46:空の王者、来襲

 霊峰エスカリエの頂上を目指す勢力は、エイミたちの他におそらく三つ。
 それらが戦い、潰し合っていた痕跡を残す山道をある程度進んだところで、ちょうど休憩できそうな開けた場所に出た。
 ぽつりと佇む風化の進んだ女神像を見つけ、駆け寄ると、どうやら結界が消えているようだが……本来の封印に守られた静かな霊峰ならば、それも必要のない環境だったのだろう。

「もしもの時の避難場所になるし、結界を復活させておいたほうが良さそうだね」

 と、モーアンが女神像に歩み寄ったところで、彼の頭上に不自然に大きな影が落ちた。

「モーアン!」
「伏せてください!」

 誰よりも鋭く放たれたエイミの声に、咄嗟にモーアンが頭を引っ込めるようにしてしゃがむ。
 すると彼の頭上で、ひゅ、と空を切る音がして、次いで風圧が襲いかかった。

「うわぁ!」

 あと一瞬反応が遅れれば、モーアンの首は胴体と切り離され、地面に落ちていたことだろう――今まさに女神像がそうなってしまったように。

「た、助かった……ありがとう、エイミ」
『ガルディオのヤツに操られた竜……城を奪還した時、全員は解放しきれなかったのよね』
「モーアンさん、動けますか?」

 エイミとミューが空を睨みながら前に出るとモーアンは小さく頷き、一度引き下がる。
 影の正体は大きな竜が二匹。彼らからすれば広い場所に出たエイミたちは恰好の標的だ。

「空の王者とも呼ばれる竜騎士の竜……手強い相手になりそうだな」

 手加減などすればこちらがやられるだろう、とシグルスが剣を構えると、その刀身が青白く輝きだす。
 武器に魔力を纏わせる付与魔法は僅かながら通常より攻撃範囲が広がるため、飛び回る相手にも多少は攻撃を当てやすくなるだろう。

「囮役はアタシに任せて。プリ姉とモー兄は魔法でどかーんとやっちゃってよ!」
「サニー、援護します。気をつけてください!」

 サニーが身軽さを活かして派手に動き回り、竜の注意を引きつける。
 そんな彼女を守るため、エイミは防御力を高める魔法を唱えたかと思えば、すかさず変身したミューの背に飛び乗って。
 敵の竜よりふたまわりほど小さな水竜は、その分素早く自在に空を泳いだ。

「わたしは空中から……!」
「じゃあオレはシグルスと一緒に後ろのふたりを守るぜ!」
「ふん、仕方ないな」

 フォンドは強力な魔法の準備を始めたプリエールとモーアンが襲われないように、シグルスと共にふたりの前に立って。
 強敵となるだろう相手と対峙した彼らが役割を決めてそれぞれ動き出すまで、そう時間はかからなかった。
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