30:神殿の地下洞窟
グリングランの西にある海岸では、満月の夜に不思議な光が見られるという。
海に浮かぶ小さな島。守り神である聖獣を祀る神殿があるその島に、月の光がヴェールのようにふわりと降りるのだ。
夕方、ブリーゼが用意した小舟に乗って島へと向かったエイミたちは、神殿の前でその時を待った。
『もうじき夜の帷が降りる頃。我が司る安寧の時……』
『相変わらず回りくどい言い回しなんだぜ。もうすぐ夜だーでいいじゃねえか』
『……さすが火の精霊。情緒を理解する頭まで己の炎で燃えてしまっている』
『なにおう!?』
闇と火の精霊たちの仲が良いのか悪いのかわからないようなやりとりを遠目に、プリエールがくすりと笑う。
「ふふ、賑やかねぇ」
「レレニティア様が人間だった頃の旅はこんな感じだったのでしょうか?」
『そうじゃのう。まるで千年前を思い出すようじゃ』
エイミに問われ、ディアマントは静かに目を閉じる。
『脅威に立ち向かい、精霊と聖獣の力を借りて世界中を巡る……レニの旅路をなぞるかのように、運命はこうも繰り返すのか』
「アマ爺……?」
『ぼちぼち時間じゃの。ほれ、そこの床を見ておれ』
光精霊が指し示したのは、神殿入口手前の石畳。何やら紋様が刻まれた、一際大きな四角い石がそこにあった。
神殿自体は小さなもので、事前にサニーがシグルスを引っ張って探検していたのだが、変わったものは特に何も見当たらなかったという。
言われるままじっと見守っていると、月の光がすうっと石に集められた。
「えっ……!?」
プリエールが咄嗟に見上げると、神殿を覆う結界が月の光を受け、増幅・集束させたものを石へと注いでいるのがわかる。
「ここの結界は少し特殊みたいね。満月の夜に集めた月の魔力を第一の鍵に、そして第二の鍵は……」
「ドラゴニカの血、という訳ですね」
エイミが頷き、淡金色のぼんやりした光を発する石へと歩み寄ると膝をつき、石に触れる。
石板が僅かに強く輝いて、音を立ててスライドする。その下から現れたのは、地下への階段だ。
「これは……」
「地上の神殿はフェイク……というよりも、一般人向けって感じか?」
「地下になんか大切なものが隠されてる気配だね! こういうのわくわくするなぁ」
エイミの後ろからシグルスとサニーが興味津々といった感じで顔を出す。
「じゃ、中に入ろうか。開くタイミングが限定的ならあまり時間がないだろうからね」
「そうね。勝手に閉じられたら困るわ」
「こ、怖ぇこと言うなよ……」
地上からは真っ暗で先が見えない階段を、魔法道具のランタン――幽霊船の時に借りたものだが、乗客を救ったささやかな礼としてそのまま譲り受けたのである――で照らしながら慎重に降りていく。
聖獣を祀る神殿に隠された地下洞窟に、六人ぶんの足音が響き、吸い込まれていった。
海に浮かぶ小さな島。守り神である聖獣を祀る神殿があるその島に、月の光がヴェールのようにふわりと降りるのだ。
夕方、ブリーゼが用意した小舟に乗って島へと向かったエイミたちは、神殿の前でその時を待った。
『もうじき夜の帷が降りる頃。我が司る安寧の時……』
『相変わらず回りくどい言い回しなんだぜ。もうすぐ夜だーでいいじゃねえか』
『……さすが火の精霊。情緒を理解する頭まで己の炎で燃えてしまっている』
『なにおう!?』
闇と火の精霊たちの仲が良いのか悪いのかわからないようなやりとりを遠目に、プリエールがくすりと笑う。
「ふふ、賑やかねぇ」
「レレニティア様が人間だった頃の旅はこんな感じだったのでしょうか?」
『そうじゃのう。まるで千年前を思い出すようじゃ』
エイミに問われ、ディアマントは静かに目を閉じる。
『脅威に立ち向かい、精霊と聖獣の力を借りて世界中を巡る……レニの旅路をなぞるかのように、運命はこうも繰り返すのか』
「アマ爺……?」
『ぼちぼち時間じゃの。ほれ、そこの床を見ておれ』
光精霊が指し示したのは、神殿入口手前の石畳。何やら紋様が刻まれた、一際大きな四角い石がそこにあった。
神殿自体は小さなもので、事前にサニーがシグルスを引っ張って探検していたのだが、変わったものは特に何も見当たらなかったという。
言われるままじっと見守っていると、月の光がすうっと石に集められた。
「えっ……!?」
プリエールが咄嗟に見上げると、神殿を覆う結界が月の光を受け、増幅・集束させたものを石へと注いでいるのがわかる。
「ここの結界は少し特殊みたいね。満月の夜に集めた月の魔力を第一の鍵に、そして第二の鍵は……」
「ドラゴニカの血、という訳ですね」
エイミが頷き、淡金色のぼんやりした光を発する石へと歩み寄ると膝をつき、石に触れる。
石板が僅かに強く輝いて、音を立ててスライドする。その下から現れたのは、地下への階段だ。
「これは……」
「地上の神殿はフェイク……というよりも、一般人向けって感じか?」
「地下になんか大切なものが隠されてる気配だね! こういうのわくわくするなぁ」
エイミの後ろからシグルスとサニーが興味津々といった感じで顔を出す。
「じゃ、中に入ろうか。開くタイミングが限定的ならあまり時間がないだろうからね」
「そうね。勝手に閉じられたら困るわ」
「こ、怖ぇこと言うなよ……」
地上からは真っ暗で先が見えない階段を、魔法道具のランタン――幽霊船の時に借りたものだが、乗客を救ったささやかな礼としてそのまま譲り受けたのである――で照らしながら慎重に降りていく。
聖獣を祀る神殿に隠された地下洞窟に、六人ぶんの足音が響き、吸い込まれていった。
