3
「使い手をパワーアップさせる代わりに女体化する剣ねえ……」
ひとまず遺跡と聖剣の話を聞き終えた段階で、アークライトはテーブルに頬杖をついてユーゴをじっと見つめる。
そんな剣の使い手に選ばれた友人がどうなってしまうのだろうかという好奇心に上から下まで視線を注がれ、居心地悪そうに目をそらすユーゴ。
「……まさかアーク、今ここで……」
「王の命令だ。やはり“勇者”の姿をひと目見知っておく必要があるだろう?」
アークライトはにっこりと、だがどこか圧を感じる笑みでユーゴに迫る。
「まあ半分は好奇心だが、変身した姿を知っておいた方がいいのは事実だよ。聖剣の力も見ておきたいし」
「わかってはいるがその半分が嫌なんだ!」
「まーまー、俺も後で“見せる”からさ」
「見せる……?」
きょとんと不思議そうな顔をしたユーゴの手を取ると、アークライトは身を乗り出してその手を聖剣に触れさせる。
「あっ……!」
ユーゴが何か言う間もなく、辺りは強い光に包まれ……
次の瞬間には、ユーゴと同じ髪と目の色をした美女がそこに座っていた。
「これが“勇者”……ユーノちゃんかあ」
「うぅ、強引な奴……」
目をキラキラと輝かせるアークライトとは対象的に、ユーノは恥ずかしさと不機嫌さが入り交じる顔で眉間にシワを寄せ、唇を尖らせる。
『うーむ、やはりポイント高いリアクションをするな』
「やかましい! あとアークもちゃんづけやめろ!」
ユーノが怒ってみせても可愛い猫が威嚇してるみたいに見えるのか、アークライトはにこにこと堪えていない様子で、
「いやぁ、お前に妹がいたらこんな感じだったのかなぁ」
「ふざけるな!」
「悪い悪い……で、こんな華奢なのにホントに強くなってるのか? 勇者なんて言うけど、見た目は逆に守ってやりたくなるような……」
言いながら、アークライトはユーノの細い手首を掴み、整った顔を近づける。
傍から見れば美男美女が見つめ合う、ロマンチックな光景だが……
「えっ、お、おい、アーク……?」
ユーノからしてみればよく見知った同性の友人にいきなり迫られ、思わず戸惑う。
そんな時のことだった。
「アークっ! あなた、大変よ! 街が魔物に……!」
「なっ!?」
勢い良く扉を開け、飛び込むように入ってきたのはドレス姿で上品な雰囲気の女性。
人払いをしているはずの王の私室に来た彼女は、アークライトの妻であり王妃でもある。
「あ……」
そんな彼女が国の危機に見たものは……
愛する夫が人払いまでして自室に招いたうら若き美女に迫る、決定的瞬間だった。
『今、国の危機がもうひとつ増えたな』
「言ってる場合か! リベルタ王妃、話は後で!」
「あっおい、お前ここから外に行って間に合うと思ってんのか!?」
すぐさま飛び出そうとしたユーノを引き留めると、アークライトは壁の全身鏡の枠に手をかけた。
鏡はドアのように開き、奥には上への階段が続いている。
「これは、隠し扉……?」
「さっき“見せる”って言ったろ? ついて来いよ。俺がこの国を守るとこ、見せてやる」
そう言うとアークライトは振り向き、ユーノの後ろにいる王妃にウインクをした。
「アーク……?」
「あなた……」
王妃からは強張りが消え、意を決したように踏み出す。
「急ぎましょう。せっかくのいいところ、見逃しちゃうわよ」
「王妃?」
「ほら、早く!」
「は、はいっ!」
二人はとっくに先に行ったアークライトを追いかけて、薄暗い隠し通路の階段を駆け上がっていった。
ひとまず遺跡と聖剣の話を聞き終えた段階で、アークライトはテーブルに頬杖をついてユーゴをじっと見つめる。
そんな剣の使い手に選ばれた友人がどうなってしまうのだろうかという好奇心に上から下まで視線を注がれ、居心地悪そうに目をそらすユーゴ。
「……まさかアーク、今ここで……」
「王の命令だ。やはり“勇者”の姿をひと目見知っておく必要があるだろう?」
アークライトはにっこりと、だがどこか圧を感じる笑みでユーゴに迫る。
「まあ半分は好奇心だが、変身した姿を知っておいた方がいいのは事実だよ。聖剣の力も見ておきたいし」
「わかってはいるがその半分が嫌なんだ!」
「まーまー、俺も後で“見せる”からさ」
「見せる……?」
きょとんと不思議そうな顔をしたユーゴの手を取ると、アークライトは身を乗り出してその手を聖剣に触れさせる。
「あっ……!」
ユーゴが何か言う間もなく、辺りは強い光に包まれ……
次の瞬間には、ユーゴと同じ髪と目の色をした美女がそこに座っていた。
「これが“勇者”……ユーノちゃんかあ」
「うぅ、強引な奴……」
目をキラキラと輝かせるアークライトとは対象的に、ユーノは恥ずかしさと不機嫌さが入り交じる顔で眉間にシワを寄せ、唇を尖らせる。
『うーむ、やはりポイント高いリアクションをするな』
「やかましい! あとアークもちゃんづけやめろ!」
ユーノが怒ってみせても可愛い猫が威嚇してるみたいに見えるのか、アークライトはにこにこと堪えていない様子で、
「いやぁ、お前に妹がいたらこんな感じだったのかなぁ」
「ふざけるな!」
「悪い悪い……で、こんな華奢なのにホントに強くなってるのか? 勇者なんて言うけど、見た目は逆に守ってやりたくなるような……」
言いながら、アークライトはユーノの細い手首を掴み、整った顔を近づける。
傍から見れば美男美女が見つめ合う、ロマンチックな光景だが……
「えっ、お、おい、アーク……?」
ユーノからしてみればよく見知った同性の友人にいきなり迫られ、思わず戸惑う。
そんな時のことだった。
「アークっ! あなた、大変よ! 街が魔物に……!」
「なっ!?」
勢い良く扉を開け、飛び込むように入ってきたのはドレス姿で上品な雰囲気の女性。
人払いをしているはずの王の私室に来た彼女は、アークライトの妻であり王妃でもある。
「あ……」
そんな彼女が国の危機に見たものは……
愛する夫が人払いまでして自室に招いたうら若き美女に迫る、決定的瞬間だった。
『今、国の危機がもうひとつ増えたな』
「言ってる場合か! リベルタ王妃、話は後で!」
「あっおい、お前ここから外に行って間に合うと思ってんのか!?」
すぐさま飛び出そうとしたユーノを引き留めると、アークライトは壁の全身鏡の枠に手をかけた。
鏡はドアのように開き、奥には上への階段が続いている。
「これは、隠し扉……?」
「さっき“見せる”って言ったろ? ついて来いよ。俺がこの国を守るとこ、見せてやる」
そう言うとアークライトは振り向き、ユーノの後ろにいる王妃にウインクをした。
「アーク……?」
「あなた……」
王妃からは強張りが消え、意を決したように踏み出す。
「急ぎましょう。せっかくのいいところ、見逃しちゃうわよ」
「王妃?」
「ほら、早く!」
「は、はいっ!」
二人はとっくに先に行ったアークライトを追いかけて、薄暗い隠し通路の階段を駆け上がっていった。