22~英雄《ヒーロー》~
自分の邪魔をしているカカオ達の、別行動をしているところを狙いすましたかのように現れたテラ。
クローテのことを知っているということは、この襲撃は最初から……
「クローテどのを、狙っていたのでござるか……」
「あらぁ、気付いちゃった? そうよ、この世界には聖依獣っていうのがいるんでしょ? そしてこの近くにはそれを嫌ってる村がある……そこに何かあれば、嫌われモノは仲間と離れてぼっちになるってワケ」
もう一人くっついてきちゃってたのは計算外だけど、なんてテラはガレを左右で白目の色が違う金眼で見下ろす。
(カレンズ村への時空干渉が、クローテどのを一人にするための罠……?)
頭から押さえつけられる錯覚に陥る重圧の中で、ガレは確信した。
「そうか、クローテどのはこの時に……」
「ガレ……?」
ぼそ、と呟いた言葉はいつになく真剣な、低い声。
「ならば尚更、ここでやらせる訳にはいかぬ!」
「!」
赤銅色の猫目が一瞬強く煌めき、道化師を睨みつける。
ガレは思いっきり息を吸い込むと、クローテを掴むテラの手めがけて雷のブレスを吐き出した。
「きゃっ、なに!?」
これまでの情報にないガレの、聖依獣の血が成せる技はテラの意表を突けたようで、驚いた拍子に解放されたクローテはそのまま地面に落ちる。
「クローテどの!」
「……無茶を、するな……集え、癒しの……」
最後の方は声にならなかった詠唱だが、しっかりと発動した治癒術がガレの痛みを取り除く。
無茶をしてるのはどちらでござるか、と意識を失ってしまったクローテを哀しげに見つめた。
と、
「……アッタマきた! こっちがまだ本調子じゃないからって……!」
してやられたのが逆鱗に触れたらしく、テラの顔つきが明らかに変わる。
両手の先に、これまでとは桁違いの威力であろうことが容易に想像できるほど巨大な黒いエネルギー体を生み出して高く掲げると、獰猛な獣を思わせる舌なめずりをして見せる。
(クローテどのを助けることばかり考えていたが、その後はのーぷらんでござったな……)
今度こそやばい、と本能が全力で警鐘を鳴らすのを聞きながら、ガレはひきつった笑みを浮かべた。
「せめてクローテどのだけでも……」
「仲間のため決死の覚悟は結構だが、自分も一緒に生き延びなきゃ、そいつに怒られるぞ!」
「へ?」
バサァ、と翻るマントが、テラとガレ達の間に割って入った。
肩につくかつかないかぐらいのフロスティブルーの跳ねた髪を後ろへ撫でつけ、しかし前髪は立たせたスタイルはセットに時間をかけているのだろうか。
きりりと切れ長の藍鉄は目元にシワを刻み、顎にはクローテの祖父、スタードを思い出させる髭を生やした騎士が大剣を携え、宙に浮かぶ道化師を見上げる。
「……美人の気配がしたと思ったけど、間違いだったか。オレの勘も鈍ったな、こりゃ」
「はァ?」
いきなり現れてそんなことを言い出す男に、テラはもう最初の小悪魔めいた可愛らしさなどどこへやら、醜く顔を歪める。
すると男の傍から水煙を纏いながら、透き通る淡い青色の肌に鱗を散りばめ波のドレスを身につけた美女が具現化した。
『いけませんよデュー。そのような事を言えばまたカッセに睨まれます。それに……』
あんな醜悪なモノを美人だなんて、貴方の品性と美意識を疑います。
白い珊瑚の角を飾った青髪の美女はにっこりと穏やかな微笑で、テラに向かって言い放つのだった。
クローテのことを知っているということは、この襲撃は最初から……
「クローテどのを、狙っていたのでござるか……」
「あらぁ、気付いちゃった? そうよ、この世界には聖依獣っていうのがいるんでしょ? そしてこの近くにはそれを嫌ってる村がある……そこに何かあれば、嫌われモノは仲間と離れてぼっちになるってワケ」
もう一人くっついてきちゃってたのは計算外だけど、なんてテラはガレを左右で白目の色が違う金眼で見下ろす。
(カレンズ村への時空干渉が、クローテどのを一人にするための罠……?)
頭から押さえつけられる錯覚に陥る重圧の中で、ガレは確信した。
「そうか、クローテどのはこの時に……」
「ガレ……?」
ぼそ、と呟いた言葉はいつになく真剣な、低い声。
「ならば尚更、ここでやらせる訳にはいかぬ!」
「!」
赤銅色の猫目が一瞬強く煌めき、道化師を睨みつける。
ガレは思いっきり息を吸い込むと、クローテを掴むテラの手めがけて雷のブレスを吐き出した。
「きゃっ、なに!?」
これまでの情報にないガレの、聖依獣の血が成せる技はテラの意表を突けたようで、驚いた拍子に解放されたクローテはそのまま地面に落ちる。
「クローテどの!」
「……無茶を、するな……集え、癒しの……」
最後の方は声にならなかった詠唱だが、しっかりと発動した治癒術がガレの痛みを取り除く。
無茶をしてるのはどちらでござるか、と意識を失ってしまったクローテを哀しげに見つめた。
と、
「……アッタマきた! こっちがまだ本調子じゃないからって……!」
してやられたのが逆鱗に触れたらしく、テラの顔つきが明らかに変わる。
両手の先に、これまでとは桁違いの威力であろうことが容易に想像できるほど巨大な黒いエネルギー体を生み出して高く掲げると、獰猛な獣を思わせる舌なめずりをして見せる。
(クローテどのを助けることばかり考えていたが、その後はのーぷらんでござったな……)
今度こそやばい、と本能が全力で警鐘を鳴らすのを聞きながら、ガレはひきつった笑みを浮かべた。
「せめてクローテどのだけでも……」
「仲間のため決死の覚悟は結構だが、自分も一緒に生き延びなきゃ、そいつに怒られるぞ!」
「へ?」
バサァ、と翻るマントが、テラとガレ達の間に割って入った。
肩につくかつかないかぐらいのフロスティブルーの跳ねた髪を後ろへ撫でつけ、しかし前髪は立たせたスタイルはセットに時間をかけているのだろうか。
きりりと切れ長の藍鉄は目元にシワを刻み、顎にはクローテの祖父、スタードを思い出させる髭を生やした騎士が大剣を携え、宙に浮かぶ道化師を見上げる。
「……美人の気配がしたと思ったけど、間違いだったか。オレの勘も鈍ったな、こりゃ」
「はァ?」
いきなり現れてそんなことを言い出す男に、テラはもう最初の小悪魔めいた可愛らしさなどどこへやら、醜く顔を歪める。
すると男の傍から水煙を纏いながら、透き通る淡い青色の肌に鱗を散りばめ波のドレスを身につけた美女が具現化した。
『いけませんよデュー。そのような事を言えばまたカッセに睨まれます。それに……』
あんな醜悪なモノを美人だなんて、貴方の品性と美意識を疑います。
白い珊瑚の角を飾った青髪の美女はにっこりと穏やかな微笑で、テラに向かって言い放つのだった。