勇者S物語2

~決戦~

大魔王「よく来たな、勇者共……魔王も一緒か」

魔王「大魔王! 貴様の悪行もここまでだ!!」

勇者「ちょっと前は自分が同じ立場だったくせに」

戦士「思っても心の中にしまっておいてあげて!!」

大魔王「……勇者、貴様にこの私が倒せるかな?」

勇者「俺は倒さん。やるのはコイツらだ」

魔王「言い切った!!」

戦士「……もう諦めてたけどな。でもせめて、勇者らしく啖呵をきるくらいしたらどうだ?」

大魔王「いつもこうなの?」

魔王「こういう子なのだ」

勇者「………大魔王、お前のせいで面倒な旅に出るハメになった。ムカつくから苦しんだ末に死にさらせ」

大魔王「何その清々しいまでの俺様理論!?」

戦士「もう少しオブラートに包もうぜ? 『世界の平和のため、お前を倒す!』とかさ……」

勇者「ふわっと包んだところで殺る事は一緒だろう」

魔王「仮にも勇者のセリフが……」

勇者「つべこべ言わずにさっさと行け。最後まで見届けてやるからな、お前達の戦いを」

大魔王「あ、ホントに戦わないつもりなのこの人」



――そして。
 激戦の果て、ついに大魔王は倒された。

 例によって、今回も世界を救ったのは『勇者』である。


 しかし、その影で活躍した功労者達の存在はあまり知られていない。


魔王「……報われないものだな」

戦士「今に始まった事じゃねぇよ」

魔王「飲むか……おい、酒」

大魔王「ハイっ、只今!」


 倒された大魔王が後に酒場のバイトになった事も、その酒場で毎晩のように行われる戦士と魔王の飲み会という名の愚痴大会も。

 全ては、語られざる物語なのであった――
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