おとなりの波佐間さん
どうにかこうにか修羅場を乗り越えてひと区切り。そこで安心してしまったのか、一気に体から力が抜け、空腹感が襲ってきた。
ああ、これが生きているということか……なんて他人事のように思っていると、お隣から芳しくも食欲をそそる香りが漂ってきて……
(ああ、陽太朗くん今日はカレーなのかな)
なんて、ふらりと誘われるようにそちらに吸い寄せられてしまったのが運のツキ。
「そんなふらふらで今からご飯の支度もしんどいでしょう。今日のところはうちで食べてってください!」
とか、遠慮しようとしたら、
「そういうことは自己管理がちゃんとできてから言ってくださいね」
って、正直ぐうの音も出な……いや、お腹はぐうと鳴ってるんだけど……とにかく、俺は陽太朗くんによって強引に部屋に連れ込まれてしまった。
そう言うと、なんか語弊があるけれど。
「はい、どうぞ」
「それじゃあ……いただきます」
大皿にしっかりと盛りつけられたカレーライスは彼らしくごろごろと大きめにカットされた具材が目立つ、いかにもスタンダードなお家のカレーといった感じのものだった。
スプーンで掬って口に運び入れればスパイシーな中に野菜の甘さ、酸味とまろやかさが広がり、熱と辛味がじんわりと疲労困憊の体にしみ入る。
「んー、久々に感じるひとのぬくもり……」
「ぱぱっと作ったやつですけどね」
「いやいや、美味しいよ。ありがとう」
彼の人柄と同じであったかくて元気をくれる、そんなカレー。
胃に食べ物が入ると、こころなしか体に熱が戻ってきたような気がする。
(そういや、さっき引き寄せられた時……陽太朗くん、あったかかったなぁ)
熱から思考が連動して、さっきの記憶が蘇る。
正直ぶっちゃけると陽太朗くんは割と俺の好みなんだけど……いやいや、あまり考えないようにしよう。彼に悪いし。
「……今度元気な時にお返ししなきゃね」
「お返し?」
「次は俺がなんか作ってあげるよ」
「えっ……」
確かにさっき生活力のなさを露呈しまくったけど、そこまであからさまに不安そうな顔する?
陽太朗くんの表情の変化がわかりやすすぎて、思わずムッときてしまう。
「あのね、俺だってそれなりに料理するの。ただ、仕事中はそういう余裕がなくておざなりになっちゃうだけで」
「そ、そうなんですか?」
「あっ信じてないな? 絶対うまいって言わせてやるんだから!」
お礼のつもりが宣戦布告みたいになってしまって、どちらともなく笑い出す。
ずっと引き籠もって根を詰めていたから、こんな風に騒ぐのもなんだか清々しい心地だ。
「はぁー、ごちそうさま」
「おそまつさまです。あの……波佐間さん」
「なに?」
食べ終えた食器を片付けようと立ち上がると、陽太朗くんがおずおずと声をかけてきた。
え、なに、この捨てられたわんこみたいな表情は。
「もし、良ければなんですけど……また、こうやって一緒に夕飯食べませんか? たまに寂しくなるんですよね、ひとりって」
「陽太朗くん……」
「あっ、でも」
きゅーん、と悲しげな鳴き声が聴こえてきたような気がしたのも束の間、陽太朗くんはキリッと眉をつり上げて、
「今回みたいなことがまたあったら、俺またほっとけないと思いますから」
「えぇーなにそれ……まぁ気をつけるよ」
いつもは終わるなりぶっ倒れてそのまま気絶してることもあったりしたんだけど……これ言ったらダメなんだろうな、と思いつつ。
俺はその後も片付けを手伝いながらゆるく談笑などをして、しばらくまったりと過ごさせてもらうのだった。
ああ、これが生きているということか……なんて他人事のように思っていると、お隣から芳しくも食欲をそそる香りが漂ってきて……
(ああ、陽太朗くん今日はカレーなのかな)
なんて、ふらりと誘われるようにそちらに吸い寄せられてしまったのが運のツキ。
「そんなふらふらで今からご飯の支度もしんどいでしょう。今日のところはうちで食べてってください!」
とか、遠慮しようとしたら、
「そういうことは自己管理がちゃんとできてから言ってくださいね」
って、正直ぐうの音も出な……いや、お腹はぐうと鳴ってるんだけど……とにかく、俺は陽太朗くんによって強引に部屋に連れ込まれてしまった。
そう言うと、なんか語弊があるけれど。
「はい、どうぞ」
「それじゃあ……いただきます」
大皿にしっかりと盛りつけられたカレーライスは彼らしくごろごろと大きめにカットされた具材が目立つ、いかにもスタンダードなお家のカレーといった感じのものだった。
スプーンで掬って口に運び入れればスパイシーな中に野菜の甘さ、酸味とまろやかさが広がり、熱と辛味がじんわりと疲労困憊の体にしみ入る。
「んー、久々に感じるひとのぬくもり……」
「ぱぱっと作ったやつですけどね」
「いやいや、美味しいよ。ありがとう」
彼の人柄と同じであったかくて元気をくれる、そんなカレー。
胃に食べ物が入ると、こころなしか体に熱が戻ってきたような気がする。
(そういや、さっき引き寄せられた時……陽太朗くん、あったかかったなぁ)
熱から思考が連動して、さっきの記憶が蘇る。
正直ぶっちゃけると陽太朗くんは割と俺の好みなんだけど……いやいや、あまり考えないようにしよう。彼に悪いし。
「……今度元気な時にお返ししなきゃね」
「お返し?」
「次は俺がなんか作ってあげるよ」
「えっ……」
確かにさっき生活力のなさを露呈しまくったけど、そこまであからさまに不安そうな顔する?
陽太朗くんの表情の変化がわかりやすすぎて、思わずムッときてしまう。
「あのね、俺だってそれなりに料理するの。ただ、仕事中はそういう余裕がなくておざなりになっちゃうだけで」
「そ、そうなんですか?」
「あっ信じてないな? 絶対うまいって言わせてやるんだから!」
お礼のつもりが宣戦布告みたいになってしまって、どちらともなく笑い出す。
ずっと引き籠もって根を詰めていたから、こんな風に騒ぐのもなんだか清々しい心地だ。
「はぁー、ごちそうさま」
「おそまつさまです。あの……波佐間さん」
「なに?」
食べ終えた食器を片付けようと立ち上がると、陽太朗くんがおずおずと声をかけてきた。
え、なに、この捨てられたわんこみたいな表情は。
「もし、良ければなんですけど……また、こうやって一緒に夕飯食べませんか? たまに寂しくなるんですよね、ひとりって」
「陽太朗くん……」
「あっ、でも」
きゅーん、と悲しげな鳴き声が聴こえてきたような気がしたのも束の間、陽太朗くんはキリッと眉をつり上げて、
「今回みたいなことがまたあったら、俺またほっとけないと思いますから」
「えぇーなにそれ……まぁ気をつけるよ」
いつもは終わるなりぶっ倒れてそのまま気絶してることもあったりしたんだけど……これ言ったらダメなんだろうな、と思いつつ。
俺はその後も片付けを手伝いながらゆるく談笑などをして、しばらくまったりと過ごさせてもらうのだった。
