29:満月の日まで
「シルヴァンさん……姉様やジャーマさんを元に戻す方法はあるのでしょうか?」
「!」
一大決心ののちにエイミが発した言葉に反応したのは、フォンドだった。
彼らの変貌が魔族にかけられた術のせいで、しかも命を握られているのだとしたら、術の解除方法をなんとしても知りたい。
同じ魔族であるシルヴァンなら、或いは……縋るような二対の瞳が、彼をじっと見つめる。
「……すまないが、私自身は力になれない。術者本人が解除するか、術者もしくは術をかけられた者が死ぬ時でないと……」
「そんな……!」
躊躇いがちに下された残酷な宣言に、びく、とエイミの肩が跳ねる。
これまで聞いた話からガルディオが術を解いてくれるなんてことはまずありえないだろう。ふたりを避けてガルディオを先に倒すのも難しい。最後はもはや論外で、術が解けたところで手遅れになってしまう。
「どうすればいいんだよ……」
その場に漂う重く絶望的な空気。日頃は太陽のようなサニーでさえも、今は表情に陰りが見える。
ややあって「だが」とシルヴァンが再び話し始めた。
「だからこそ、君たちに話をした。君たちなら、別の可能性を探せるかもしれないと思ってだ」
「別の可能性……」
「たとえば、人間界にしかないもの……精霊の力を借りるとか」
ここまでエイミたちが出会った精霊は、光、地、闇、火、そして風。
それぞれの属性とその力をひとつずつ思い浮かべても、パメラたちにかけられた術を解くイメージにはなかなか繋がらない。
ああでもないこうでもないと言い合う光景をしばらく黙って眺めていたプリエールが「ねえ」と声を発した。
「まだ契約していない精霊がいるわよね。あと三体だったかしら?」
「三体?」
「今いるのが五体で、残っているのがこれから会う水の精霊アクリアに、月の精霊クレーシェ、木の精霊ベルシュ……全員と契約したらできることが増えるでしょ。女神様の力も戻るし、何らかの可能性が生まれるかもしれないわ」
魔法学者を名乗る彼女は、足を組み頬杖をついた姿勢ですらすらと精霊の名前を挙げてみせる。
「なんかすごそうだね……他はなんとなく想像つくけど、月の精霊ってどんなコトができるんだろ?」
『そっ、それだぁーーーっ!』
会議室どころか詰所の壁を突き破って外まで聴こえそうな――実際は存在を認識している相手にしか届かないが――火精霊の声に、一度は驚き目を丸くした。
『な、なによいきなり!? 暑苦しい精霊さんね!』
『ただ一言喋っただけじゃねえか!? ったく……いいから聞け!』
ミューの容赦ない返しにもめげず、火精霊は咳払いをしてみせる。
『月と木の精霊ってのはちょっと特殊なんだよ』
『クレーシェは“時”を、ベルシュは“生命力”を司る精霊でもある。我々とは異なる力を持つゆえ、新たな解決策に導けるかもしれん……そう言いたかったのだろう?』
『ぐぬっ……陰気ヤローめ、オイシイとこだけ持っていきやがって』
ルベインの言葉を引き継いだコクヨウは、言うだけ言ってしれっとすまし顔を……実際には目鼻や口はないためあくまでイメージだが、エイミたちにはそんな表情が見えた気がした。
「!」
一大決心ののちにエイミが発した言葉に反応したのは、フォンドだった。
彼らの変貌が魔族にかけられた術のせいで、しかも命を握られているのだとしたら、術の解除方法をなんとしても知りたい。
同じ魔族であるシルヴァンなら、或いは……縋るような二対の瞳が、彼をじっと見つめる。
「……すまないが、私自身は力になれない。術者本人が解除するか、術者もしくは術をかけられた者が死ぬ時でないと……」
「そんな……!」
躊躇いがちに下された残酷な宣言に、びく、とエイミの肩が跳ねる。
これまで聞いた話からガルディオが術を解いてくれるなんてことはまずありえないだろう。ふたりを避けてガルディオを先に倒すのも難しい。最後はもはや論外で、術が解けたところで手遅れになってしまう。
「どうすればいいんだよ……」
その場に漂う重く絶望的な空気。日頃は太陽のようなサニーでさえも、今は表情に陰りが見える。
ややあって「だが」とシルヴァンが再び話し始めた。
「だからこそ、君たちに話をした。君たちなら、別の可能性を探せるかもしれないと思ってだ」
「別の可能性……」
「たとえば、人間界にしかないもの……精霊の力を借りるとか」
ここまでエイミたちが出会った精霊は、光、地、闇、火、そして風。
それぞれの属性とその力をひとつずつ思い浮かべても、パメラたちにかけられた術を解くイメージにはなかなか繋がらない。
ああでもないこうでもないと言い合う光景をしばらく黙って眺めていたプリエールが「ねえ」と声を発した。
「まだ契約していない精霊がいるわよね。あと三体だったかしら?」
「三体?」
「今いるのが五体で、残っているのがこれから会う水の精霊アクリアに、月の精霊クレーシェ、木の精霊ベルシュ……全員と契約したらできることが増えるでしょ。女神様の力も戻るし、何らかの可能性が生まれるかもしれないわ」
魔法学者を名乗る彼女は、足を組み頬杖をついた姿勢ですらすらと精霊の名前を挙げてみせる。
「なんかすごそうだね……他はなんとなく想像つくけど、月の精霊ってどんなコトができるんだろ?」
『そっ、それだぁーーーっ!』
会議室どころか詰所の壁を突き破って外まで聴こえそうな――実際は存在を認識している相手にしか届かないが――火精霊の声に、一度は驚き目を丸くした。
『な、なによいきなり!? 暑苦しい精霊さんね!』
『ただ一言喋っただけじゃねえか!? ったく……いいから聞け!』
ミューの容赦ない返しにもめげず、火精霊は咳払いをしてみせる。
『月と木の精霊ってのはちょっと特殊なんだよ』
『クレーシェは“時”を、ベルシュは“生命力”を司る精霊でもある。我々とは異なる力を持つゆえ、新たな解決策に導けるかもしれん……そう言いたかったのだろう?』
『ぐぬっ……陰気ヤローめ、オイシイとこだけ持っていきやがって』
ルベインの言葉を引き継いだコクヨウは、言うだけ言ってしれっとすまし顔を……実際には目鼻や口はないためあくまでイメージだが、エイミたちにはそんな表情が見えた気がした。
