22:燃える塔

 燈火の塔はどの階も似たような造りで、広々とした場に現れた魔物の群れとの戦闘が待っている以外は、これといって特筆するようなことは起きなかった。
 戦闘を繰り返しながら二階、三階と上がっていくと、あの燃え盛る頂上に近づいているのだろう。体感温度が上がっていき、一行も疲れが見え始めていた。

「もうすぐ頂上だと思うけど……さすがにキツいねぇ」

 熱されているような暑さの中、戦闘と階段の繰り返しはさすがに堪える。この中では一番体力的に劣るモーアンが杖を支えにふらつきながら溜息を吐いた。

「そうだな。ここは魔物が出ないし、ちょっと休憩するかぁ」
「さんせーい!」

 魔物を寄せ付けない結界を有した女神像は、ここにも佇んでいた。
 けれども階下をうろつく魔物を見る限りでは……エイミがじっと見つめると、女神像には小さなヒビが入っていた。

「やっぱり、女神様の力が弱まっているんですね……」
『ワシの時のようにルベインにも“穢れ”を操る何者かが近づいたのだとしたら、そいつがここの女神像の結界を弱めた可能性もあるのう』

 結界の修復を手伝う光精霊の言葉を聞き、モーアンの表情がぐっと険しくなる。
 かつてきらめきの森と光精霊に“穢れ”をもって異変をもたらしたのは、失踪したモーアンの親友ノクスの可能性があるからだ。

「……ガネットが異変を感知してから少し日にちが経ってるから、犯人と鉢合わせすることはないんだろうな。恐らくもう次の目的地へ向かってるはずだ」

 モーアンの声音には、ほんの少しだけ残念そうな、それでいてどこか安堵の色が混じっていた。

(ノクスを見つけたいはずなのに、確信したくない……やれやれ、矛盾してるなぁ)

 トン、トンと指先でこめかみを叩きながら自己分析して苦笑い。
 そんなモーアンに、サニーが水の入ったコップを差し出す。

「よくわかんないけど、せっかく魔物も出ないんだし、モーアン兄ちゃんもちょっとひと息つこ?」
『何ならキンキンに冷やしてあげるわよ』

 ミューの声音もいつになく優しく、気遣っているのがわかる。

「うん、ありが……」

 コップを受け取ろうとモーアンが右手を差し出した、その時だった。

『グオオオオオオオッ!』
「うわ!?」

 天井から……つまりは上の階から響いてきた雄叫びに、全員が瞬時に緊張を走らせた。
 声だけではない。気迫が、熱が。天井越しにビリビリと伝わってエイミたちの四肢を震わせる。

(近い……!)

 次の階段をのぼれば、決戦が待っている。
 よく冷えた水を飲み干すと、モーアンの頭がキンと冴えていく。

「ディアマントさんの時と同じことが起きているなら、ここの精霊さんもきっと苦しんでいるはず……助けに行きましょう!」
「ああ、そうだな!」

 エイミとフォンドがまず真っ先に階段へと向かい、仲間たちも後へと続く。
 目指すは燈火の塔、頂上。火の精霊ルベインがいるというそこは、もう目の前であった。
4/4ページ
スキ