22:燃える塔
どこから現れたのか、獲物を待ち構えていたと言わんばかりにぐるりと取り囲む魔物たち。
種類はバラバラだが、どれも砂漠で遭遇したものばかり。ただひとつ、異変があるとすれば……
「コイツら、なんか黒いモヤモヤしたのがくっついてるよ!」
「きらめきの森と同じだ……この魔物たちも“穢れ”にやられて理性を失っているんだよ」
「よくわからないけど、フツーじゃないことはわかった!」
詳しい説明は後にして、今はこの場を切り抜けよう。
モーアン以外が素早く散開し、それぞれひとりあたり二、三匹を相手に戦い始めた。
「シグルス、サニー! お前らにも“聖なる種子”の加護がついてるなら魔物本体よりも周りの黒いモヤモヤを払うように狙ってみてくれ!」
「そのモヤを纏っている時は理性を失ったり凶暴化しているだけじゃなく、強化もされているみたいなんです!」
黒いモヤ――“穢れ”を取り除けば少なくとも強化や凶暴化は消えるし、魔物によっては戦意そのものを失って逃げていくかもしれない。
エイミの手短な説明を受け、シグルスとサニーが僅かに狙いを変える。
「そういうことなら……!」
二足歩行のトカゲのような魔物の尾の一撃をひらりと跳んで躱すと、空中で身を翻したサニーが着地と同時に魔物の体から出るモヤを切り払う。
派手にすっ転んだ魔物は起き上がってきょとんとした顔で辺りを見回すと、慌てて塔の外へ逃げていった。
「なるほどね。戦わずに済むならそっちの方がいいや」
サニーは手元でくるくると短剣を回すと、柄をしっかり握り直す。
一方でシグルスも剣を横薙ぎに払い、三匹まとめて“穢れ”を絡め取って浄化した。
穢れから解放され逃げ出す者もいれば、構わず襲い掛かってくるような元から攻撃性の強い者もいるのだが、凶暴化した魔物を全員そのまま相手にするよりも遥かに楽だろう。
「ふたりもやれそうだね。心強いよ」
「ふん……感触はなんとなくわかった」
それから先は、時間こそかかるがさほど苦戦はしなかった。
以前と違って人数がいるため分担しやすく、前衛がなかなか近づけないような後方の敵にはモーアンが魔法を炸裂させたりミューのブレスを浴びせたりといった戦法もとれたから。
そういった術にもしっかりと穢れへの効果があり、魔物は次第に数を減らし、やがて上階への道がひらかれた。
「ちょっと疲れたけど、なんとかなりそうだね!」
「見たところ五、六階はあるみたいですから、辛かったら休憩を挟んでもいいですよ」
「たぶんどの階もこんな調子だろうしな」
エイミとフォンドの言葉に「げっ」と声をあげるサニー。
けろりとしている脳筋ふたりからすれば、下手な迷路や仕掛けに悩まされるくらいなら、この方が手っ取り早くて気が楽なのだろう。
きらきら輝く爽やかな笑顔は「まだウォーミングアップが終わったばかりだ」と物語っているようだ。
「なんだアイツら……体力バカなのか?」
『否定はしないわ……』
額に流れる汗を腕で拭い、僅かに疲労の色を見せていたシグルスも、エイミたちの人並み外れた体力には驚きが隠せなかったという。
種類はバラバラだが、どれも砂漠で遭遇したものばかり。ただひとつ、異変があるとすれば……
「コイツら、なんか黒いモヤモヤしたのがくっついてるよ!」
「きらめきの森と同じだ……この魔物たちも“穢れ”にやられて理性を失っているんだよ」
「よくわからないけど、フツーじゃないことはわかった!」
詳しい説明は後にして、今はこの場を切り抜けよう。
モーアン以外が素早く散開し、それぞれひとりあたり二、三匹を相手に戦い始めた。
「シグルス、サニー! お前らにも“聖なる種子”の加護がついてるなら魔物本体よりも周りの黒いモヤモヤを払うように狙ってみてくれ!」
「そのモヤを纏っている時は理性を失ったり凶暴化しているだけじゃなく、強化もされているみたいなんです!」
黒いモヤ――“穢れ”を取り除けば少なくとも強化や凶暴化は消えるし、魔物によっては戦意そのものを失って逃げていくかもしれない。
エイミの手短な説明を受け、シグルスとサニーが僅かに狙いを変える。
「そういうことなら……!」
二足歩行のトカゲのような魔物の尾の一撃をひらりと跳んで躱すと、空中で身を翻したサニーが着地と同時に魔物の体から出るモヤを切り払う。
派手にすっ転んだ魔物は起き上がってきょとんとした顔で辺りを見回すと、慌てて塔の外へ逃げていった。
「なるほどね。戦わずに済むならそっちの方がいいや」
サニーは手元でくるくると短剣を回すと、柄をしっかり握り直す。
一方でシグルスも剣を横薙ぎに払い、三匹まとめて“穢れ”を絡め取って浄化した。
穢れから解放され逃げ出す者もいれば、構わず襲い掛かってくるような元から攻撃性の強い者もいるのだが、凶暴化した魔物を全員そのまま相手にするよりも遥かに楽だろう。
「ふたりもやれそうだね。心強いよ」
「ふん……感触はなんとなくわかった」
それから先は、時間こそかかるがさほど苦戦はしなかった。
以前と違って人数がいるため分担しやすく、前衛がなかなか近づけないような後方の敵にはモーアンが魔法を炸裂させたりミューのブレスを浴びせたりといった戦法もとれたから。
そういった術にもしっかりと穢れへの効果があり、魔物は次第に数を減らし、やがて上階への道がひらかれた。
「ちょっと疲れたけど、なんとかなりそうだね!」
「見たところ五、六階はあるみたいですから、辛かったら休憩を挟んでもいいですよ」
「たぶんどの階もこんな調子だろうしな」
エイミとフォンドの言葉に「げっ」と声をあげるサニー。
けろりとしている脳筋ふたりからすれば、下手な迷路や仕掛けに悩まされるくらいなら、この方が手っ取り早くて気が楽なのだろう。
きらきら輝く爽やかな笑顔は「まだウォーミングアップが終わったばかりだ」と物語っているようだ。
「なんだアイツら……体力バカなのか?」
『否定はしないわ……』
額に流れる汗を腕で拭い、僅かに疲労の色を見せていたシグルスも、エイミたちの人並み外れた体力には驚きが隠せなかったという。