~濃霧の中へ~
途中幾度となく襲い来る魔物を退けながら、だいぶ歩いた頃。
「あ、あそこ!」
フィノが示した先で、何やら動く影。
魔物だろうか、やはりハッキリしないが遠目に見ても様子がおかしかった。
「なんか争ってるみたい?」
「魔物と……人だ! 人が襲われているぞ!!」
言うなりそこへ駆けつけると、斧槍を手に魔物と戦う青年がいた。
肩まで伸びたホーリーグリーンの髪を一括りにし、クロムイエローの瞳は今は劣勢のためか焦躁に揺れながらも魔物に隙を見せまいと張り詰めた緊張を漂わせている。
苦しげなのは傷を受けたからなのか、それとも……
「……くっそ、あの商人、安物掴ませたな……」
青年が胸を押さえ、地面に膝をつく。
「まさか障気を……!」
「とりあえず、魔物ぶっ飛ばすのが先よ!」
と、イシェルナが飛び蹴りで魔物を吹っ飛ばす。
これまでで青年の攻撃を受けていたのだろうか、それだけで魔物は動かなくなった。
「大丈夫かしら?」
「……う……」
青年は華麗に着地するイシェルナを、焦点の合わない目で見上げた。
「やば、俺もう死ぬのかな……女神様が見える…………それも超俺好みのファンタスティックボイン……天国ってサービスいいやぁ★」
「割と大丈夫そうだ。オグマ、早く治療してやれ」
「あ、あぁ」
ある意味大丈夫じゃないんじゃなかろうか。
デューの冷静というよりやや冷たい対応に多少戸惑いながら、オグマは青年の治療を始めた。
「あれ、今度は天使さん……?」
「いいから喋るな、これ以上障気を吸ったら危険だ」
言いながらオグマは懐から蛍煌石のペンダントを取り出し、青年の首に着けてやる。
「オグマ、それ……」
「今の彼にこそ必要だろう。ガトー殿には申し訳ないが……」
まずは解毒、そして傷を癒す術を唱えると青年の表情から苦悶の色が消えた。
「……これでひとまずは安心だ。後は少し休ませてあげられれば……」
「…………あの……あ、ありがと、ございます……」
呼吸もだんだん楽になってきたのか、青年はオグマに礼を告げた。
「間に合って良かった。ここからだとネグリート砦より王都が近いな。まずはそこの宿屋に行こう」
「あ、もう歩けますんで……」
オグマが差し出した手をやんわり断ると、青年はスッと立ち上がる。
「へへ、体力には自信あるんですよ♪」
「す、すごいな……だがさすがにまだ戦闘は無理だ。我々が王都まで一緒に………………で、いいだろうか?」
はたと我に返り、オグマは仲間達を振り返った。
「もちろんですよ、オグマさん」
「旅は道連れ世は情け~じゃの♪」
「どのみち王都には行く所だったし、ねぇ☆」
女性陣は満面の笑み(その内三分の二は何やらニヤニヤしているが)で口々にそう応えた。
「ここまでも似たような感じで人数が増えていったんだ、今更だろう」
「余ももう諦めておる」
と、男性陣はいつもの調子で呆れ顔だ。
「す……すまない」
「えーと、んじゃしばらくの間よろしくって事でいいんですかね?」
「ああ」
青年はそれを聞くと、へら、と気の抜けるような笑顔を見せた。
「それじゃ改めて……よろしくお願いしますね☆」
「また一段と賑やかになりそうじゃの、体力バカ」
「よろしくな、体力バカ」
年少組二人がそれぞれそう返すと、青年はその場でずっこけた。
「お、俺はリュナン……リュナン・ヘイゼルっていいま~す……」
「わかったわ、体力おバカさん♪」
「やかましそうな奴だな、体力バカ」
イシェルナとシュクルにも言われてしまい、体力バカ……もとい、リュナンはわなわなと震える。
「ウサギにまで体力バカ呼ばわりされたーーーー!!」
「余はウサギではないわぁぁぁぁ!!」
出会って間もないが、どうやら彼のポジションはほぼ確定したらしい。
「あ、あそこ!」
フィノが示した先で、何やら動く影。
魔物だろうか、やはりハッキリしないが遠目に見ても様子がおかしかった。
「なんか争ってるみたい?」
「魔物と……人だ! 人が襲われているぞ!!」
言うなりそこへ駆けつけると、斧槍を手に魔物と戦う青年がいた。
肩まで伸びたホーリーグリーンの髪を一括りにし、クロムイエローの瞳は今は劣勢のためか焦躁に揺れながらも魔物に隙を見せまいと張り詰めた緊張を漂わせている。
苦しげなのは傷を受けたからなのか、それとも……
「……くっそ、あの商人、安物掴ませたな……」
青年が胸を押さえ、地面に膝をつく。
「まさか障気を……!」
「とりあえず、魔物ぶっ飛ばすのが先よ!」
と、イシェルナが飛び蹴りで魔物を吹っ飛ばす。
これまでで青年の攻撃を受けていたのだろうか、それだけで魔物は動かなくなった。
「大丈夫かしら?」
「……う……」
青年は華麗に着地するイシェルナを、焦点の合わない目で見上げた。
「やば、俺もう死ぬのかな……女神様が見える…………それも超俺好みのファンタスティックボイン……天国ってサービスいいやぁ★」
「割と大丈夫そうだ。オグマ、早く治療してやれ」
「あ、あぁ」
ある意味大丈夫じゃないんじゃなかろうか。
デューの冷静というよりやや冷たい対応に多少戸惑いながら、オグマは青年の治療を始めた。
「あれ、今度は天使さん……?」
「いいから喋るな、これ以上障気を吸ったら危険だ」
言いながらオグマは懐から蛍煌石のペンダントを取り出し、青年の首に着けてやる。
「オグマ、それ……」
「今の彼にこそ必要だろう。ガトー殿には申し訳ないが……」
まずは解毒、そして傷を癒す術を唱えると青年の表情から苦悶の色が消えた。
「……これでひとまずは安心だ。後は少し休ませてあげられれば……」
「…………あの……あ、ありがと、ございます……」
呼吸もだんだん楽になってきたのか、青年はオグマに礼を告げた。
「間に合って良かった。ここからだとネグリート砦より王都が近いな。まずはそこの宿屋に行こう」
「あ、もう歩けますんで……」
オグマが差し出した手をやんわり断ると、青年はスッと立ち上がる。
「へへ、体力には自信あるんですよ♪」
「す、すごいな……だがさすがにまだ戦闘は無理だ。我々が王都まで一緒に………………で、いいだろうか?」
はたと我に返り、オグマは仲間達を振り返った。
「もちろんですよ、オグマさん」
「旅は道連れ世は情け~じゃの♪」
「どのみち王都には行く所だったし、ねぇ☆」
女性陣は満面の笑み(その内三分の二は何やらニヤニヤしているが)で口々にそう応えた。
「ここまでも似たような感じで人数が増えていったんだ、今更だろう」
「余ももう諦めておる」
と、男性陣はいつもの調子で呆れ顔だ。
「す……すまない」
「えーと、んじゃしばらくの間よろしくって事でいいんですかね?」
「ああ」
青年はそれを聞くと、へら、と気の抜けるような笑顔を見せた。
「それじゃ改めて……よろしくお願いしますね☆」
「また一段と賑やかになりそうじゃの、体力バカ」
「よろしくな、体力バカ」
年少組二人がそれぞれそう返すと、青年はその場でずっこけた。
「お、俺はリュナン……リュナン・ヘイゼルっていいま~す……」
「わかったわ、体力おバカさん♪」
「やかましそうな奴だな、体力バカ」
イシェルナとシュクルにも言われてしまい、体力バカ……もとい、リュナンはわなわなと震える。
「ウサギにまで体力バカ呼ばわりされたーーーー!!」
「余はウサギではないわぁぁぁぁ!!」
出会って間もないが、どうやら彼のポジションはほぼ確定したらしい。