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階段を上がりきれば上からの光。王の私室の隠し通路は最上階にある小部屋へと繋がっていた。
「こんな場所が……」
部屋の床には巨大な魔法陣が描かれ、その中心に置かれた台座には美しい装飾が施された杖が。
『この強大な魔力、もしや……』
「お察しの通りだ、聖剣よ」
既に魔法陣の中心にいたアークライトはそう言うと杖を手に取り、振り向く。
シュウ、と音がして白煙が彼の全身を包んだ。
「アークっ!?」
「心配すんな、ユーノちゃん!」
煙が晴れた時、長身の王はそこにはいなかった。
そして気のせいでなければ、今ユーノに呼びかけた声は、彼のものにしては随分と高いようだが……
「魔法美少年アークくん、爆誕! ってね」
ユーノや王妃よりも小さな背丈、アークライトと色は同じだがふわふわのやわらかな髪。マントには大きなフードがつき、袖やズボンは短くなり、やんちゃに晒した肌はぺかぺかと眩しい。
若く瑞々しいほっぺたは弾力があり、実に柔らかそうな……言ってしまえば、アークライトを十二、三歳くらいに縮めたような少年が杖を手に可愛くポーズを決めていた。
「キャーあなた! 今日もカワイイわぁ!」
「……理解した。キッツいな三十七歳」
「お前だって似たようなもんだろ!」
と、ふざけるのはここまでにしてアークライトは小さな体でバルコニーへと駆け出す。
外に出れば城下町を見下ろす形になり、魔物に襲われている箇所がよく見えた。
『おいお前、その杖……』
「フリーハーツに代々伝わる国宝、賢者の杖だ。使い手に強大な魔力をもたらし、あらゆる魔法を操る魔力のコントロールが可能になる」
少年が杖を横薙ぎに払うと、宙に無数の火の玉が発生する。
「……北方に四、中央に七体、西に三体……捉えた!」
目を閉じ、意識を集中させ呟くと、火の玉は僅かに跳ねた。
「炎よ、降り注ぎ我が敵を穿て!」
すると炎は彼の言葉通り、街を襲う魔物だけをめがけて一直線に落ちて次々と倒していく。
「……よし。これで被害は最小限に抑えられるな。あとは騎士団に任せよう」
「今までそうやってフリーハーツを守ってきたのか……」
「そういうこった。ま、ここのことは結界で隠してるから誰も知らないけどな」
アークライトはくるりと振り返ると、杖を掲げて笑った。
結界、というのは足元の魔法陣のことだろう。
『……それで、そろそろそこの悪趣味な杖のことを紹介して貰おうか』
『悪趣味とは随分ですわね。そっくりそのままお返ししますわ』
賢者の杖からしたのは、深みのある女性の声だった。
『わたくしは賢者の杖こと聖杖 ショータコーヌ。かわゆい男の子を……いえ、中身成人男性のショタ化をこよなく愛する者ですわ』
『なんだそのひねた性癖は。普通の少年ではダメなのか?』
『まぁっ。成熟した思考の大人が変身のギャップに戸惑い、元とは似つかない可愛らしい姿に恥じらうのがたまらないんじゃありませんの!』
「出会ったばかりで言うのも何だが、お前ら似たもの同士だよ……」
聖杖の言い分、少年の箇所を女性に差し替えればそのまま聖剣の主張と重なるのだが……
伝説の武具はこんな奴ばかりなのか、とユーノが溜息を吐く。
「おもしれーだろ」
「これを面白いで済ますお前はすごいよ、アーク」
「そりゃ、王様だからな。国を守るためならショタ化だってやってやるよ」
すっかり慣れっこなのだろうアークライトは、からからと笑った。
「こんな場所が……」
部屋の床には巨大な魔法陣が描かれ、その中心に置かれた台座には美しい装飾が施された杖が。
『この強大な魔力、もしや……』
「お察しの通りだ、聖剣よ」
既に魔法陣の中心にいたアークライトはそう言うと杖を手に取り、振り向く。
シュウ、と音がして白煙が彼の全身を包んだ。
「アークっ!?」
「心配すんな、ユーノちゃん!」
煙が晴れた時、長身の王はそこにはいなかった。
そして気のせいでなければ、今ユーノに呼びかけた声は、彼のものにしては随分と高いようだが……
「魔法美少年アークくん、爆誕! ってね」
ユーノや王妃よりも小さな背丈、アークライトと色は同じだがふわふわのやわらかな髪。マントには大きなフードがつき、袖やズボンは短くなり、やんちゃに晒した肌はぺかぺかと眩しい。
若く瑞々しいほっぺたは弾力があり、実に柔らかそうな……言ってしまえば、アークライトを十二、三歳くらいに縮めたような少年が杖を手に可愛くポーズを決めていた。
「キャーあなた! 今日もカワイイわぁ!」
「……理解した。キッツいな三十七歳」
「お前だって似たようなもんだろ!」
と、ふざけるのはここまでにしてアークライトは小さな体でバルコニーへと駆け出す。
外に出れば城下町を見下ろす形になり、魔物に襲われている箇所がよく見えた。
『おいお前、その杖……』
「フリーハーツに代々伝わる国宝、賢者の杖だ。使い手に強大な魔力をもたらし、あらゆる魔法を操る魔力のコントロールが可能になる」
少年が杖を横薙ぎに払うと、宙に無数の火の玉が発生する。
「……北方に四、中央に七体、西に三体……捉えた!」
目を閉じ、意識を集中させ呟くと、火の玉は僅かに跳ねた。
「炎よ、降り注ぎ我が敵を穿て!」
すると炎は彼の言葉通り、街を襲う魔物だけをめがけて一直線に落ちて次々と倒していく。
「……よし。これで被害は最小限に抑えられるな。あとは騎士団に任せよう」
「今までそうやってフリーハーツを守ってきたのか……」
「そういうこった。ま、ここのことは結界で隠してるから誰も知らないけどな」
アークライトはくるりと振り返ると、杖を掲げて笑った。
結界、というのは足元の魔法陣のことだろう。
『……それで、そろそろそこの悪趣味な杖のことを紹介して貰おうか』
『悪趣味とは随分ですわね。そっくりそのままお返ししますわ』
賢者の杖からしたのは、深みのある女性の声だった。
『わたくしは賢者の杖こと
『なんだそのひねた性癖は。普通の少年ではダメなのか?』
『まぁっ。成熟した思考の大人が変身のギャップに戸惑い、元とは似つかない可愛らしい姿に恥じらうのがたまらないんじゃありませんの!』
「出会ったばかりで言うのも何だが、お前ら似たもの同士だよ……」
聖杖の言い分、少年の箇所を女性に差し替えればそのまま聖剣の主張と重なるのだが……
伝説の武具はこんな奴ばかりなのか、とユーノが溜息を吐く。
「おもしれーだろ」
「これを面白いで済ますお前はすごいよ、アーク」
「そりゃ、王様だからな。国を守るためならショタ化だってやってやるよ」
すっかり慣れっこなのだろうアークライトは、からからと笑った。