47:翼の聖獣フリュエラ
登場するなり己の美しさを存分に披露しまくる聖獣フリュエラに、しばし呆然としていた一行だったが、
「って、そんなことしてる場合じゃないんだ! 星の庭への扉が開かれてしまったんだから……!」
と、まず声をあげたのはモーアンだった。空に浮かぶ“星の庭”への扉は、依然として煌々と光を湛えている。
《ああ、それなら大丈夫さ。見た目は無防備に開かれているが、あそこには女神像とは比べものにならないほど強力な結界が張られている》
バチ、バチッと音を立てて、扉に向かって飛んできたものたちが弾かれ、落ちていく。
「あんなにアッサリと……」
《あの様子ならしばらくは問題ないよ。今のうちに聖域へ連れて行ってあげよう》
フリュエラはそう言って頭を下げ、エイミたちが乗りやすいように身を屈めた。
しばらくは、と言うなら、いつかは突破されてしまうかもしれない。あまりのんびりもしていられないだろう。
モーアンは聖獣の体をよじ登りながら、ノクスを振り返った。
「ごめん、ノクス。君の詳しい話は後で聞く。一足先にルクシアルへ戻っててくれないかい?」
「モーアン、けど俺は……」
最初からケイオスを裏切るつもりだったとはいえ、ノクスがルクシアルに与えた損害は決して少ないものではない。
それなのに、のこのこと戻って良いものだろうか……俯くノクスに、モーアンが笑いかける。
「ま、ルーメン様からのゲンコツは覚悟したほうがいいんじゃない?」
「え……」
「ちゃんと事情を話して、こってりしぼられておいでよ。それから、ルクシアルのためにこき使われてくれればいい」
「モーアン……」
ぐ、とノクスの口が引き結ばれ、拳が強く握り締められる。
逡巡は一瞬。友の想いを汲み取ると、ノクスは顔を上げた。
「……わかったよ。けど、その前に伝えとくことがある」
「え?」
「ルクシアルで言ったろ。ケイオスの次の狙いは“災禍”だって。たぶん、星の庭に入れないことも織り込み済みだ」
「災禍……」
千年前に各地で暴れ、レレニティアによって封じられたとされる伝説の魔物……それが“災禍”だ。
地や火など、全部で八体いるとされるそれは、そこらじゅうにいる魔物とは一線を画す強さと狂暴さだという。
「星の庭への扉を開いたら災禍を目覚めさせる。ヤツは前にそんなことを言ってた」
「災禍を目覚めさせることが、単純に世界中を危機に陥れるだけじゃなく、何か他の狙いに繋がるんじゃないか、ってこと?」
「おそらくな……」
ノクスはそう言うと、フリュエラの背にうまく乗れないでいるモーアンの体を両手で力任せに押し上げた。
「わっ」
「それじゃ、俺はおとなしく神殿に帰るから。気をつけろよ、モーアン」
ニカッと白い歯を見せる快活な笑みは、よく知る親友のそれで、モーアンも自然と目を細める。
「ありがとう。行ってくるよ」
「おう!」
ノクスが数歩あとずさると、翼の聖獣は大きく羽ばたき、地上を離れる。
やがてその姿は遠く、天へと。次第に小さくなっていく影を見上げ、大きく溜息を吐く。
「……ったく、しばらく見ねえ間に、すっかり強くなりやがって」
危なっかしい親友を見送るノクスの呟きは寂しげで、どこか嬉しそうでもあった。
「って、そんなことしてる場合じゃないんだ! 星の庭への扉が開かれてしまったんだから……!」
と、まず声をあげたのはモーアンだった。空に浮かぶ“星の庭”への扉は、依然として煌々と光を湛えている。
《ああ、それなら大丈夫さ。見た目は無防備に開かれているが、あそこには女神像とは比べものにならないほど強力な結界が張られている》
バチ、バチッと音を立てて、扉に向かって飛んできたものたちが弾かれ、落ちていく。
「あんなにアッサリと……」
《あの様子ならしばらくは問題ないよ。今のうちに聖域へ連れて行ってあげよう》
フリュエラはそう言って頭を下げ、エイミたちが乗りやすいように身を屈めた。
しばらくは、と言うなら、いつかは突破されてしまうかもしれない。あまりのんびりもしていられないだろう。
モーアンは聖獣の体をよじ登りながら、ノクスを振り返った。
「ごめん、ノクス。君の詳しい話は後で聞く。一足先にルクシアルへ戻っててくれないかい?」
「モーアン、けど俺は……」
最初からケイオスを裏切るつもりだったとはいえ、ノクスがルクシアルに与えた損害は決して少ないものではない。
それなのに、のこのこと戻って良いものだろうか……俯くノクスに、モーアンが笑いかける。
「ま、ルーメン様からのゲンコツは覚悟したほうがいいんじゃない?」
「え……」
「ちゃんと事情を話して、こってりしぼられておいでよ。それから、ルクシアルのためにこき使われてくれればいい」
「モーアン……」
ぐ、とノクスの口が引き結ばれ、拳が強く握り締められる。
逡巡は一瞬。友の想いを汲み取ると、ノクスは顔を上げた。
「……わかったよ。けど、その前に伝えとくことがある」
「え?」
「ルクシアルで言ったろ。ケイオスの次の狙いは“災禍”だって。たぶん、星の庭に入れないことも織り込み済みだ」
「災禍……」
千年前に各地で暴れ、レレニティアによって封じられたとされる伝説の魔物……それが“災禍”だ。
地や火など、全部で八体いるとされるそれは、そこらじゅうにいる魔物とは一線を画す強さと狂暴さだという。
「星の庭への扉を開いたら災禍を目覚めさせる。ヤツは前にそんなことを言ってた」
「災禍を目覚めさせることが、単純に世界中を危機に陥れるだけじゃなく、何か他の狙いに繋がるんじゃないか、ってこと?」
「おそらくな……」
ノクスはそう言うと、フリュエラの背にうまく乗れないでいるモーアンの体を両手で力任せに押し上げた。
「わっ」
「それじゃ、俺はおとなしく神殿に帰るから。気をつけろよ、モーアン」
ニカッと白い歯を見せる快活な笑みは、よく知る親友のそれで、モーアンも自然と目を細める。
「ありがとう。行ってくるよ」
「おう!」
ノクスが数歩あとずさると、翼の聖獣は大きく羽ばたき、地上を離れる。
やがてその姿は遠く、天へと。次第に小さくなっていく影を見上げ、大きく溜息を吐く。
「……ったく、しばらく見ねえ間に、すっかり強くなりやがって」
危なっかしい親友を見送るノクスの呟きは寂しげで、どこか嬉しそうでもあった。
