47:翼の聖獣フリュエラ

 天にまで届きそうな霊峰の頂上よりも、遥か上空に浮かぶ光の玉。
 それがこの世界レレニティアの中核とも呼べる“星の庭”への入り口なのだろうが……

「話には聞いていたけど、ホントに高ぇな……」
『い、いくらなんでもあんな高さは飛べないわ。ペラルゴ兄さんやユッカ姉さんだって……逆に言えば、すぐに誰かが侵入しちゃう可能性は低そうだけど』

 ミューが言うには、せっかく開いた“門”もあまりにも高すぎてドラゴニカの竜でも大半があの高さまでは辿り着けないだろうということらしい。
 例外がいるとすれば女王パメラの黒竜だが、単身で何処かへと飛び去っていくのを見て以来、その行方は知れない。

『っていうか、ここまで来たらフリュりゅんのチカラを借りりゃいいっしょ!』
「フリュ……“翼の聖獣フリュエラ”か。だがどこにもそれらしき姿は見えないな?」

 ふいに現れるなりシグルスの肩に乗る、木精霊ベルシュ。一行が辺りを見回すが、上空には何も見当たらない。

『呼べば来るよ。おーーい、フリュりゅーーーーーーんっ!』

 小さな体に見合わない、山頂に響き渡るほどの大声。
 一瞬、静寂の間があって、やがてバサッ、バサッと羽ばたく音が近づきながら降りてくる。

「あれが、翼の聖獣……!」

 ゆったりうねる太い尾に、ちょこんと生えた小さなツノ。竜と何かがまじったような、フワフワの体毛に覆われた白い大きな獣。その背には地上の生き物では見たことがないような八つの翼を生やしており、聖獣の名に相応しい神秘性をひと目で感じさせて。
 やがてエイミたちの前にふわりと着地すると、彼ら六人を背中に乗せられそうなほど大きな体躯だったとわかる。

「でっかいねぇ……」
「でも、可愛いです……!」

 エイミが目を輝かせると、フリュエラはそちらを見、ウインクで応える。

《……で、呼んだかい、ベルシュ?》

 海の聖獣シュヴィナーレと同じように、頭の中に直接響く声。やや高くねっとりと甘い、青年のようだった。

「翼の聖獣……あれが……」

 ぽかんと呟いたのはノクス。おとぎ話の存在が、まさか生きている間に目の前に現れるとは思わなかったからだ。

《おいおい、あれ呼ばわりはないだろう?》
「へ?」
《優美にして華麗。美しき翼の聖獣フリュエラ、と呼びたまえ。リピートアフターミー、はいっ!》

 フリュエラは高らかにそう言うと、己の翼を得意げに見せびらかしながら、その場で幾度となくポーズをとってみせる。
 毛先が虹色に染まった白い翼は確かに幻想的な美しさだが、立ち振る舞いって大事だな……と、その場にいた誰もが思ったという。
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