46:空の王者、来襲

『よくもやってくれたな!』

 緑の竜が空中で身を翻し、雷の息を吐き出す。
 どうやらユッカは風や雷を操る竜らしく、不規則に暴れる雷撃があちこちの地面を小さく抉った。

「うわわ、危ないなぁ!」
「こっちのほうがすばしっこいな……」

 乱れ飛ぶ雷をジグザグに跳んで避けながら、攻撃もちまちましているが、と吐き捨てるシグルス。
 もう一匹の動きを封じた技も、素早いあちらに当てるのは難しいだろう。

「うまく時間を稼いでプリ姉の魔法を待とうよ」
「そうだな。魔法には追尾性があるし、標的の近くで発動させられるものもある。地上から闇雲に攻撃するより命中率は高いだろ」

 とはいえ、とシグルスは自在に空を旋回するユッカを見上げる。
 ペラルゴに比べると一撃一撃の威力は低いのだが、これだけ乱発されるとこちらのダメージが蓄積されていく。
 攻撃を受けて動きが鈍り、ますます不利になることは避けたい。

「ダメージを和らげるものが必要だな……」
「エイミがかけてくれてる防御魔法じゃダメなの?」
「物理的な衝撃は防げるが、厄介なのはあの雷だ。それこそ魔法剣を鎧や盾にするような……」

 火や水などさまざまな属性を武器に宿らせて魔法と同じように相手の弱点を突く魔法剣。
 属性の付与を防御に回せば、逆に特定の攻撃を防ぐことができるのではないだろうか、と。
 そこまで思い至ったシグルスの前に、風精霊ラクトが軽やかに姿を現した。

『防御の場合は同じ属性をぶつけるといい。私の風が力になれるだろう』
「ああ。借りるぞ、ラクト」

 シグルスは頷き、糸を紡ぐように指先で風を絡め取ると、それを己の全身に纏わせる。

「風の守りよ、痛み和らげる衣となれ!」

 防御魔法が発動した瞬間にシグルスめがけて雷撃が飛んでくるが、風の衣がそれを弾いて逸らす。
 ほとんどダメージがないことに、術者本人が一番驚いていた。

「うまくいったな。ここまで効果があるとは……」
「もうカミナリなんて怖くないもんね!」
『むむっ……!』

 それならばと風竜は宙返りから勢いをつけ、その身を武器に突っ込んで来ようとするが……

「砂は石に、そして岩に……」

 フ、と竜の真上に落ちる影。ものすごい速度で塵が集まり、大地の魔力と混ざり、あっという間に巨大な岩が生まれる。
 術者であるプリエールの手が真っ直ぐ天に掲げられた上体から、一気に振り下ろされ……

「落ちなさい!」
『ぎゃあっ!』

 移動しながら標的の頭上をキープしていた岩が、プリエールの合図で落下し、竜の首筋に直撃する。
 弱点を突いた強烈な一撃に、竜は堪らずふらふらと広場に墜落した。
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