31:海の聖獣シュヴィナーレ
嵐のような出来事からひと呼吸置くと、彼らを待ち受けていたものは……
「ひゃあぁぁぁ! さささ、さむいっ!」
「ぼ、防寒着を準備しておくんだったわ……!」
グリングランとドラゴニカは同じ北大陸だが、過ごしやすい気候のグリングランから山脈を挟んでより北にあるドラゴニカは極寒の雪国。
この国で生まれ育ったエイミとミューは慣れた寒さだが、他は違う。特に灼熱の砂漠が故郷のサニーには酷だろう。
相当堪えたらしく慌てて砂漠でも使った“氷炎の護り石”を取り出し、暖を取る。
「寒い……けど、すごく綺麗ね。雪も、泉も」
「水鏡の泉、なんて名前がつくくらいだもんね。まぁ、僕たちそこから出てきたんだけど……」
白い息を吐き出しながら見渡す周囲も真っ白な雪景色。
氷雪を花のように飾った木々に囲まれた泉の水はその名の通り自分たちの姿が映るほど清らかで、精霊の力を感じる泉だった。
『んー、やっぱここの空気が一番落ち着くわねぇ』
「砂漠の時とは正反対だなぁ。イキイキしてら」
『アンタも比較的平気そうね? ナントカは風邪引かないってヤツ?』
「オレにはアツい筋肉の鎧があるからな!」
『暑苦しっ』
ミューとフォンドが気安いやりとりをしていると、水面の中心に雫が落ちて音を立てた。
『ひとの住処で随分と騒いでくれるな』
「えっ?」
凛とした、女性の声だった。長く、ゆるく束ねた深い青色の髪。鱗を飾った青白い肌。下半身は魚のそれで、手には銛を携えて。
周囲に小さな水泡を漂わせ、水鏡の泉を住処と呼ぶことからも、他の精霊たちと同じくらいの大きさの彼女がここの精霊アクリアだと思われる。
「あなたが……水の精霊アクリアさんですね?」
『いかにも。そなたたちにはレレニティアの気配を感じるが……ドラゴニカが魔族に奪われたことや各地の異変と関係があるのだな?』
説明しようと口を開くエイミを、いや、と片手で制止する。
アクリアが一旦閉じた瞼を開くと、湖面の青緑の瞳が揺らぐ光を灯す。
『大概のことは世界中の水を通して感じている。ここに来るまでの大冒険も……シュヴィナーレは荒っぽかっただろう?』
「うっ」
『レレニティアが力を託し、これまでの精霊と契約し、シュヴィナーレがそなたたちを認めた。そうしてここまで来たのなら、わたしが力を貸さない理由はないだろう』
ぱん、と彼女の周りの泡が弾け、水滴がきらめきながら落ちていく。
すると泉の水面が真っ白に輝きだし、何やら映し始めた。
『わたしもあの魔族どもには腹が立っている。奴らを叩き出す作戦会議を始めようか』
「綺麗な見た目に反してなかなか血の気が多いな。まるで誰かさんみたいだ」
シグルスの一言で仲間たち全員の視線を浴びることになったエイミが「どうかしましたか?」と首を傾げた。
「ひゃあぁぁぁ! さささ、さむいっ!」
「ぼ、防寒着を準備しておくんだったわ……!」
グリングランとドラゴニカは同じ北大陸だが、過ごしやすい気候のグリングランから山脈を挟んでより北にあるドラゴニカは極寒の雪国。
この国で生まれ育ったエイミとミューは慣れた寒さだが、他は違う。特に灼熱の砂漠が故郷のサニーには酷だろう。
相当堪えたらしく慌てて砂漠でも使った“氷炎の護り石”を取り出し、暖を取る。
「寒い……けど、すごく綺麗ね。雪も、泉も」
「水鏡の泉、なんて名前がつくくらいだもんね。まぁ、僕たちそこから出てきたんだけど……」
白い息を吐き出しながら見渡す周囲も真っ白な雪景色。
氷雪を花のように飾った木々に囲まれた泉の水はその名の通り自分たちの姿が映るほど清らかで、精霊の力を感じる泉だった。
『んー、やっぱここの空気が一番落ち着くわねぇ』
「砂漠の時とは正反対だなぁ。イキイキしてら」
『アンタも比較的平気そうね? ナントカは風邪引かないってヤツ?』
「オレにはアツい筋肉の鎧があるからな!」
『暑苦しっ』
ミューとフォンドが気安いやりとりをしていると、水面の中心に雫が落ちて音を立てた。
『ひとの住処で随分と騒いでくれるな』
「えっ?」
凛とした、女性の声だった。長く、ゆるく束ねた深い青色の髪。鱗を飾った青白い肌。下半身は魚のそれで、手には銛を携えて。
周囲に小さな水泡を漂わせ、水鏡の泉を住処と呼ぶことからも、他の精霊たちと同じくらいの大きさの彼女がここの精霊アクリアだと思われる。
「あなたが……水の精霊アクリアさんですね?」
『いかにも。そなたたちにはレレニティアの気配を感じるが……ドラゴニカが魔族に奪われたことや各地の異変と関係があるのだな?』
説明しようと口を開くエイミを、いや、と片手で制止する。
アクリアが一旦閉じた瞼を開くと、湖面の青緑の瞳が揺らぐ光を灯す。
『大概のことは世界中の水を通して感じている。ここに来るまでの大冒険も……シュヴィナーレは荒っぽかっただろう?』
「うっ」
『レレニティアが力を託し、これまでの精霊と契約し、シュヴィナーレがそなたたちを認めた。そうしてここまで来たのなら、わたしが力を貸さない理由はないだろう』
ぱん、と彼女の周りの泡が弾け、水滴がきらめきながら落ちていく。
すると泉の水面が真っ白に輝きだし、何やら映し始めた。
『わたしもあの魔族どもには腹が立っている。奴らを叩き出す作戦会議を始めようか』
「綺麗な見た目に反してなかなか血の気が多いな。まるで誰かさんみたいだ」
シグルスの一言で仲間たち全員の視線を浴びることになったエイミが「どうかしましたか?」と首を傾げた。
