勇者S物語

伝説の勇者S

~酒場にて~

 俺は戦士。
この街の酒場で、ついに現れたという伝説の勇者を待っている。

 力強さもさる事ながら、頑丈さには自信がある。
 高い防御力で味方を庇い、刻まれた数多の傷は男の勲章。
 軟弱な奴には真似出来ねぇぜ!


店主「おお、勇者殿!」

勇者「仲間を探しに来た……いいのはいるか?」

 来たっ!

店主「ふむ……あそこの魔法使いなんてどうじゃ? 攻撃からサポートまで、あらゆる魔法を使いこなすぞい」

勇者「ふむ……」

店主「それからあっちは武道家。己の肉体を武器に身軽な動きから繰り出す一撃が頼りになるじゃろう」

勇者「う~ん……」

 早く、早く俺を紹介してくれ。

店主「……最後はそこの戦士。防御力が高く、敵の攻撃から仲間を庇う事が出来る」

 よしっ!

店主「それが生き甲斐で、強い攻撃を受けると悦びにうち震え、餌を待つ家畜のような目で「……もっと!」と……」

戦士「ちょっと待て! なんだその説明!?」

店主「何か問題でもあったかの?」

戦士「大アリだ! ひとを変態みたく言いやがって……ってか、明らかに他の連中と説明違うだろ!!」

勇者「…よし。戦士、お前にしよう」

戦士「今の説明でいいの!?」

―がしっ―

勇者「……良い玩具が手に入ったな……クククッ……」

戦士「ちょっ、今何て!?」

勇者「文句は言わせん。行くぞ、戦士」

―ずるずるずる―

戦士「い、嫌だァァァァ!!」


……これが、俺と勇者Sの出会いだった。
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