57:哀しき人形

 マギカルーン近くの地下遺跡は仕掛けにより隠された道が多く、メンバーの中でも頭を使うことに長けたプリエールやモーアンがいたお陰で順調に進むことができた。
 その代わり、仕掛けを解いている時間はフォンドにできることはほぼ皆無で、後ろで二人を見ているばかり。
 さすがに居心地の悪さを感じ、しょんぼりと溜め込んだ息を吐き出す。

「オレ、全然役に立ってねえな……」
「何言ってるのよ。戦闘であたしたちを守ってくれてるじゃない」
「そうそう。僕たち、前衛がいなきゃ満足に攻撃も支援もできないからね」

 身軽で小回りのきく前衛といったタイプのフォンドは、素早く二人のカバーに回ることが可能だ。
 それに加えて受けたそばから傷を癒す継続回復魔法の効果も彼の高い耐久力との相性が良く、プリエールたちには心強い仲間と言えるだろう。

「それに、確かにパズルは苦手かもしれないけど、こうやってあたしたちが解いてる間に周囲を警戒してくれてるでしょ? 充分活躍してるわよ」
「プリエールさん……」
「まあ地味って言えばちょっと地味よね」
「プリエールさぁん……」

 情けない声をあげて肩を落とすフォンドに、冗談よと微笑むプリエール。
 加減がわかっている彼らのやりとりは軽く、決戦へ赴こうとしながらその緊張をほぐすように。
 そうこうしているうちに、モーアンの目の前の壁が音を立てて移動し、階段が現れた。

「さて、次へ進もうか」

 モーアンに促され、フォンドを先頭に遺跡をさらに地下深くへと進んでいく。
 仕掛け以外に道を阻む敵はケイオスが造ったのだろうか形状さまざまの自動人形ばかりで、頑丈さに苦戦を強いられながらも一体一体を確実に仕留めていった。

「どんどん近づいていってる感じだね」
『むう、これは……』
「アマ爺?」

 日頃は軽快でお茶目な光精霊ディアマントが重たく真面目な声音で呟きながら現れ、視線を下に向ける。

『異様な魔力が地下に集まっておる……』
「異様な魔力って、どういう意味だよ?」
『人間たちが扱う魔法は大なり小なり精霊の力を借りるというのに、この魔力にはそれをまったく感じさせん。なのに、その量は膨大じゃ』

 この世界における魔法とは、精霊の力を借りて自然を操ったり奇跡を起こす術のこと。
 だが千年前にレレニティアと共に禁呪の魔法士ケイオスと対峙したディアマントは、この違和感の正体に気づいていた。

『奴め、禁術を唱えておるのか……!』
「なんですって!?」
「それって、なんかやべえ魔法ってことか!?」

 フォンドがそう尋ねると『そうじゃ』と返すディアマント。

『千年前、奴が唱えようとした魔法があった。それは完全な発動を前に阻止されたが……』
「……アマ爺、ちょっと待って」

 彼の話は、モーアンによって遮られた。
 道なりに歩いて辿り着いた小部屋。一行の目の前に立ちはだかるように、一体の自動人形が現れたからだ。
 途中幾度となく戦った無骨な人形とは違い、すらりとした人間の女性を彷彿とさせる流線型のフォルム。
 冷たく無機質。けれども優美で、どこか物悲しい佇まいの人形だ。

「どうやら悠長に話してる暇はないみたいだよ」
〈…………〉

 モーアンの言葉を待つより早く、フォンドが後衛二人との距離を作るように進み出る。
 物言わぬ人形は両腕に仕込んだ刃を展開させ、ゆらりと構えた。
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