45:天へと続く道

 きらめきの森の奥にそびえる天へと続く道、霊峰エスカリエ。
 霊峰の入り口には代々神殿で管理している封印が施されていたようだが、いくつかの足跡で荒れた地面を見る限り、やはりノクスが解除してしまったらしい。

「霊峰エスカリエ……長年この山に足を踏み入れた者はいないって話だったのに」
「それって空からなら入れたんじゃないの? 翼のある魔物とか悪魔とか……」

 空の王者である竜たちもまだ一部はガルディオの支配下に置かれており、悪魔の中にも翼をもつものがいる。
 サニーの疑問に、いや、とモーアンが首を振った。

「人間すらも阻む強力な結界が山全体を覆っていたんだ。今はその全てが消えてなくなっちゃってるけどね」

 町や各地の女神像の周囲に施されたものとは違い、何もかもを通さない結界。今まで山を守っていたそれは、恐らく鍵を奪ったノクスによって取り払われてしまった。
 つまりこうなってしまえば空からでも入り放題ということだ。

「ここもきらめきの森同様に、動物やおとなしい魔物ばかりで平和だったって話だよ」

 過去形で話すモーアンの言葉通り、侵入した魔物が暴れ回り、黒い靄……“穢れ”も撒き散らされ、平穏だった山はもはや見る影もない。
 こちらを見つけるなり狙いを定める凶暴な魔物たちを前に、エイミは槍の柄を強く握り締め、ぐっと穂の切っ先を下げた。

「これからは山道での戦闘が続くと思われます。皆さん、気をつけてください」
「おう。早くノクスさんに追いつかねえとな!」

 容赦なく襲い来る魔物を蹴り飛ばし、フォンドが続く。
 僅かでも気を抜けば、ここにいる全ての敵の餌食となってしまう、危険な道を……

「ノクスはここを越えて行ったと言うのか……」

 森で倒れていた各勢力の兵を見る限り、ノクスも魔族率いる魔物や悪魔と敵対関係にあるのだろう。
 彼自身も神官の中ではかなり優秀な魔法の使い手で自動人形も従えているとはいえ、この各勢力入り乱れる道を進むのは生半可なことではない。

(こんな時でも君の無事を願ってしまうのは、いけないことなんだろうか……ノクス)

 ふと薄緑色の瞳が陰り、モーアンの唇がきゅっと引き結ばれる。
 そんな彼の肩をぽんと叩いたのは、同じく後衛を担当する魔法使いのプリエールだった。

「ちゃんと見つけて、問い質さないとね。どういうことだってガシッと胸ぐら掴んで!」
「!」

 彼女の言葉は少しばかり乱暴に聞こえるが、それは同時にノクスが無事でないとできないことでもあって。

「あはは……胸ぐらは掴まないかなぁ」

 苦笑いで引いて見せながらも、こっそり「ありがとう」とつぶやくモーアン。
 直後、ふたり同時に唱えた光と炎の攻撃魔法が魔物に炸裂し、この場を強く照らした。
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