49:再び、地下坑道

 魔鉱石の洞窟の地下坑道はもともと薄暗く入り組んだ構造だったが、以前来た時よりもさらに暗く陰鬱な空気で満ちていた。

「きらめきの森がきらめかなかった時と似てるな……」
『ええ。あの重苦しい感じ……イヤになっちゃうわね』

 長くいればそれだけ気が滅入ってしまいそうなそれも、災禍の影響なのだろうか、と。
 けれどもディグ村の住人たちのように力を奪われる感覚まではないのは、きらめきの森の時同様聖なる種子が守ってくれているのだろう。

「それにしても……なんか、道が増えてないかい?」
『しばらく来ない間に掘り進めたんだろ。迷わねえよう注意しろよ』

 ガネットのさらりとした口調から、この地下坑道では珍しくないことなのがうかがえる。

「そういえば、前に来た時も災禍の話を聞いたよな」
「あの時は魔界の扉が開いて、見たことない魔物が現れて……」

 その時に、ここが千年前の人魔封断時代に災禍が現れた場所に近いという話を聞いたことを思い出す。
 封印復活前とはいえ、まさかその災禍を倒すために来ることになるとは……エイミたちはしみじみと、己の数奇な旅路を振り返った。

「じゃあ、魔界の扉があった奥の広間まで行けばいいんだよな?」
『そうだろうな。ただ……』

 ガネットの言葉が終わらないうちに、じわりと嫌な気配が周囲に現れる。
 泥が集まって人型になった魔物や、鮮やかで毒々しい色をしたトカゲ、黄色く透き通ったスライム、鋭い爪をもつモグラ……どれも、地属性の魔物のようだ。

『ここらにはほとんど魔物は出ねえはずなんだが、これも災禍の影響だな……』
「ディグ村で武器防具を新調しておいて良かったな。早速出番があった」

 言うが早いか、シグルスは鞘から剣を抜き放つ。冷たく冴えた刀身の輝きが、きらりと軌跡を描いた。

「ねえシグルス、きみちょっとウキウキしてない……?」
「まさか。けど、さすが噂に名高いディグ村の武具だな。勿体ぶるだけのことはある」

 南から西へ大陸を跨いだ騎士王国ディフェットにまでその名を轟かせる職人の村。その憧れの武具を手にしたシグルスの目がこころなしか輝いているように見える。

「魔力が隅々まで行き渡るように刻まれた刀身の回路……他のもそうだが、持ち主の魔力を巡らせることで体の延長のような一体感を」
「なるほど。この手に馴染む感じはそういうことだったんですね!」

 彼が言うには、刃の表面を迷路のように巡る模様が使い手の魔力を通し、武器を扱いやすくして威力を上げているのだという。
 そういったものを感じ取れるのは彼がハーフエルフだからか、或いは努力して得た知識か……さすがです、とエイミが興奮気味にシグルスを見上げる。

「興味深いお話してるとこ悪いんだけど……」
「後で聞くから今は戦ってー!」

 そんな彼らをぐるりと囲む魔物たちは、現在進行形で集まり、その数を増やしていて。

「っと、それじゃあ続きは帰ってからだな」
「ディグ村の皆さんのためにも、ですね!」

 シグルスとエイミは頷くと、それぞれ武器を手に魔物へと駆け出した。
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