サニーの章:砂漠の義賊と王子様
西方の大陸に広がる砂漠の中心、オアシスの町ミズベリア。
貴重な水源と緑を囲うように生まれた町は賢王ルフトゥによる治世が続いており、長く穏やかな時代を過ごしていた。
とはいえ、いつの世にも悪いことを考える者はいるもので……
「そこのおにーサンおねーサン、アタシの踊りを見てってよー!」
宮殿前の広場でそんな声が高らかにあがると、なんだなんだと人が集まりだす。
「お嬢ちゃん、踊り上手だねえ」
「けど宮殿の姉ちゃんみたいな色気はねえなぁ。身のこなしは大したもんだが、踊りというより曲芸だ」
そんな余計なお世話とも言える声援や歓声、笑い声などを浴びながら、軽やかに舞う少女がいた。
やや子供っぽさが強く、少年のようにも見える。十五歳という年頃より小柄な体で飛んだり跳ねたり宙返り。この地方に多い、健康的な褐色の肌。向日葵色の短い髪はターバンでまとめて、太陽のような人参色の大きな目でくるくる変わる表情を魅せて。
動きに映える装飾はけれども動きの妨げにはならないように。そんな元気いっぱいなおひさま娘サニーの曲芸まじりのダンスは町の名物だ。
「はーい! 楽しんでくれたならちょーっとここに『おキモチ』ちょーだい!」
そう言ってサニーは用意していた大きなカゴを差し出す。身体能力の高さからリズミカルに繰り出される曲芸と彼女自身の愛嬌を楽しんだ客の多くは素直にお金を落としてくれて、カゴの中には小さな山ができた。
「応援してるよ、サニーちゃん!」
「ありがとー! またよろしく!」
白い歯を見せた人懐こく屈託のない笑顔につられて周りも明るくなる。
ミズベリアの中でも富裕層が集まるのは町の奥、クバッサ宮殿の近く。サニーはここで日銭を稼ぐと同時に、あることをしていた。
「聞いたか? 市民街のばあさん、アビデス様に家族の形見を騙し取られたんだって」
「あちこち言って回ってるけど相手にしてもらえないんですってねぇ」
耳が拾った情報に、ぴく、と反応するサニー。
(アビデス……貴族街のでっかい屋敷だな。確かにアイツは最近悪い噂が増えてきた。金カネうるさくてカンジの悪いヤツだったな)
最初は表に出ないように、うまくやっていたのかもしれない。だが富による権力を得て、どんどん気が大きくなっていったのだろう。
彼女の視線は、貴族街の中でも見せつけるようにひときわ大きな屋敷へ。
「んじゃー“正義の味方”の出番かなっと」
ぐぐっと伸びをすると、自分の家がある市民街へと帰っていった。
口元には、いたずらめいた笑みを浮かべて――。
貴重な水源と緑を囲うように生まれた町は賢王ルフトゥによる治世が続いており、長く穏やかな時代を過ごしていた。
とはいえ、いつの世にも悪いことを考える者はいるもので……
「そこのおにーサンおねーサン、アタシの踊りを見てってよー!」
宮殿前の広場でそんな声が高らかにあがると、なんだなんだと人が集まりだす。
「お嬢ちゃん、踊り上手だねえ」
「けど宮殿の姉ちゃんみたいな色気はねえなぁ。身のこなしは大したもんだが、踊りというより曲芸だ」
そんな余計なお世話とも言える声援や歓声、笑い声などを浴びながら、軽やかに舞う少女がいた。
やや子供っぽさが強く、少年のようにも見える。十五歳という年頃より小柄な体で飛んだり跳ねたり宙返り。この地方に多い、健康的な褐色の肌。向日葵色の短い髪はターバンでまとめて、太陽のような人参色の大きな目でくるくる変わる表情を魅せて。
動きに映える装飾はけれども動きの妨げにはならないように。そんな元気いっぱいなおひさま娘サニーの曲芸まじりのダンスは町の名物だ。
「はーい! 楽しんでくれたならちょーっとここに『おキモチ』ちょーだい!」
そう言ってサニーは用意していた大きなカゴを差し出す。身体能力の高さからリズミカルに繰り出される曲芸と彼女自身の愛嬌を楽しんだ客の多くは素直にお金を落としてくれて、カゴの中には小さな山ができた。
「応援してるよ、サニーちゃん!」
「ありがとー! またよろしく!」
白い歯を見せた人懐こく屈託のない笑顔につられて周りも明るくなる。
ミズベリアの中でも富裕層が集まるのは町の奥、クバッサ宮殿の近く。サニーはここで日銭を稼ぐと同時に、あることをしていた。
「聞いたか? 市民街のばあさん、アビデス様に家族の形見を騙し取られたんだって」
「あちこち言って回ってるけど相手にしてもらえないんですってねぇ」
耳が拾った情報に、ぴく、と反応するサニー。
(アビデス……貴族街のでっかい屋敷だな。確かにアイツは最近悪い噂が増えてきた。金カネうるさくてカンジの悪いヤツだったな)
最初は表に出ないように、うまくやっていたのかもしれない。だが富による権力を得て、どんどん気が大きくなっていったのだろう。
彼女の視線は、貴族街の中でも見せつけるようにひときわ大きな屋敷へ。
「んじゃー“正義の味方”の出番かなっと」
ぐぐっと伸びをすると、自分の家がある市民街へと帰っていった。
口元には、いたずらめいた笑みを浮かべて――。