51:苦き想い出の地
モーアンとプリエールがエイミたちと合流したのは、洞窟の入口に着いて程なくしてのことだった。
「みんな、お待たせ」
「なになに? 何のお話してきたの?」
サニーにまっすぐ無邪気に問われ、モーアンたちは一旦顔を見合わせる。
「……詳しくは後で話すけど、ケイオスについて、かしらね」
「ノクスはしばらく彼と行動してたみたいだからね。重要な話も聞けたけど、とりあえず今は災禍を優先しなくちゃ」
ケイオスの動きにも注意しなくてはならないが、現状で一番差し迫った危機は災禍のことだ。
周辺に及ぼす影響を考えると、ふたりは災禍を放ってケイオスのもとへ向かうのは危険だろうと判断したのだ。
「わかりました。モーアンさん、洞窟の案内をお願いしますね」
「うん。と言っても目印はわかりやすいよね。すぐそこの女神像がある横穴から入るんだよ」
と、モーアンが指し示した先には、ルクシアル側の出入り口からそう離れていない場所にぽつんと佇む女神像が。
『改めて見ると近いわね……』
「実際はその穴からさらに奥深くに道が続いてるからね。唯一の入口である穴だけ結界で塞いだ状態なんだ」
『って、大雑把に蓋しただけじゃない。危なくないの?』
「うう、僕もそう思う……立ち入り禁止の札があるとはいえ、万が一ってことはあるからねぇ」
このぐらいの距離なら、子供が興味本位で迷い込んでもおかしくないだろう。
ルクシアルの子供たちは、それがどれだけ危険なことか耳が痛くなるまで聞かされて育ってきた。けど、だからこそ好奇心がそそられる者もいるわけで……
(……そういえば、あの時はノクスが助けに来てくれたんだよな。自分だって怖いのに、しゃがみこんで泣いてる僕の手を引っ張って、あとは必死になって走って……)
無力な子供だった自分たちがあの時どうにか助かったのは、光精霊ディアマントの加護か、レレニティア様の導きかもしれない。神官でなくてもそう思うだろう。
今度は、その危険な場所に自ら赴くことになるのだ。仲間と共に、自分自身も力をつけて。
気合を入れようと、力強く一歩を踏み出したその時だった。
『おお、そうか、そうじゃったか! おぬし、あの時の泣きべそ小僧じゃな?』
「!?」
突然モーアンの前に現れる白い火の玉。しばらく静かだったディアマントが、こんな時に限って飛び出してきた。
「「泣きべそ小僧?」」
「ちょっ、アマ爺、それはっ」
『いやぁ随分大きくなっとったからわからんかったわい。実はあの時一部始終を見ておってなぁ……』
興味津々な仲間たちに、楽しげに語り始める光精霊。今すぐその口を塞がなきゃと思うが、そもそもこの火の玉に目はあっても口らしき部分は見当たらない。
「はぁ……もういいや。今はとにかく災禍を止めなくちゃね」
「そうですね。行きましょう!」
苦い想い出に浸るのもほどほどに、モーアンは封印の地へと足を踏み入れる。
何もできなかった子供などではなく、世界を救うために戦う仲間の一員として。
「みんな、お待たせ」
「なになに? 何のお話してきたの?」
サニーにまっすぐ無邪気に問われ、モーアンたちは一旦顔を見合わせる。
「……詳しくは後で話すけど、ケイオスについて、かしらね」
「ノクスはしばらく彼と行動してたみたいだからね。重要な話も聞けたけど、とりあえず今は災禍を優先しなくちゃ」
ケイオスの動きにも注意しなくてはならないが、現状で一番差し迫った危機は災禍のことだ。
周辺に及ぼす影響を考えると、ふたりは災禍を放ってケイオスのもとへ向かうのは危険だろうと判断したのだ。
「わかりました。モーアンさん、洞窟の案内をお願いしますね」
「うん。と言っても目印はわかりやすいよね。すぐそこの女神像がある横穴から入るんだよ」
と、モーアンが指し示した先には、ルクシアル側の出入り口からそう離れていない場所にぽつんと佇む女神像が。
『改めて見ると近いわね……』
「実際はその穴からさらに奥深くに道が続いてるからね。唯一の入口である穴だけ結界で塞いだ状態なんだ」
『って、大雑把に蓋しただけじゃない。危なくないの?』
「うう、僕もそう思う……立ち入り禁止の札があるとはいえ、万が一ってことはあるからねぇ」
このぐらいの距離なら、子供が興味本位で迷い込んでもおかしくないだろう。
ルクシアルの子供たちは、それがどれだけ危険なことか耳が痛くなるまで聞かされて育ってきた。けど、だからこそ好奇心がそそられる者もいるわけで……
(……そういえば、あの時はノクスが助けに来てくれたんだよな。自分だって怖いのに、しゃがみこんで泣いてる僕の手を引っ張って、あとは必死になって走って……)
無力な子供だった自分たちがあの時どうにか助かったのは、光精霊ディアマントの加護か、レレニティア様の導きかもしれない。神官でなくてもそう思うだろう。
今度は、その危険な場所に自ら赴くことになるのだ。仲間と共に、自分自身も力をつけて。
気合を入れようと、力強く一歩を踏み出したその時だった。
『おお、そうか、そうじゃったか! おぬし、あの時の泣きべそ小僧じゃな?』
「!?」
突然モーアンの前に現れる白い火の玉。しばらく静かだったディアマントが、こんな時に限って飛び出してきた。
「「泣きべそ小僧?」」
「ちょっ、アマ爺、それはっ」
『いやぁ随分大きくなっとったからわからんかったわい。実はあの時一部始終を見ておってなぁ……』
興味津々な仲間たちに、楽しげに語り始める光精霊。今すぐその口を塞がなきゃと思うが、そもそもこの火の玉に目はあっても口らしき部分は見当たらない。
「はぁ……もういいや。今はとにかく災禍を止めなくちゃね」
「そうですね。行きましょう!」
苦い想い出に浸るのもほどほどに、モーアンは封印の地へと足を踏み入れる。
何もできなかった子供などではなく、世界を救うために戦う仲間の一員として。
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