13:悪魔の呪縛
幽霊船を支配していた悪魔を倒したことで、客船もじきに動けるようになるだろう。
エイミたちは出発準備が整うまでの間、幽霊船の甲板で情報整理することにした。
「人々の負の感情を糧とする“悪魔”……ガネットさんが言っていた通りですね」
『それに、闇の精霊コクヨウ……まさか、幽霊船を食い止めてくれていたなんてね』
ミューがその名を挙げると、揺らめく闇が出現する。
黒い翼を生やした小さな闇。それが、精霊コクヨウの姿だ。
コクヨウは上空高く浮かび上がると、翼を大きく広げた。
『瞼の裏に、足下に。闇はいつでも寄り添うもの。現世を彷徨う魂よ、闇がもたらす安寧の眠りへ……』
夜の闇に無数の光が煌めいて、天へと消えていく。
幻想的な光景に、ディアマントの結界を解除した客船からも歓声があがる。
『……魂たちを悪魔の戒めから解放してくれて、感謝する。事情はディアマントやガネットから聞いた。我も力を貸そう』
「ありがとうございます、コクヨウさん」
ゆっくりと降りてきたコクヨウに、エイミがほほえみかける。
コクヨウに顔はないが、ふと目を細めるような気配がした。
『急にマトモな精霊が出てきたわね。いかにも“精霊”ってカンジの』
最初の精霊ディアマントは陽気な老人風だったし、次に出会ったガネットはべらんめえな職人のようだった。
どちらも距離感が人間と近く、ミューが想像する精霊とはやや離れたイメージだったが……
『聞き捨てならねぇなあ』
『そうじゃそうじゃ。それにのう……こやつはカッコつけなだけじゃぞ!』
そんな言葉を聞いて、彼らが飛び出さない訳がなかった。
すかさず出てきたガネットとディアマントに、表情がないはずのコクヨウが思いっきり嫌そうな気配を纏う。
『誰がカッコつけだ! だいたい貴様ら……特にディアマント。貴様があまりにもアレだから我はだな……!』
『あまりにもアレってなんじゃい!』
ディアマントが出てきた途端に、コクヨウから滲み出ていた荘厳さが音を立てて崩れ去った。
光精霊のライトで軽いノリが闇精霊と合わないのは、なんとなく予想がついていたが……
『なんだかより一層賑やかになったというか、おもしろ集団になったというか……』
「だいたいディアマントのせいだろ、これ」
ミューとフォンドが苦笑いする中、光と闇の言い争いから離れてきた地精霊がスッとこちらの輪に入る。
『あのよ、他の精霊はもうちょいマトモだからな……全員とは言わねぇけど』
「最初がアマ爺だったからねえ」
「ふふっ、大丈夫ですよ。見ていて楽しいですから」
なんだか申し訳なさそうなガネットに、エイミたちは柔らかく破顔する。
客船から船の出発準備が完了したと声がかかったのは、それからほどなくしてのことであった。
エイミたちは出発準備が整うまでの間、幽霊船の甲板で情報整理することにした。
「人々の負の感情を糧とする“悪魔”……ガネットさんが言っていた通りですね」
『それに、闇の精霊コクヨウ……まさか、幽霊船を食い止めてくれていたなんてね』
ミューがその名を挙げると、揺らめく闇が出現する。
黒い翼を生やした小さな闇。それが、精霊コクヨウの姿だ。
コクヨウは上空高く浮かび上がると、翼を大きく広げた。
『瞼の裏に、足下に。闇はいつでも寄り添うもの。現世を彷徨う魂よ、闇がもたらす安寧の眠りへ……』
夜の闇に無数の光が煌めいて、天へと消えていく。
幻想的な光景に、ディアマントの結界を解除した客船からも歓声があがる。
『……魂たちを悪魔の戒めから解放してくれて、感謝する。事情はディアマントやガネットから聞いた。我も力を貸そう』
「ありがとうございます、コクヨウさん」
ゆっくりと降りてきたコクヨウに、エイミがほほえみかける。
コクヨウに顔はないが、ふと目を細めるような気配がした。
『急にマトモな精霊が出てきたわね。いかにも“精霊”ってカンジの』
最初の精霊ディアマントは陽気な老人風だったし、次に出会ったガネットはべらんめえな職人のようだった。
どちらも距離感が人間と近く、ミューが想像する精霊とはやや離れたイメージだったが……
『聞き捨てならねぇなあ』
『そうじゃそうじゃ。それにのう……こやつはカッコつけなだけじゃぞ!』
そんな言葉を聞いて、彼らが飛び出さない訳がなかった。
すかさず出てきたガネットとディアマントに、表情がないはずのコクヨウが思いっきり嫌そうな気配を纏う。
『誰がカッコつけだ! だいたい貴様ら……特にディアマント。貴様があまりにもアレだから我はだな……!』
『あまりにもアレってなんじゃい!』
ディアマントが出てきた途端に、コクヨウから滲み出ていた荘厳さが音を立てて崩れ去った。
光精霊のライトで軽いノリが闇精霊と合わないのは、なんとなく予想がついていたが……
『なんだかより一層賑やかになったというか、おもしろ集団になったというか……』
「だいたいディアマントのせいだろ、これ」
ミューとフォンドが苦笑いする中、光と闇の言い争いから離れてきた地精霊がスッとこちらの輪に入る。
『あのよ、他の精霊はもうちょいマトモだからな……全員とは言わねぇけど』
「最初がアマ爺だったからねえ」
「ふふっ、大丈夫ですよ。見ていて楽しいですから」
なんだか申し訳なさそうなガネットに、エイミたちは柔らかく破顔する。
客船から船の出発準備が完了したと声がかかったのは、それからほどなくしてのことであった。