5:神託
神殿を出た一行は改めてすぐ外にある庭園で顔を合わせた。
これまではルクシアルに辿り着くまでの暫定的なものだったが、これからも旅を共にする仲間となったのだ。
「こうなったら、とことん最後まで付き合うぜ。もともとオレの目的も魔族絡みだしな。ジャーマや親父ともいずれ会えるだろ」
「僕も、改めてよろしくね。のっけから情けないとこばっか見せちゃったけど、回復魔法は得意だから。伊達に神官やってないよ」
「はい。ふたりとも、頼りにしています」
エイミの言葉は心からのもので、同じ前衛でもエイミとはリーチや戦い方が違うフォンドに魔法でサポートしてくれるモーアンと、互いに補い合うことができるだろう。
魔族や魔界を相手に、最悪ひとりで戦うことになるだろう覚悟をしていたエイミにとって、彼らとの出会いと女神の力添えは嬉しい誤算だった。
『さて、これからは精霊探しの旅かしら。この近くの森にいるって言ってたわよね?』
「それなら神殿のすぐ近くにある“きらめきの森”のことだと思うよ。なるほど、確かにそれらしい場所だ」
ルクシアルで育ったモーアンはひとり合点がいったらしく、うんうんと頷く。
「それらしい場所って?」
「空中にキラキラ光が舞っててね、とても幻想的で綺麗な森なんだよ。神殿に近い側は結界のお陰で魔物も出ないし、ピクニックに最適だったんだ」
「「へぇー……」」
興味津々な声がハモり、フォンドとエイミが顔を見合わせて吹き出す。
「ただ、あの事件からどうなってるかわからないんだけどね……黒いモヤで凶暴化した魔物に襲われたこともあったから、あれだけで済むとは思えない」
「そうだな。しっかり準備して行こうぜ」
そう言いながら準備は昨日のうちにあらかた済ませていたため、きらめきの森にはほどなくして向かうこととなった。
話に聞いたような光景に内心少しだけ期待しながら、のはずだったのだが……
『何よコレ……ぜんぜん“きらめきの森”じゃあないじゃない……』
「お、おかしいな……?」
ミューの言葉通り、“きらめいていない森”を前に呆然と立ち尽くす一行。
空気は暗く鬱蒼として、光の粒子など見当たらない。それどころか、黒く不気味な霧のようなものが漂っている。
「なあ、これって魔物を凶暴化させたっていう“黒いモヤ”ってヤツなんじゃ……?」
「こ、ここに、本当に光の精霊さんがいるのでしょうか?」
「わ、わからない。けど……」
行ってみるしかなさそうだ。
「……荒っぽいのは苦手なんだけどなぁ」
溜息混じりの呑気そうな口調とは裏腹に一筋の嫌な汗が流れ、ごくりと喉が鳴る。
買ったばかりの杖を握り締めたモーアンの足元で、じゃり、と土が音を立てた。
これまではルクシアルに辿り着くまでの暫定的なものだったが、これからも旅を共にする仲間となったのだ。
「こうなったら、とことん最後まで付き合うぜ。もともとオレの目的も魔族絡みだしな。ジャーマや親父ともいずれ会えるだろ」
「僕も、改めてよろしくね。のっけから情けないとこばっか見せちゃったけど、回復魔法は得意だから。伊達に神官やってないよ」
「はい。ふたりとも、頼りにしています」
エイミの言葉は心からのもので、同じ前衛でもエイミとはリーチや戦い方が違うフォンドに魔法でサポートしてくれるモーアンと、互いに補い合うことができるだろう。
魔族や魔界を相手に、最悪ひとりで戦うことになるだろう覚悟をしていたエイミにとって、彼らとの出会いと女神の力添えは嬉しい誤算だった。
『さて、これからは精霊探しの旅かしら。この近くの森にいるって言ってたわよね?』
「それなら神殿のすぐ近くにある“きらめきの森”のことだと思うよ。なるほど、確かにそれらしい場所だ」
ルクシアルで育ったモーアンはひとり合点がいったらしく、うんうんと頷く。
「それらしい場所って?」
「空中にキラキラ光が舞っててね、とても幻想的で綺麗な森なんだよ。神殿に近い側は結界のお陰で魔物も出ないし、ピクニックに最適だったんだ」
「「へぇー……」」
興味津々な声がハモり、フォンドとエイミが顔を見合わせて吹き出す。
「ただ、あの事件からどうなってるかわからないんだけどね……黒いモヤで凶暴化した魔物に襲われたこともあったから、あれだけで済むとは思えない」
「そうだな。しっかり準備して行こうぜ」
そう言いながら準備は昨日のうちにあらかた済ませていたため、きらめきの森にはほどなくして向かうこととなった。
話に聞いたような光景に内心少しだけ期待しながら、のはずだったのだが……
『何よコレ……ぜんぜん“きらめきの森”じゃあないじゃない……』
「お、おかしいな……?」
ミューの言葉通り、“きらめいていない森”を前に呆然と立ち尽くす一行。
空気は暗く鬱蒼として、光の粒子など見当たらない。それどころか、黒く不気味な霧のようなものが漂っている。
「なあ、これって魔物を凶暴化させたっていう“黒いモヤ”ってヤツなんじゃ……?」
「こ、ここに、本当に光の精霊さんがいるのでしょうか?」
「わ、わからない。けど……」
行ってみるしかなさそうだ。
「……荒っぽいのは苦手なんだけどなぁ」
溜息混じりの呑気そうな口調とは裏腹に一筋の嫌な汗が流れ、ごくりと喉が鳴る。
買ったばかりの杖を握り締めたモーアンの足元で、じゃり、と土が音を立てた。