37:家族
フォンドに気圧されたジャーマはふらふらと二、三歩後ずさると、がっくり片膝をつき、項垂れた。
「俺、は……」
「ジャーマ……お前は奪われないために力を求めたって言ったよな」
ジャーマとは反対に、白い光を纏ったフォンドの体のあちこちにあった傷が癒えていく。
旅をしてから身につけた継続回復魔法は、どうやら先程吹き飛ばされた時にかけていたらしい。
「オレはちょっと違うんだ」
「なに?」
「オレは守りたくて力をつけようと思ったんだ。あの日、オレのことを守ってくれた親父みたいに」
奪われたくない。
守りたい。
似た意味にも聞こえるが、ジャーマは自分自身を、フォンドは周りの大切なものも含めていた。
その差はいつしかふたりの成長を明確に分け、本人の気性と共にそれぞれの強さへと変わった。
鋭く激しく穿つような、強力だがともすれば周囲も己も省みない“倒す”ことに特化したジャーマ。
そんな激しさはないが力強くもしなやかで、どこか穏やかさすらあるフォンド。
フォンドの強さは、師であるラファーガの強さを素直に吸収した結果でもあり、彼によく似ていた。
それがまた、強さを得ようと焦るジャーマにとっては癪に障ったのだろう。
「奪われないために頂点に立って、奪う側になる……確かにそうすればもう誰もお前から奪わないかもしれない。けど……その先はどうするんだよ?」
「うるさい、やめろッ!」
「そんなボロボロの体になって……お前の未来は、どうなるんだよ!?」
ぽん、とフォンドの肩に後ろから手が置かれ、彼の言葉を止める。
そのまま進み出たラファーガが、いつの間にか元の姿に戻って、ジャーマを見下ろす目を細めた。
「ジャーマ……一年前、反発して飛び出したお前を無理矢理にでも止めるべきだった」
「ラファーガ……」
「わしのやり方が合わないのなら、グリングランの外に出て、わしより良い師と巡り会えれば……広い世界に触れれば、お前の考えも変わるかもと思っていたが、それは勝手な考えだったようだな。すまなかった」
師とは、必ずしも特定の人を指すものではない。
稽古を重ねるだけが、修行と言えるわけでもない。
それはどちらも、ここまでの旅を経て大きく成長したフォンドが示していたことだった。
頭を下げるラファーガをぽかんと見ていたジャーマの体から、急に力が抜けていく。
「俺は、俺は……ぐうっ!」
「ジャーマ!?」
直後、ジャーマは胸を押さえてうずくまった。
周囲の魔物との戦闘を終えた仲間たちも、ただならぬ様子に慌てて駆けつける。
「ど、どうしたんだい!?」
「まさか……ジャーマ、しっかりしろ!」
のたうち回るジャーマの、全身に刻まれた黒い紋様がさらに拡がっていく。
「痛いッ……痛い痛い痛いッ! 内側から、何か膨れ上がって……ッ」
「ジャーマ、」
「助けてくれ、たす……ぅぐああッ!」
このままではあの時の魔族みたいに……悲惨な末路が脳裏をよぎった瞬間、フォンドは虚空にのばされたジャーマの手を取り、強く握り締めた。
「負けるな、ジャーマっ!」
「!」
「こんなの勝負じゃねえ。生きて、また前みたいに手合わせするんだろ!」
『ふむ……そろそろわらわの出番か』
継続回復魔法をかけながら必死に呼びかけるフォンドに応えるかのように、彼らの前に月精霊クレーシェが降りてきた。
『今ならその呪、祓えるやもしれぬ。フォンドとやら、わらわの力を使うが良い』
クレーシェから放たれた淡い光がジャーマを包み込み、辺りを優しく照らした。
「俺、は……」
「ジャーマ……お前は奪われないために力を求めたって言ったよな」
ジャーマとは反対に、白い光を纏ったフォンドの体のあちこちにあった傷が癒えていく。
旅をしてから身につけた継続回復魔法は、どうやら先程吹き飛ばされた時にかけていたらしい。
「オレはちょっと違うんだ」
「なに?」
「オレは守りたくて力をつけようと思ったんだ。あの日、オレのことを守ってくれた親父みたいに」
奪われたくない。
守りたい。
似た意味にも聞こえるが、ジャーマは自分自身を、フォンドは周りの大切なものも含めていた。
その差はいつしかふたりの成長を明確に分け、本人の気性と共にそれぞれの強さへと変わった。
鋭く激しく穿つような、強力だがともすれば周囲も己も省みない“倒す”ことに特化したジャーマ。
そんな激しさはないが力強くもしなやかで、どこか穏やかさすらあるフォンド。
フォンドの強さは、師であるラファーガの強さを素直に吸収した結果でもあり、彼によく似ていた。
それがまた、強さを得ようと焦るジャーマにとっては癪に障ったのだろう。
「奪われないために頂点に立って、奪う側になる……確かにそうすればもう誰もお前から奪わないかもしれない。けど……その先はどうするんだよ?」
「うるさい、やめろッ!」
「そんなボロボロの体になって……お前の未来は、どうなるんだよ!?」
ぽん、とフォンドの肩に後ろから手が置かれ、彼の言葉を止める。
そのまま進み出たラファーガが、いつの間にか元の姿に戻って、ジャーマを見下ろす目を細めた。
「ジャーマ……一年前、反発して飛び出したお前を無理矢理にでも止めるべきだった」
「ラファーガ……」
「わしのやり方が合わないのなら、グリングランの外に出て、わしより良い師と巡り会えれば……広い世界に触れれば、お前の考えも変わるかもと思っていたが、それは勝手な考えだったようだな。すまなかった」
師とは、必ずしも特定の人を指すものではない。
稽古を重ねるだけが、修行と言えるわけでもない。
それはどちらも、ここまでの旅を経て大きく成長したフォンドが示していたことだった。
頭を下げるラファーガをぽかんと見ていたジャーマの体から、急に力が抜けていく。
「俺は、俺は……ぐうっ!」
「ジャーマ!?」
直後、ジャーマは胸を押さえてうずくまった。
周囲の魔物との戦闘を終えた仲間たちも、ただならぬ様子に慌てて駆けつける。
「ど、どうしたんだい!?」
「まさか……ジャーマ、しっかりしろ!」
のたうち回るジャーマの、全身に刻まれた黒い紋様がさらに拡がっていく。
「痛いッ……痛い痛い痛いッ! 内側から、何か膨れ上がって……ッ」
「ジャーマ、」
「助けてくれ、たす……ぅぐああッ!」
このままではあの時の魔族みたいに……悲惨な末路が脳裏をよぎった瞬間、フォンドは虚空にのばされたジャーマの手を取り、強く握り締めた。
「負けるな、ジャーマっ!」
「!」
「こんなの勝負じゃねえ。生きて、また前みたいに手合わせするんだろ!」
『ふむ……そろそろわらわの出番か』
継続回復魔法をかけながら必死に呼びかけるフォンドに応えるかのように、彼らの前に月精霊クレーシェが降りてきた。
『今ならその呪、祓えるやもしれぬ。フォンドとやら、わらわの力を使うが良い』
クレーシェから放たれた淡い光がジャーマを包み込み、辺りを優しく照らした。
