~濃霧の中へ~
準備も万端、一行は仰々しい正面の門とは対照的にひっそりと存在する小さな裏口を通り、ついに王都がある大陸の中心部に足を踏み入れた。
「うわ……すごいな、これは……」
デューがそう呟くほど目の前に広がる光景は異常だった。
アトミゼ山脈の時のように霧のようなものが辺りに立ち込めていて、視界が悪い。
景色を薄紫色に染めているその霧が恐らく障気なのだろうが、見ていてあまり気分が良いものではない。
「こんなモヤモヤ、前はなかったんじゃが……」
「……ああ」
呻くようなミレニアの言葉にデューが頷く。
「記憶なんかなくても、これは異常だってわかるな」
「ガトーおじさまのアクセサリーがなければ、あたし達もあっという間にイチコロよねぇ」
イシェルナは身に着けたアンクレットの蛍煌石に視線を移した。
石は仄かに輝きを発し、装備者の身を守っている。
「障気を吸い込めばすぐ苦しくなるんだが、どうやら問題ないようだな。結界はちゃんと発動している」
「さすがなのじゃ♪」
と、まずは最大の問題をクリアした事を確認して。
「……話はそこまでぞ」
「わかっている。どうやら早速お出ましのようだな」
靄の中に光る、魔物の眼光。
シュクルの体毛がぶわっと膨らみ、小さな身体を僅かだが大きく見せる。
デュー達もそれぞれ武器を構え、間も無く始まるであろう戦いに備える。
「来るぞ!」
熊のように大きくがっしりした体躯の、太い腕が振りおろされた。
一行はそれを避けると、体勢を立て直す。
「いきなりご挨拶ね、強引なヒトはお断りよん☆」
イシェルナが魔物に接近すると強烈な回し蹴りを食らわせる。
だがあまり効いていないようで、まずいと判断した彼女はすぐさま一旦退いた。
「あら、タフなのねぇ」
「障気は魔物を狂暴化させる。今までのようにはいかないな」
今度はデューが斬りかかるが、それも腕で防がれてしまった。
「それならこれで……大雨注意ですっ!」
フィノがくるりと舞い、杖を高く掲げると魔物の真上から酸の雨が降り注ぐ。
これには魔物も驚いたようで、呻き声を洩らして二、三歩後退りをする。
「まだじゃ、まだ終わらんぞ!」
ミレニアが追撃の術を唱える。
「下からいでませ、大地の矛っ!」
岩の槍が次々と魔物を襲い、突き上げる。
直撃を食らった魔物はたまらず悲鳴をあげた。
「合わせてゆくぞ、オグマ!」
「あぁ!」
さらに次の詠唱を始めたミレニアにオグマが魔力を同調させる。
「業火の紅……」
「蒼き流れよ……」
「「交わり弾けろ!!」」
相反する火と水の魔力がぶつかり、爆発を起こす。
強力な合成術はタフな魔物にも相当効いたようだ。
「今じゃ、デュー!」
「わかっている!」
続け様に受けたダメージでよろけたところにデューの大剣が袈裟がけに斬りつけ、トドメの一撃となる。
魔物はばったりと倒れ、一行は胸を撫でおろした。
「……どうにか倒せたな」
「こんなのがその辺にゴロゴロしとるのかのぅ……」
門番が危険と言うだけの事はある、とミレニアは目を凝らして霧の向こうを見つめる。
西の方にうすぼんやりとだが、何か大きな影が見えた。
地図と照らし合わせると、どうやらあれが王都らしい。
「あまり長居したくない所じゃ、早く王都へ向かうぞ」
「そうですね……」
そうして彼等は、障気の中を進み始めるのだった。
「うわ……すごいな、これは……」
デューがそう呟くほど目の前に広がる光景は異常だった。
アトミゼ山脈の時のように霧のようなものが辺りに立ち込めていて、視界が悪い。
景色を薄紫色に染めているその霧が恐らく障気なのだろうが、見ていてあまり気分が良いものではない。
「こんなモヤモヤ、前はなかったんじゃが……」
「……ああ」
呻くようなミレニアの言葉にデューが頷く。
「記憶なんかなくても、これは異常だってわかるな」
「ガトーおじさまのアクセサリーがなければ、あたし達もあっという間にイチコロよねぇ」
イシェルナは身に着けたアンクレットの蛍煌石に視線を移した。
石は仄かに輝きを発し、装備者の身を守っている。
「障気を吸い込めばすぐ苦しくなるんだが、どうやら問題ないようだな。結界はちゃんと発動している」
「さすがなのじゃ♪」
と、まずは最大の問題をクリアした事を確認して。
「……話はそこまでぞ」
「わかっている。どうやら早速お出ましのようだな」
靄の中に光る、魔物の眼光。
シュクルの体毛がぶわっと膨らみ、小さな身体を僅かだが大きく見せる。
デュー達もそれぞれ武器を構え、間も無く始まるであろう戦いに備える。
「来るぞ!」
熊のように大きくがっしりした体躯の、太い腕が振りおろされた。
一行はそれを避けると、体勢を立て直す。
「いきなりご挨拶ね、強引なヒトはお断りよん☆」
イシェルナが魔物に接近すると強烈な回し蹴りを食らわせる。
だがあまり効いていないようで、まずいと判断した彼女はすぐさま一旦退いた。
「あら、タフなのねぇ」
「障気は魔物を狂暴化させる。今までのようにはいかないな」
今度はデューが斬りかかるが、それも腕で防がれてしまった。
「それならこれで……大雨注意ですっ!」
フィノがくるりと舞い、杖を高く掲げると魔物の真上から酸の雨が降り注ぐ。
これには魔物も驚いたようで、呻き声を洩らして二、三歩後退りをする。
「まだじゃ、まだ終わらんぞ!」
ミレニアが追撃の術を唱える。
「下からいでませ、大地の矛っ!」
岩の槍が次々と魔物を襲い、突き上げる。
直撃を食らった魔物はたまらず悲鳴をあげた。
「合わせてゆくぞ、オグマ!」
「あぁ!」
さらに次の詠唱を始めたミレニアにオグマが魔力を同調させる。
「業火の紅……」
「蒼き流れよ……」
「「交わり弾けろ!!」」
相反する火と水の魔力がぶつかり、爆発を起こす。
強力な合成術はタフな魔物にも相当効いたようだ。
「今じゃ、デュー!」
「わかっている!」
続け様に受けたダメージでよろけたところにデューの大剣が袈裟がけに斬りつけ、トドメの一撃となる。
魔物はばったりと倒れ、一行は胸を撫でおろした。
「……どうにか倒せたな」
「こんなのがその辺にゴロゴロしとるのかのぅ……」
門番が危険と言うだけの事はある、とミレニアは目を凝らして霧の向こうを見つめる。
西の方にうすぼんやりとだが、何か大きな影が見えた。
地図と照らし合わせると、どうやらあれが王都らしい。
「あまり長居したくない所じゃ、早く王都へ向かうぞ」
「そうですね……」
そうして彼等は、障気の中を進み始めるのだった。