5:神託
当初の旅の目標、輝ける都ルクシアル。ぐるりと円状に囲む壁と石畳は白く、神殿は入口からも見える奥の大きな建物だ。
神殿のみならず町の空気からもどことなく荘厳で清浄な雰囲気が漂っており、思わずふたりも背筋をのばした。
「でっけえ……城みたいだ」
『確かに……う、うちの城のがちょっとばかり大きいけど!』
石造りの真っ白な神殿は年月を感じる姿で佇んでいて、その大きさに思わず一同が口を開けて見上げてしまう。
そんな中、エイミは隣に立つモーアンに視線を移した。
「モーアンさんのお陰で、予想より早く謁見が叶いました。ありがとうございます」
「いやいや。きみたちは命の恩人だからね。このくらいはお安い御用さ」
ルクシアルに続く洞窟の中で出会った神官、モーアン。
崩れた足場から危うく落ちかけたところをエイミたちに救われた彼は、ルクシアルに到着してすぐに神殿へと向かい、大神官への謁見を取り計らってくれたようだ。
しっかり休んだ翌朝となった今、エイミたちはこうして神殿の入口に来ている。
「あ、神官さんだ! この前はありがとう!」
「モーアン、急にいなくなったと思ったらどうしたんだ?」
あちこちでかけられる声に笑顔で応えるモーアンは慕われているのだろう。この柔和な雰囲気が親しみやすいことは短い間でエイミたちにもよくわかるものだった。
「ルーメン様、昨日お話しした方々をお連れしました」
「入りなさい」
両脇に神官を従えた大きな扉が重々しい音を立てて開かれた。
それぞれ息を呑み胸に手をあてたり、拳を握り締めたり……緊張が所作にあらわれる。
「迷える旅人たちよ。まずはようこそ、ルクシアルへ」
まず視界に飛び込んできたのは吹き抜けの高い天井付近まである見事なステンドグラス。そしてその手前に静かに佇む女神像だ。
そしてその手前には、ひとりの壮年男性の姿が。
「日頃のらりくらりやっていたお前がわざわざ頼み込むなどと……驚いたぞ、モーアン。それに、急にいなくなったと思ったらすぐ戻って来たことも」
「たはは……ちょっと事情がありまして」
ホントは戻るつもりなんかなかったんだけど、と小声で呟いて、モーアンは明らかに位が高そうな神官服の男性の隣に歩み寄り、エイミたちを振り返る。
「さて……この方が大神官、ルーメン様だ。きみたちの話を聞かせてほしい」
「わかりました。では……」
「いや待て。話があるのはモーアン、お前もだろう?」
大神官はしっかり生え揃った顎髭に手を置き、モーアンを睨みつける。
「既にリプルスーズの異変は聞いている。それにお前がいなくなったのと同時期にノクスの姿も消えたのだ。無関係ではあるまい」
「お耳が早いことで……」
はぁ、と特大の溜息を吐き出し、がっくり肩を落とすモーアン。
「……まぁいいや。どのみち戻って来た時点で話すつもりだったし……覚悟を決めて、お話ししましょう」
こうして、エイミとフォンド、そしてモーアンの事情が語られることになった。
大神官と、レレニティア女神像の前で――。
神殿のみならず町の空気からもどことなく荘厳で清浄な雰囲気が漂っており、思わずふたりも背筋をのばした。
「でっけえ……城みたいだ」
『確かに……う、うちの城のがちょっとばかり大きいけど!』
石造りの真っ白な神殿は年月を感じる姿で佇んでいて、その大きさに思わず一同が口を開けて見上げてしまう。
そんな中、エイミは隣に立つモーアンに視線を移した。
「モーアンさんのお陰で、予想より早く謁見が叶いました。ありがとうございます」
「いやいや。きみたちは命の恩人だからね。このくらいはお安い御用さ」
ルクシアルに続く洞窟の中で出会った神官、モーアン。
崩れた足場から危うく落ちかけたところをエイミたちに救われた彼は、ルクシアルに到着してすぐに神殿へと向かい、大神官への謁見を取り計らってくれたようだ。
しっかり休んだ翌朝となった今、エイミたちはこうして神殿の入口に来ている。
「あ、神官さんだ! この前はありがとう!」
「モーアン、急にいなくなったと思ったらどうしたんだ?」
あちこちでかけられる声に笑顔で応えるモーアンは慕われているのだろう。この柔和な雰囲気が親しみやすいことは短い間でエイミたちにもよくわかるものだった。
「ルーメン様、昨日お話しした方々をお連れしました」
「入りなさい」
両脇に神官を従えた大きな扉が重々しい音を立てて開かれた。
それぞれ息を呑み胸に手をあてたり、拳を握り締めたり……緊張が所作にあらわれる。
「迷える旅人たちよ。まずはようこそ、ルクシアルへ」
まず視界に飛び込んできたのは吹き抜けの高い天井付近まである見事なステンドグラス。そしてその手前に静かに佇む女神像だ。
そしてその手前には、ひとりの壮年男性の姿が。
「日頃のらりくらりやっていたお前がわざわざ頼み込むなどと……驚いたぞ、モーアン。それに、急にいなくなったと思ったらすぐ戻って来たことも」
「たはは……ちょっと事情がありまして」
ホントは戻るつもりなんかなかったんだけど、と小声で呟いて、モーアンは明らかに位が高そうな神官服の男性の隣に歩み寄り、エイミたちを振り返る。
「さて……この方が大神官、ルーメン様だ。きみたちの話を聞かせてほしい」
「わかりました。では……」
「いや待て。話があるのはモーアン、お前もだろう?」
大神官はしっかり生え揃った顎髭に手を置き、モーアンを睨みつける。
「既にリプルスーズの異変は聞いている。それにお前がいなくなったのと同時期にノクスの姿も消えたのだ。無関係ではあるまい」
「お耳が早いことで……」
はぁ、と特大の溜息を吐き出し、がっくり肩を落とすモーアン。
「……まぁいいや。どのみち戻って来た時点で話すつもりだったし……覚悟を決めて、お話ししましょう」
こうして、エイミとフォンド、そしてモーアンの事情が語られることになった。
大神官と、レレニティア女神像の前で――。