52:二体目の災禍
ルクシアルを訪れる人間には馴染み深い洞窟の、女神像に守られたその先へ足を踏み入れたエイミたちは、途端に広がる光景に言葉を失う。
「すっご……」
そうとだけ呟いたのはサニーだったか。辺り一面光輝く洞窟内の壁はまるで鏡が敷き詰められているようだ。
自らの姿を映す鏡の壁に触れ、モーアンはまじまじとそれを覗き込む。
「小さい頃に一度迷い込んだきりだけど……こんなに綺麗な場所だったんだ」
『覚えておらなんだか。泣きべそ小僧は逃げるのに必死じゃったからのう』
「アマ爺、その話はもういいから!」
かっかっか、とモーアンをからかう光精霊だったが、直後その表情が真剣みを帯びた。
『じゃが、気をつけろ。この洞窟の壁はただ美しいだけではない』
「え?」
『光の攻撃魔法だけは唱えてはいかんぞ。ここの魔物には効果が薄いし、何より壁に跳ね返って仲間に当たってしまうこともあるんじゃ』
「そ、そんな厄介な……!」
つまりあらゆる属性攻撃魔法を操るプリエールはともかく、光属性を得意とするモーアンには攻撃手段がなくなってしまうということ。
一気に無力になってしまった神官は、情けない声をあげてがっくりと項垂れた。
「それじゃあ僕、回復魔法しかできないじゃないかぁ」
「大丈夫だモーアンさん。オレたちが守るから!」
「わぁ頼もしい……」
どんと胸板を叩いて見せるフォンドに笑顔を引き攣らせつつも、モーアンは鏡のような岩壁をじっと見つめる。
回復やサポートという役割があるとはいえ、唯一の攻撃手段を封じられてはできることが一気に減ってしまう。
(跳ね返す、か……)
本来、攻撃魔法というのは使い手によって攻撃対象を指定され、敵味方の識別をされた状態で発現する。
それが一度跳ね返されたことで術者の手を離れ、識別が解除されていまう……モーアンは己のこめかみを人差し指で数回叩いた。
「モーアンさん、何か考えてますね?」
「いつものクセ、だな!」
『考えてるというか企んでるというか……』
エイミにフォンド、ミュー。彼との付き合いが特に長い初期メンバーたちが顔を見合わせ、笑う。
『さて、何が出てくるかしらねぇ?』
微笑む瞳には、信頼を映して。
考え出すと入り込んでしまう癖のある年長の神官を守ろうと、改めて決意しながら。
「にしてもこの壁、砕いて売ったりできないかなぁ?」
「盾の材質に応用できたりしないか……?」
「ほらほら、行くわよあなたたち!」
伝説の災禍に挑むとは思えない和やかさと賑やかさで、彼らは洞窟の奥へと進んでいくのだった。
「すっご……」
そうとだけ呟いたのはサニーだったか。辺り一面光輝く洞窟内の壁はまるで鏡が敷き詰められているようだ。
自らの姿を映す鏡の壁に触れ、モーアンはまじまじとそれを覗き込む。
「小さい頃に一度迷い込んだきりだけど……こんなに綺麗な場所だったんだ」
『覚えておらなんだか。泣きべそ小僧は逃げるのに必死じゃったからのう』
「アマ爺、その話はもういいから!」
かっかっか、とモーアンをからかう光精霊だったが、直後その表情が真剣みを帯びた。
『じゃが、気をつけろ。この洞窟の壁はただ美しいだけではない』
「え?」
『光の攻撃魔法だけは唱えてはいかんぞ。ここの魔物には効果が薄いし、何より壁に跳ね返って仲間に当たってしまうこともあるんじゃ』
「そ、そんな厄介な……!」
つまりあらゆる属性攻撃魔法を操るプリエールはともかく、光属性を得意とするモーアンには攻撃手段がなくなってしまうということ。
一気に無力になってしまった神官は、情けない声をあげてがっくりと項垂れた。
「それじゃあ僕、回復魔法しかできないじゃないかぁ」
「大丈夫だモーアンさん。オレたちが守るから!」
「わぁ頼もしい……」
どんと胸板を叩いて見せるフォンドに笑顔を引き攣らせつつも、モーアンは鏡のような岩壁をじっと見つめる。
回復やサポートという役割があるとはいえ、唯一の攻撃手段を封じられてはできることが一気に減ってしまう。
(跳ね返す、か……)
本来、攻撃魔法というのは使い手によって攻撃対象を指定され、敵味方の識別をされた状態で発現する。
それが一度跳ね返されたことで術者の手を離れ、識別が解除されていまう……モーアンは己のこめかみを人差し指で数回叩いた。
「モーアンさん、何か考えてますね?」
「いつものクセ、だな!」
『考えてるというか企んでるというか……』
エイミにフォンド、ミュー。彼との付き合いが特に長い初期メンバーたちが顔を見合わせ、笑う。
『さて、何が出てくるかしらねぇ?』
微笑む瞳には、信頼を映して。
考え出すと入り込んでしまう癖のある年長の神官を守ろうと、改めて決意しながら。
「にしてもこの壁、砕いて売ったりできないかなぁ?」
「盾の材質に応用できたりしないか……?」
「ほらほら、行くわよあなたたち!」
伝説の災禍に挑むとは思えない和やかさと賑やかさで、彼らは洞窟の奥へと進んでいくのだった。
