49:再び、地下坑道
以前地下坑道を訪れた時、魔界の扉が開いていたのは最深部と思しき大空洞だった。
扉から現れた熊のような巨大モグラに苦戦しながらも勝利をおさめたのも、随分前のことに感じられる。
『道は結構変わってたし、現れる魔物も強くなってたけど、ここまでは辿り着けたわね』
「災禍の封印もここにあるのか……?」
と、奥に視線をやれば、前回の戦闘でできたのか壁の一箇所に亀裂が。
よく見ると亀裂から微かに光が漏れて、壁は意外と薄く、その向こうに“何か”があると示唆しているようだった。
「なあ、この壁ちょっと壊せないか?」
『おう、やれるぜ。ただ、災禍が現れた時のことを考えて、周りの天井や壁の強度は高めて……』
ガネットが目を閉じ、黄金色の輝きを纏い、周囲に向かって放つ。
大空洞の中や亀裂の向こうまで届いた光は岩壁や天井を覆い、そして散った。
直後、ガラガラと音を立てて亀裂の箇所だけが崩れ落ち、人ひとりふたり通れる程度の穴が開いて……
「わぁ……っ」
思わず感嘆の声をあげるサニー。穴の先にはさらにもうひとつの、先ほどより広大な大空洞があり、その中央には星樹の近くで見たものと同じ白い石柱が立っていた。
柱に埋め込まれた橙色の石は鼓動のように明滅しており、妙に不気味さを感じさせる。
「これが、封印……なのかな?」
「封印をわざと解いて、まだ本調子でない災禍を倒す……なんだか気が引けますが……」
武人として正々堂々さを好むエイミは寝込みを襲うようなやり方に僅かに戸惑いを示すが、
「そうは言っても千年前には多くの人を、今はディグ村の人たちを苦しめているんだから。情けはいらないわよ、エイミ」
「……それもそうですね。では……」
災禍はそういった考えが通じる相手ではない、とプリエール。エイミも気を取り直し、槍を構える。
「準備はいいですか、皆さん?」
「おう、いつでもいいぜ!」
フォンドの力強い頷きに後押しされ、エイミは柱に向かって槍を振り下ろす。
パキィン、と石が砕けた音とは違う、甲高い音がして、石柱は砂となって崩れてしまう。
白い砂の山にぽとりと橙色の石が落ちると、そこから黒く歪んだ気が溢れ出し……
『来るわよ!』
ドォン!
一瞬の爆発で、辺りは砂煙に覆われた。
「な、なに!?」
「これは……!」
烟る視界の奥にゆらりと現れる大きな影。ゆったりとした動きと共に、洞窟内が揺れるような地響き。
誰もが見上げるその先で、ふたつの赤い光が強く輝いた。
「なんか……デカすぎない?」
モーアンがそう呟いてしまうのも無理はない。
砂煙が晴れて現れた“災禍”は、建物ほどもある金属製の巨人だった。
封印の石柱にあったのと同じ色をした石を飾った立派な胴体。大きな腕に対して頭はやや小さめで下半身はなく、肩や胸、頭部などあちこちのパーツが尖っている。
ルクシアルを襲った自動人形よりももっと、頑強そうで無骨な見た目をしていて……
「ちょっとカッコいい、かも……」
『なんて?』
フォンドは喉元まで出かかったその言葉を飲み込みきれず、ついぽろりと口にしてしまうのだった。
扉から現れた熊のような巨大モグラに苦戦しながらも勝利をおさめたのも、随分前のことに感じられる。
『道は結構変わってたし、現れる魔物も強くなってたけど、ここまでは辿り着けたわね』
「災禍の封印もここにあるのか……?」
と、奥に視線をやれば、前回の戦闘でできたのか壁の一箇所に亀裂が。
よく見ると亀裂から微かに光が漏れて、壁は意外と薄く、その向こうに“何か”があると示唆しているようだった。
「なあ、この壁ちょっと壊せないか?」
『おう、やれるぜ。ただ、災禍が現れた時のことを考えて、周りの天井や壁の強度は高めて……』
ガネットが目を閉じ、黄金色の輝きを纏い、周囲に向かって放つ。
大空洞の中や亀裂の向こうまで届いた光は岩壁や天井を覆い、そして散った。
直後、ガラガラと音を立てて亀裂の箇所だけが崩れ落ち、人ひとりふたり通れる程度の穴が開いて……
「わぁ……っ」
思わず感嘆の声をあげるサニー。穴の先にはさらにもうひとつの、先ほどより広大な大空洞があり、その中央には星樹の近くで見たものと同じ白い石柱が立っていた。
柱に埋め込まれた橙色の石は鼓動のように明滅しており、妙に不気味さを感じさせる。
「これが、封印……なのかな?」
「封印をわざと解いて、まだ本調子でない災禍を倒す……なんだか気が引けますが……」
武人として正々堂々さを好むエイミは寝込みを襲うようなやり方に僅かに戸惑いを示すが、
「そうは言っても千年前には多くの人を、今はディグ村の人たちを苦しめているんだから。情けはいらないわよ、エイミ」
「……それもそうですね。では……」
災禍はそういった考えが通じる相手ではない、とプリエール。エイミも気を取り直し、槍を構える。
「準備はいいですか、皆さん?」
「おう、いつでもいいぜ!」
フォンドの力強い頷きに後押しされ、エイミは柱に向かって槍を振り下ろす。
パキィン、と石が砕けた音とは違う、甲高い音がして、石柱は砂となって崩れてしまう。
白い砂の山にぽとりと橙色の石が落ちると、そこから黒く歪んだ気が溢れ出し……
『来るわよ!』
ドォン!
一瞬の爆発で、辺りは砂煙に覆われた。
「な、なに!?」
「これは……!」
烟る視界の奥にゆらりと現れる大きな影。ゆったりとした動きと共に、洞窟内が揺れるような地響き。
誰もが見上げるその先で、ふたつの赤い光が強く輝いた。
「なんか……デカすぎない?」
モーアンがそう呟いてしまうのも無理はない。
砂煙が晴れて現れた“災禍”は、建物ほどもある金属製の巨人だった。
封印の石柱にあったのと同じ色をした石を飾った立派な胴体。大きな腕に対して頭はやや小さめで下半身はなく、肩や胸、頭部などあちこちのパーツが尖っている。
ルクシアルを襲った自動人形よりももっと、頑強そうで無骨な見た目をしていて……
「ちょっとカッコいい、かも……」
『なんて?』
フォンドは喉元まで出かかったその言葉を飲み込みきれず、ついぽろりと口にしてしまうのだった。
