25:緑の国へ
砂漠の暑さから遠く離れた北大陸は、山で分断された北には極寒の雪原が広がっている。
エイミたちがまずやって来たのは、南にあるグリングラン側の港だ。
緑の国、などと呼ばれるグリングラン側ではその通り草花や森が目立つ豊かな大地が見られる。
「うーん、涼しい。過ごしやすいねぇ」
「あの砂漠の後ならどこでもそう思いそうだけど……ここはホントにそうだね」
ねー、と言い合うモーアンとサニー。ほんわかした雰囲気は、街道からあちこちに見える畑や牧場のおかげかもしれない。
『ドラゴニカは涼しいどころじゃないケドね……』
「ふふ、そうね。そういう意味だとすぐにドラゴニカに向かわないのは正解かもしれないわ」
灼熱の砂漠からあの雪の中にいきなり放り出されれば、体がびっくりするどころではないだろう。
もっとも、ドラゴニカに行けないのは城が魔族に奪われてしまったという情報が広まったからなのだが……
『……大丈夫、まだ猶予はあるわ』
「わかるのか?」
フォンドの問いに『ええ』とミューが頷いた。
彼女の視線は上へ。そして、グリングランやドラゴニカがある北方へと向けられた。
『空を見ればね。ガルディオが竜を支配下に置いたら、真っ先に隣国のグリングランを襲わせるでしょうから』
空はまだ戦火に染まっていないし、竜が飛ぶ姿も見られない。
竜が魔族に抵抗しているんじゃないか、というのが同じ竜であるミューの見解だ。
「じゃあ早く精霊を見つけて、強くならないとな!」
「その精霊はどこにいるんだ?」
シグルスがそう尋ねると、フォンドは腕組みをして考え込む。
「グリングランの近くとは聞いてるけど……」
「とりあえずグリングランに行ってみようよ。ブリーゼさんもいるだろうし、情報も準備も必要なんだから」
砂漠からあまりちゃんと休めていないし、精霊の住処に向かうなら道具の補充や武具の新調もしっかりしておきたい。
一同はモーアンの提案に頷き、グリングランへと歩きだす。
(それにしても、風の精霊が住まう地って感じだなぁ……緑の匂いを運ぶ風がなんだか心地いいや)
砂漠では倒れずに歩くのが精一杯だったモーアンにも、今は風を感じる余裕がある。
この先待ち受けるものは決して平坦な道ではないことを知りながら、今だけは……
「町のみんな、元気かなぁ……」
こんなすぐに戻って来るとは思わなかったぜ、とフォンドがこぼす。
彼の本来の目的である魔界への道も、姿を消した家族同然の者たちも、いまだその痕跡を掴めていない。
語尾がどことなく萎み、俯きかけたその時、
「フォンドを育てた町の人たちにわたしも早く会いたいです」
「そうだな。どうやったらこんなヤツが育つのか俺も見てみたい」
「んなっ!?」
エイミとシグルスの言葉でフォンドは下を向くことなく思いっきり振り向き、反射的に握りこぶしを作る。
「わ、わたしはそういう意味で言ったんじゃありませんよっ」
「へえ、どういう意味かわかるんだな?」
「シグルスさんっ!」
「エイミぃ……」
がっくりと肩を落とすフォンドだったが、それとは裏腹に先程までの沈んだ気持ちは上向きに。
「ったく、ヘコむ暇もくれねぇのな」
大きく息を吐き出すと、彼の足は再びグリングランへと向かう。
沈みそうになれば、手を差し伸べて引き上げてくれる……そんな仲間たちと一緒に。
エイミたちがまずやって来たのは、南にあるグリングラン側の港だ。
緑の国、などと呼ばれるグリングラン側ではその通り草花や森が目立つ豊かな大地が見られる。
「うーん、涼しい。過ごしやすいねぇ」
「あの砂漠の後ならどこでもそう思いそうだけど……ここはホントにそうだね」
ねー、と言い合うモーアンとサニー。ほんわかした雰囲気は、街道からあちこちに見える畑や牧場のおかげかもしれない。
『ドラゴニカは涼しいどころじゃないケドね……』
「ふふ、そうね。そういう意味だとすぐにドラゴニカに向かわないのは正解かもしれないわ」
灼熱の砂漠からあの雪の中にいきなり放り出されれば、体がびっくりするどころではないだろう。
もっとも、ドラゴニカに行けないのは城が魔族に奪われてしまったという情報が広まったからなのだが……
『……大丈夫、まだ猶予はあるわ』
「わかるのか?」
フォンドの問いに『ええ』とミューが頷いた。
彼女の視線は上へ。そして、グリングランやドラゴニカがある北方へと向けられた。
『空を見ればね。ガルディオが竜を支配下に置いたら、真っ先に隣国のグリングランを襲わせるでしょうから』
空はまだ戦火に染まっていないし、竜が飛ぶ姿も見られない。
竜が魔族に抵抗しているんじゃないか、というのが同じ竜であるミューの見解だ。
「じゃあ早く精霊を見つけて、強くならないとな!」
「その精霊はどこにいるんだ?」
シグルスがそう尋ねると、フォンドは腕組みをして考え込む。
「グリングランの近くとは聞いてるけど……」
「とりあえずグリングランに行ってみようよ。ブリーゼさんもいるだろうし、情報も準備も必要なんだから」
砂漠からあまりちゃんと休めていないし、精霊の住処に向かうなら道具の補充や武具の新調もしっかりしておきたい。
一同はモーアンの提案に頷き、グリングランへと歩きだす。
(それにしても、風の精霊が住まう地って感じだなぁ……緑の匂いを運ぶ風がなんだか心地いいや)
砂漠では倒れずに歩くのが精一杯だったモーアンにも、今は風を感じる余裕がある。
この先待ち受けるものは決して平坦な道ではないことを知りながら、今だけは……
「町のみんな、元気かなぁ……」
こんなすぐに戻って来るとは思わなかったぜ、とフォンドがこぼす。
彼の本来の目的である魔界への道も、姿を消した家族同然の者たちも、いまだその痕跡を掴めていない。
語尾がどことなく萎み、俯きかけたその時、
「フォンドを育てた町の人たちにわたしも早く会いたいです」
「そうだな。どうやったらこんなヤツが育つのか俺も見てみたい」
「んなっ!?」
エイミとシグルスの言葉でフォンドは下を向くことなく思いっきり振り向き、反射的に握りこぶしを作る。
「わ、わたしはそういう意味で言ったんじゃありませんよっ」
「へえ、どういう意味かわかるんだな?」
「シグルスさんっ!」
「エイミぃ……」
がっくりと肩を落とすフォンドだったが、それとは裏腹に先程までの沈んだ気持ちは上向きに。
「ったく、ヘコむ暇もくれねぇのな」
大きく息を吐き出すと、彼の足は再びグリングランへと向かう。
沈みそうになれば、手を差し伸べて引き上げてくれる……そんな仲間たちと一緒に。