44:聖都を襲った悪夢
中央大陸、世界の中心に位置する信仰都市“輝ける都ルクシアル”。
以前来た時は荘厳な雰囲気ながらも行き交う人々の活気に満ちた、そんな地だった。
そして奥に聳える大きな神殿では、モーアンの父親がわりでもある厳しくも優しい大神官ルーメンがエイミたちをあたたかく迎え入れてくれたのだが……
「これは……」
「どうなっているんだ……!?」
町の外に人影はなく、代わりにうろついているのは人間と同じくらいのサイズの、無骨な機械人形。
ガシャンガシャンと音を立てながら先端に大きな鉄球がついた腕を振り回し、美しい町の景観を無遠慮に破壊している。
家の窓からたまに覗く影を見るに、どうやら住人は避難しているようだが……
「ど、どういうことだよ? ルクシアルに魔物がいるぞ!」
ここルクシアルは女神を祀る世界一の神殿があり、当然結界に守られているはず。
他の町と同様に、千年もの時を経てその効力が弱まってしまったのだろうか。
『どうやら……こやつらは魔法で動く自動人形のようじゃな』
「自動人形……?」
フォンドの疑問に姿を見せた光精霊は、ううむと唸って説明を始めた。
『あちこちの町に張られている結界じゃが、実は経年劣化の他にもいくつか弱点がある。こやつらはその中のひとつを突かれて送り込まれたようじゃ』
「弱点って?」
『悪意じゃ。結界が魔物の全てを弾くなら、ドラゴニカの竜騎士だって町に入れなくなってしまうじゃろ? そこを選別しとるのが悪意や害意の有無じゃよ』
全てが人間と敵対していたり、凶暴で誰彼構わず襲いかかる魔物ばかりではない。ごく少数だが人間と共存していたり、愛玩動物としてそばにいるものも存在するのだ。
『あれは与えられた命令を遂行するのみで、己の意思というものがない。生き物でもない。ただ淡々と動く人形に、結界も反応せんかったらしいのう』
何でも弾いてしまえば、それこそ人間ですら中に入れなくなってしまう。そのための穴を突いたようだ。
「そ、そんなのアリ!?」
『アリにしてしまった奴がおるんじゃよ』
と、そこでプリエールが顔を上げ、口を開く。
「禁呪の魔法士……」
『…………』
日頃騒がしい光精霊の沈黙が、彼女の呟きに対する肯定となった。
結界の弱点を突くことも、自動人形をけしかけることも、魔法に対してかなりの知識と技術をもつ人物の仕業だろう、と。
「なるほどわかったわ。これは禁術の一種ね。無機物にある程度の判断能力を持たせ生き物のように動かすなんて随分高度な……」
「プリエール、観察はそこまでにしておいたほうが良さそうだよ」
モーアンが彼女の言葉を遮り、杖を手に一歩進み出る。
自動人形たちはこちらを排除すべき敵と見做したらしく、軋む音を立てながらゆっくりと狙いをつけてきた。
「まったく、突然押し入っておいて随分だね……ルクシアルの平穏を返して貰おうか」
「行くわよ、みんな!」
大切な人たちが暮らす町を、好き勝手させるわけにはいかない。
いつになくやる気のモーアンに呼応するように、仲間たちもそれぞれ武器を構えた。
以前来た時は荘厳な雰囲気ながらも行き交う人々の活気に満ちた、そんな地だった。
そして奥に聳える大きな神殿では、モーアンの父親がわりでもある厳しくも優しい大神官ルーメンがエイミたちをあたたかく迎え入れてくれたのだが……
「これは……」
「どうなっているんだ……!?」
町の外に人影はなく、代わりにうろついているのは人間と同じくらいのサイズの、無骨な機械人形。
ガシャンガシャンと音を立てながら先端に大きな鉄球がついた腕を振り回し、美しい町の景観を無遠慮に破壊している。
家の窓からたまに覗く影を見るに、どうやら住人は避難しているようだが……
「ど、どういうことだよ? ルクシアルに魔物がいるぞ!」
ここルクシアルは女神を祀る世界一の神殿があり、当然結界に守られているはず。
他の町と同様に、千年もの時を経てその効力が弱まってしまったのだろうか。
『どうやら……こやつらは魔法で動く自動人形のようじゃな』
「自動人形……?」
フォンドの疑問に姿を見せた光精霊は、ううむと唸って説明を始めた。
『あちこちの町に張られている結界じゃが、実は経年劣化の他にもいくつか弱点がある。こやつらはその中のひとつを突かれて送り込まれたようじゃ』
「弱点って?」
『悪意じゃ。結界が魔物の全てを弾くなら、ドラゴニカの竜騎士だって町に入れなくなってしまうじゃろ? そこを選別しとるのが悪意や害意の有無じゃよ』
全てが人間と敵対していたり、凶暴で誰彼構わず襲いかかる魔物ばかりではない。ごく少数だが人間と共存していたり、愛玩動物としてそばにいるものも存在するのだ。
『あれは与えられた命令を遂行するのみで、己の意思というものがない。生き物でもない。ただ淡々と動く人形に、結界も反応せんかったらしいのう』
何でも弾いてしまえば、それこそ人間ですら中に入れなくなってしまう。そのための穴を突いたようだ。
「そ、そんなのアリ!?」
『アリにしてしまった奴がおるんじゃよ』
と、そこでプリエールが顔を上げ、口を開く。
「禁呪の魔法士……」
『…………』
日頃騒がしい光精霊の沈黙が、彼女の呟きに対する肯定となった。
結界の弱点を突くことも、自動人形をけしかけることも、魔法に対してかなりの知識と技術をもつ人物の仕業だろう、と。
「なるほどわかったわ。これは禁術の一種ね。無機物にある程度の判断能力を持たせ生き物のように動かすなんて随分高度な……」
「プリエール、観察はそこまでにしておいたほうが良さそうだよ」
モーアンが彼女の言葉を遮り、杖を手に一歩進み出る。
自動人形たちはこちらを排除すべき敵と見做したらしく、軋む音を立てながらゆっくりと狙いをつけてきた。
「まったく、突然押し入っておいて随分だね……ルクシアルの平穏を返して貰おうか」
「行くわよ、みんな!」
大切な人たちが暮らす町を、好き勝手させるわけにはいかない。
いつになくやる気のモーアンに呼応するように、仲間たちもそれぞれ武器を構えた。
