59:邪執の果てに
「癒しの光よ、我らを包み込め!」
フォンドが持ち堪えている間にモーアンが回復魔法を唱えると、全員の体から傷と痛みが消え去り、倒れていたプリエールも立ち上がる。
一度は崩壊寸前まで追い込まれたが、もともと回復魔法を得意とするモーアンの力は旅の中でさらに高められていたようだ。
〈ほう、立て直したか……運の良い奴らだ〉
「そうかもね。けど、もう撃たせないさ」
あの大技を放つには相応の準備が必要だろう。
一度は不意を突かれてしまったが、次にまた同じ兆候があれば反応できるはずだ。
勢いを取り戻した三人はバリアをひとつずつ破壊し、ケイオスを追い込んでいく。
たまに分離して襲いかかってくる腕は、フォンドが思いっきり蹴り飛ばして弾き返した。
確実に、攻勢はこちらへと傾いているはずだ。だが……
〈ふふふふ……〉
「ったく、いくらダメージを与えてもブキミなヤツだぜっ」
そもそも、魔導機神に乗り込んだケイオスには肉体がなく、痛みなど感じていない。
バリアを生み出す翼もひとつ残らず壊されて、ボディのあちこちにも亀裂が走っているこの状況でも、当のケイオスは痛くもかゆくもないのだ。
そして一行には逆に疲労と焦りが積もっていく。
世界中に隕石を降らせるという大魔法の魔法陣が、より一層輝きを増していたからだ。
「まずい、早く倒さないと!」
「わかっているわ!」
プリエールの周囲に地水火風の精霊が集まり、彼女をぐるりと囲む。
白く滑らかな指が四色の光を編み上げ、まばゆいひとつの光球へと圧縮していき……
〈なんだ、その魔法は!?〉
「あたしのオリジナルよ。万象よ、混ざり合え!」
四属性が互いにぶつかり合い、生み出されるのは莫大なエネルギーの無属性魔法。
その爆発は魔導機神をも飲み込み、その全身を激しく打つ。
〈なん、だと……〉
既にダメージが蓄積されていた魔導機神のボディに、これが致命的な決定打となったようだ。
ガラガラと音を立てて砕け、崩れていく機械仕掛けの神。その体からずるりと火の玉が――ケイオスの魂らしきモノがこぼれ落ちる。
〈…………〉
千年も前に一度倒され、封印された魂。かりそめの体を渡り歩いたそれは、急速に輪郭を失い、消滅しつつあった。
「終わりだ、ケイオス。あとは大魔法の発動さえ止まれば……」
〈ククク……〉
この状況でも、まだ笑うというのか。モーアンたちが警戒に一瞬身を硬くする。
と、足元の魔法陣が、消えるどころか更に輝きを増した。
「な、なんなの!?」
〈我を倒したとて、発動は止まらぬ。それにこのデウス・エクス・マキナには自爆装置も積んでいるのだ!〉
バラバラになった魔導機神の胸部にあるクリスタルが異音を発し、赤く点滅する。
ルーチェの時と同じだ――まさか自分自身にさえそんな仕掛けを施しているとは思わず、フォンドがケイオスのもとへ駆け寄った。
「もう消えるってのに、なんでそんな……!」
〈我はこの世界に復讐さえできればそれで良い。さあ、己の無力を嘆きながら共に滅びようではないか!〉
「くっ……」
足元の魔法陣も、自爆装置も、今からではとても間に合いそうもない。
万事休すか。三人は無駄と知りながら全身を襲うであろう衝撃に身構え、ぎゅっと目を瞑った。
フォンドが持ち堪えている間にモーアンが回復魔法を唱えると、全員の体から傷と痛みが消え去り、倒れていたプリエールも立ち上がる。
一度は崩壊寸前まで追い込まれたが、もともと回復魔法を得意とするモーアンの力は旅の中でさらに高められていたようだ。
〈ほう、立て直したか……運の良い奴らだ〉
「そうかもね。けど、もう撃たせないさ」
あの大技を放つには相応の準備が必要だろう。
一度は不意を突かれてしまったが、次にまた同じ兆候があれば反応できるはずだ。
勢いを取り戻した三人はバリアをひとつずつ破壊し、ケイオスを追い込んでいく。
たまに分離して襲いかかってくる腕は、フォンドが思いっきり蹴り飛ばして弾き返した。
確実に、攻勢はこちらへと傾いているはずだ。だが……
〈ふふふふ……〉
「ったく、いくらダメージを与えてもブキミなヤツだぜっ」
そもそも、魔導機神に乗り込んだケイオスには肉体がなく、痛みなど感じていない。
バリアを生み出す翼もひとつ残らず壊されて、ボディのあちこちにも亀裂が走っているこの状況でも、当のケイオスは痛くもかゆくもないのだ。
そして一行には逆に疲労と焦りが積もっていく。
世界中に隕石を降らせるという大魔法の魔法陣が、より一層輝きを増していたからだ。
「まずい、早く倒さないと!」
「わかっているわ!」
プリエールの周囲に地水火風の精霊が集まり、彼女をぐるりと囲む。
白く滑らかな指が四色の光を編み上げ、まばゆいひとつの光球へと圧縮していき……
〈なんだ、その魔法は!?〉
「あたしのオリジナルよ。万象よ、混ざり合え!」
四属性が互いにぶつかり合い、生み出されるのは莫大なエネルギーの無属性魔法。
その爆発は魔導機神をも飲み込み、その全身を激しく打つ。
〈なん、だと……〉
既にダメージが蓄積されていた魔導機神のボディに、これが致命的な決定打となったようだ。
ガラガラと音を立てて砕け、崩れていく機械仕掛けの神。その体からずるりと火の玉が――ケイオスの魂らしきモノがこぼれ落ちる。
〈…………〉
千年も前に一度倒され、封印された魂。かりそめの体を渡り歩いたそれは、急速に輪郭を失い、消滅しつつあった。
「終わりだ、ケイオス。あとは大魔法の発動さえ止まれば……」
〈ククク……〉
この状況でも、まだ笑うというのか。モーアンたちが警戒に一瞬身を硬くする。
と、足元の魔法陣が、消えるどころか更に輝きを増した。
「な、なんなの!?」
〈我を倒したとて、発動は止まらぬ。それにこのデウス・エクス・マキナには自爆装置も積んでいるのだ!〉
バラバラになった魔導機神の胸部にあるクリスタルが異音を発し、赤く点滅する。
ルーチェの時と同じだ――まさか自分自身にさえそんな仕掛けを施しているとは思わず、フォンドがケイオスのもとへ駆け寄った。
「もう消えるってのに、なんでそんな……!」
〈我はこの世界に復讐さえできればそれで良い。さあ、己の無力を嘆きながら共に滅びようではないか!〉
「くっ……」
足元の魔法陣も、自爆装置も、今からではとても間に合いそうもない。
万事休すか。三人は無駄と知りながら全身を襲うであろう衝撃に身構え、ぎゅっと目を瞑った。
