勇者S物語4

~勇者の資質~


 世界に危機が訪れれば、伝説の勇者が現れる。

 勇者の手により幾度となく危機は退けられ、現在の平和が守られているのだ。


……と、いうのが一般的に伝わっている話。

戦士「起きろよ勇者、メシ出来たぞ」

 実際に世界を救っているのはこの、お玉片手にピンクのエプロン姿もすっかり板についてしまっているお母さ……
 もとい、勇者の仲間である一人の戦士。

 勇者に実力がない訳ではない。

 勇者が己の手を汚さない主義なのだ。

勇者「へんじがない。ただのしかばねのよ」

戦士「それはもういいっつの! 早く起きないと冷めちまうぞ」

勇者「……起きる」

 そんな勇者に虐げられながらも放っておけず世話を焼いてしまうのは彼が与える苦痛がもはや戦士にとって快感となってしまっているからで……

戦士「ドM設定しつこい!」

勇者「ドMキャラももう間に合っているしな」

大魔王「勇者様が余の事を呼んだ予感っ」

魔王「もはや取り返しがつかぬな、こやつは……」

 過去に世界を危機に陥れようとした魔王達とも戦いの果てに和解(?)し、現在は至って穏やかな日々が続いていた。

……しかし、勇者に安息の時はない。

???「見つけたぞニセ勇者め!」

勇者「む?」

大魔王「勇者様を偽者呼ばわりなど……何者だ!!」

???「ふふふ……聞かれて名乗るもおこがましいが……僕は君と同じく伝説の勇者の血を引く者だ!」

勇者「へー」

???「って紙より薄い反応!?」

勇者「別に驚かんだろ。伝説の勇者とやらがいたのも相当な昔だし、子孫なんて今じゃ一人二人じゃない。勇者の血を引いてるなんて言おうと思えば別に難しくもないだろう?」

戦士「そ、そりゃそうかもしれねぇけど……なんというか……」

魔王「ロマンに欠ける、な……」

勇者「仮にも魔王がロマンとかぬかすな。で、その勇者の子孫が…………めんどくさいな。勇者(仮)が何しに来た?」

戦士「(仮)とかお前……」

???「もう少しなんとかしてくれよ!!」

勇者「んじゃ勇者の子孫で勇子。もしくは勇者Bか?」

魔王「一気に有り難みがなくなったぞ」

???「……いちいち(仮)とかなるぐらいならBでいいか……」

戦士「時には妥協も大事だな」
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