23~正しき未来へ~

「アン達がいる未来にボク達がいないって、もしかして……!?」
『時空干渉を止める旅の途中でひとり、またひとりと倒れていったらしい。最後にはカカオが残ったようだけど、それも恐らくはテラと刺し違えて……』

 世界を救えても、自分達の未来がないと聞かされて喜ぶ者はいないだろう。
 沈む一行に「でもっ……!」とガレが身を乗り出す。

「それがし達が介入して、変わった事がいくつかござる! クローテどののこととか!」
「私の……?」

 ふいに名前を出されたクローテがガレを見上げ、目を瞬かせる。

「テラはカレンズ村の件で聖依獣の血を引くクローテどのが単独行動になるのを狙って襲撃したのでござる。けれども、そこにそれがしと……」
『オアシスでこっそり話を聞いていた私がデューを連れて現れた訳ですね』

 肝心の未来の詳しい話は、この空間に邪魔されて聞けませんでしたが……などと言いながら、水精霊が姿を見せた。

「我々を玩具のように軽く捻ったテラの力だ、私ひとりではあっさり殺されていただろうな……」
『たまたま話を聞いていなければ、私達もオアシスへは立ち寄らなかったでしょうね』
『つ、つまり、ガレさん達が来たお陰でクローテさんは助かったと?』

 カカオの肩から風精霊がおそるおそる顔を覗かせる。

『少なくともテラが干渉した歴史は正さなきゃいけないからね。彼らの力は必要だ、って判断したのさ』

 ランシッドがそう言うと、アングレーズがうつむいて己の掌に視線を落とした。

「あたしはずっと悔やんでた。あの時あたしに力があったら、モカちゃん達を助けられたのにって……それからずっと経って、なんで急に目の前に空間の裂け目が現れたのかわからないけど……」
「呼んでる、って言いながらアングレーズどのはその裂け目に飛び込んでしまったのでござるよ。ついでにそれがしも引っ張りながら」
「あら、あなただって行きたかったんでしょ?」
「それはそれ! 説明もなしでびっくりしたでござる!」

 最初に聞いた話だと、二人は裂け目に吸い込まれ迷いこんで来たと言っていたが……

「迷子ってのはやっぱ嘘だったんだな」
「あの時点では未来にあなた達がいないなんて言えなかったし、目的があって来た、なんて言ったら余計に怪しまれるでしょ?」

……そう。

 ふたりには、はっきりとした目的があったのだ。

「ここから先、誰も死なせたりなんかしない……そのつもりで来たのよ」
「あの日の無念、忘れはせぬ……もう見送るだけの子供ではござらん!」

 大好きな人達がいる未来を取り戻すために。
 彼らを“人知れず消えた英雄”にしないために。

 ターコイズと赤銅の目が、強い決意の輝きを宿して煌めいた。
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