配をさせてはいけない。
握り拳をつくって元気アピールをするガレだったが、それをじとりと睨んだクローテがつかつかと歩み寄ると指先でガレの額を思いっきり弾いた。
「ぎにゃ!?」
「……汗臭いんだよ。一回シャワー浴びてこい」
そんなに臭うだろうかと腕を近付けて嗅ぐガレを「さっさと行け」と後ろから蹴って追い出すクローテ。
ちょっと前までは考えられなかった距離感に、二人で行動している間にいろいろあったのだろうことがうかがえる。
「泣きそうな顔してるから洗ってこいって素直に言えば良かったんじゃねーの?」
「うるさい。聴こえるだろう」
くく、と笑いを噛み殺すカカオとブオルを振り返り、クローテはきりりとした切れ長の目を更に鋭くさせた。