53:病撒き散らすもの
二体目の災禍を倒したエイミたちは、その勢いに乗って三体、四体と攻略していく。
水の災禍はメイル神殿。地下洞窟への封印された入口は今度は月精霊の力を借り、満月の夜を待つことなく開くことができるようになった。
『この神殿を覆う結界は月の光を集めるだけではない。万が一目覚めた災禍を食い止めるためのものでもある……災禍が完全に目覚めれば、それも気休め程度だがな』
そう言ったのは水の精霊アクリア。
奥に眠っていた災禍は一見すると美しい女性の姿をしていたが、奇声を発して凄まじい冷気を振り撒くばかりの、言葉など通じない化け物で。
強力な冷気により体が凍りつき、動きを封じられることもあったが、それでもどうにか倒すことができた。
それからすぐに火の災禍を倒しに行ったのは、失敗だったと後に語られることになる。
極寒の次は灼熱地獄――砂漠の道標、燈火の塔の地下に隠された迷宮の奥に、災禍である炎の魔人が封印されていたのだ。
「これは、なんて魅惑的な筋肉……はっ、み、みなさん! 惑わされてはいけませんっ!」
『エイミ……アレに見惚れてるのはアンタだけよ』
上半身は筋肉質の大男。下半身は煙。そんな魔人の上半身をうっとり見つめるエイミ。
それでも人々に危害を加える存在ということで、彼女はしっかり気持ちを切り替えて仲間と共に災禍に立ち向かった。
見た目通りの圧倒的な力に傷つき、倒れることもあったが、水属性魔法を中心とした攻撃やこまめな回復と補助を切らさずに立ち回ることで撃退に成功するのだった。
これで災禍は地、光、水、火の四体……八体の災禍を半分倒したことになるのだ。
やや急ぎ足になるのは、後半になるほど周囲の気を取り込んで強化されていくから。完全に目覚めてしまえば、今のエイミたちでもこんなに順調にはいかないだろう。
「いよいよ後半戦かぁ……ここまではどうにかなったね」
「そうじゃなきゃ困る。災禍が目覚めて本格的に活動を始めたら、周囲の被害はこんなもんじゃないだろうからな」
と、フリュエラの背に乗って移動しながらのサニーとシグルスの会話に、彼らの下から声がした。
《その通り。例えばまだ残っている風の災禍なんかは“病撒き散らすもの”と呼ばれているよ》
「病撒き散らすもの……なんかヤバそうだな」
《その翼は瘴気を生み出し、羽ばたく度に地上へそれを送りこむ……生ある者を蝕むために存在するような、おぞましい魔獣さ》
風の災禍が風の精霊の住処と近い位置に封印されているなら、その被害を真っ先に受けることになるのはフォンドの故郷グリングランだろう。
大切な人たちが瘴気に倒れるさまが脳裏を過ぎり、我知らずフォンドの顔が険しくなった。
水の災禍はメイル神殿。地下洞窟への封印された入口は今度は月精霊の力を借り、満月の夜を待つことなく開くことができるようになった。
『この神殿を覆う結界は月の光を集めるだけではない。万が一目覚めた災禍を食い止めるためのものでもある……災禍が完全に目覚めれば、それも気休め程度だがな』
そう言ったのは水の精霊アクリア。
奥に眠っていた災禍は一見すると美しい女性の姿をしていたが、奇声を発して凄まじい冷気を振り撒くばかりの、言葉など通じない化け物で。
強力な冷気により体が凍りつき、動きを封じられることもあったが、それでもどうにか倒すことができた。
それからすぐに火の災禍を倒しに行ったのは、失敗だったと後に語られることになる。
極寒の次は灼熱地獄――砂漠の道標、燈火の塔の地下に隠された迷宮の奥に、災禍である炎の魔人が封印されていたのだ。
「これは、なんて魅惑的な筋肉……はっ、み、みなさん! 惑わされてはいけませんっ!」
『エイミ……アレに見惚れてるのはアンタだけよ』
上半身は筋肉質の大男。下半身は煙。そんな魔人の上半身をうっとり見つめるエイミ。
それでも人々に危害を加える存在ということで、彼女はしっかり気持ちを切り替えて仲間と共に災禍に立ち向かった。
見た目通りの圧倒的な力に傷つき、倒れることもあったが、水属性魔法を中心とした攻撃やこまめな回復と補助を切らさずに立ち回ることで撃退に成功するのだった。
これで災禍は地、光、水、火の四体……八体の災禍を半分倒したことになるのだ。
やや急ぎ足になるのは、後半になるほど周囲の気を取り込んで強化されていくから。完全に目覚めてしまえば、今のエイミたちでもこんなに順調にはいかないだろう。
「いよいよ後半戦かぁ……ここまではどうにかなったね」
「そうじゃなきゃ困る。災禍が目覚めて本格的に活動を始めたら、周囲の被害はこんなもんじゃないだろうからな」
と、フリュエラの背に乗って移動しながらのサニーとシグルスの会話に、彼らの下から声がした。
《その通り。例えばまだ残っている風の災禍なんかは“病撒き散らすもの”と呼ばれているよ》
「病撒き散らすもの……なんかヤバそうだな」
《その翼は瘴気を生み出し、羽ばたく度に地上へそれを送りこむ……生ある者を蝕むために存在するような、おぞましい魔獣さ》
風の災禍が風の精霊の住処と近い位置に封印されているなら、その被害を真っ先に受けることになるのはフォンドの故郷グリングランだろう。
大切な人たちが瘴気に倒れるさまが脳裏を過ぎり、我知らずフォンドの顔が険しくなった。
