30:神殿の地下洞窟

 神殿の地下洞窟は薄暗いがある程度舗装されており、あまり荒れていないことからも定期的に人の出入りがあっただろうことがうかがえる。
 ただ、どこかしら海と繋がっているのか、水棲型の魔物とたびたび遭遇することがあった。
 ランタンの光を反射するてらてらと湿った表皮。こちらに狙いをつけながら取り囲むのは、トカゲやクラゲなどと似た形をした魔物たちだ。

「うひゃあ……普段は閉鎖されてるわけだよ」
『ナルホドね。ドラゴニカの中でも特に武闘派で知られる王族みたいな人じゃないと迂闊に出入りできないわね、これ』

 魔法を得意とするモーアンやプリエールを守るように、彼らを内側に守りながらそれぞれ散開する前衛たち。
 まずは一発、力強い踏み込みと共に豪快にスライムを殴り飛ばすフォンドを見て、サニーが目を丸くする。

「フォンド兄ちゃん、すっごいよね……殴ってもあんま効かなさそうな相手も殴って通しちゃうんだもん」
「あれは闘気を鋭く尖らせて拳に乗せているんですよ。表面ではなく内部に攻撃を届かせているんです」
「はぇ~……」

 貫く拳は槍のように、鋭い蹴りには刃を纏わせて。その圧は風を巻き起こし、彼自身が旋風となって暴れまわる。
 豪快でありながらどこか流麗な拳舞は、こんな状況でなければ見惚れてしまうほどだ。

「エイミがたまにやる遠くの敵をズバッと斬るやつもその応用だろ?」
「はい。あれはフォンドの技を見て思いついたんです」

 言いながら、エイミはその“ズバッと斬るやつ”――闘気を槍の穂先に集中させ、払うことで斬撃を遠くへ飛ばす技である――で魔物を一匹仕留める。
 数はあちらの方が上だが、こちらも場数を踏んできた。囲まれた場合の対処にも慣れたもので、言葉を交わす余裕さえあるようだ。
 と、そこに、

「焔の猛追、爆ぜよ!」

 ドカンと派手な音を立てて、魔物が数匹まとめて吹っ飛ぶ。
 前方へかざした手を口許に持っていくと、プリエールの唇がにっこりと弧を描く。

「早くドラゴニカに行くんでしょ? 派手に吹っ飛ばすのは任せなさい」
「プリエールさん……!」

 攻撃魔法は詠唱が必要な代わりに範囲が広く威力も高い。モーアンは一種類だけだが、彼女は今まで出会った各精霊の属性の初級術を使いこなし、相手の弱点に合わせられるそうだ。
 発動してしまえば相手との距離も関係ないその攻撃方法と火力の高さは、これまで以上にエイミたちの旅の助けになるだろう。

「どんどん頼りにしちゃっていいわよ。けど、代わりにしっかり守ってね」
「ホントに……頼もしいや」

 ちょっとやりすぎなくらいにね。
 一瞬にして黒焦げになり消え去った魔物を思い返し、モーアンは苦笑いをした。
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