ハーレム粉砕☆勇者様っ!
勇者パーティーに加わって名声を得たいらしい下心丸出しの青年、ウォルドが新しく仲間になって俺達は改めて王様がいるというお城を目指すことにした。
正直女の子と何話したらいいかわからないし、うっかり“ハーレム”発動したら大変だし、同じ男のウォルドが一緒に来てくれて助かると思う。
「異世界の服って変わってやすね、シャラクの旦那ァ」
「うん? まあ、そっちから見たら浮いてるよな。これが俺の世界での戦闘服なんだよ……ある意味な」
「見慣れなくて不思議な感じですけど、シュッとしてスタイリッシュで素敵だと思います」
スタイリッシュ、ねぇ……考えたこともなかった。
自分には縁遠い言葉だと思っていたから、そう言われるとちょっと照れくさいような、くすぐったいような。
「首に巻いた布は何かしら? 引っ張るの? なんだか興奮する飾りね」
「絞まるわ! 殺す気か!」
ネクタイをうっとり見つめながらサラッと物騒な発想をするルルリエ、やっぱりコイツが一番怖い。
……と、そんな呑気な会話をしていた時、先頭を歩いていたレーシィがふいに立ち止まる。
「シャラク、気をつけろ。魔物がいるぞ」
「へ、魔物?」
その視線の先、道を塞ぐように立つ四足の獣がいた。
大きさは俺の膝より下くらい、ふさふさもふもふとした毛に覆われて、つぶらな瞳でじっとこちらを見つめている。
赤々とした口を開け、綺麗に生え揃った牙を光らせる小さな獣。
いや、待て、これはどう見ても。
「異世界にポメっ……」
「シャラクさん、お気をつけください! 凶暴な魔獣、ヘルポメベロスですっ!」
「ヘルポメ……なに……?」
凶暴な魔獣って……強いて言うなら申し訳程度に悪魔っぽい翼生えてるけど、どっからどう見ても超絶きゃわわなポメラニアンじゃねーか!
「えっこれやばいのか?」
「体こそ小さいが好戦的で狙った獲物は逃さぬ魔界の狩人だ。勇者とはいえニンゲンのシャラクなど油断すれば容易く喉笛を掻っ切られるぞ」
魔族のレーシィがヘルポメベロスについて解説してくれたが、とてもそうとは思えない愛くるしさだ。
しかし……
バキィッ、と音を立て、近くの木がへし折れて倒れる。
ヘルポメベロスはその小さな体で弾丸のように突進して、力を見せつけてきた。
「……やばいな」
「やばいっしょ?」
無惨な姿で横たわる木、ようやく恐ろしさを理解した俺。
だがヘルポメベロスは無情にも真っ先に俺に狙いをつけ、再び突進の構えをみせる。
「シャラクの旦那、危ねぇ!」
「うわ……っ!」
お、思ったより速いっ!
反応が遅れた俺はヘルポメベロスが胸に飛び込んでくる光景に、全身を襲うだろう痛みを覚悟し……
覚悟…………あ、あれ?
「シャラク、さん?」
「え、えーと……」
背中は痛いけど、喉笛を掻き切られてはいない。
ヘルポメベロスは俺を押し倒すと、きゅうんきゅうんと鳴きながら俺の頬を舐めている。
「ちょ、うわ、くすぐったいっ」
「魔界の狩人ヘルポメベロスが、ニンゲンに懐いてるだと……?」
驚いていないで助けてくれ、レーシィ!
予想外の展開に俺もみんなも動けないでいると、ヘルポメベロスはふんふんニオイを嗅ぎながら他の場所も舐めてきて……
「ひゃ!?」
く、首筋はダメだ、弱いんだよっ!
引き剥がそうと睨むも、無邪気に懐いてきてるだけのポメ相手じゃ罪悪感が……いやヘルポメベロスだけど!
「そこまでです!」
「あ……た、助かった……」
ヘルポメベロスを後ろからひょいっと抱え上げ、俺を助けてくれたのはピュアリアだった。
彼女は興奮するヘルポメベロスをそっと降ろすと、すっかり乱れた格好になった俺に手を差し伸べる。
「シャラクはわれのモノだ! あっちへ行け!」
「シャラクさん、大丈夫ですか?」
「あ、ああ……ありがとう二人とも」
唸るヘルポメベロスを威嚇して追い払うレーシィ。
なにげにすごいことしてる気がするけど、何かこう、格上オーラでも出てるんだろうか。
とにかく、二人のお陰で助かったんだけど……
「……そこの二人はなんで胸を押さえてうずくまってんだ?」
「い、いやあ、ヘルポメベロスって意外と可愛いかなー……なんつってですね?」
「可愛いと可愛いが戯れ合う楽園であたしは死んだわ」
なんだそりゃ、意味がわからん。
いや、後者はわかりたくもないが。
「それにしてもこれも“ハーレム”の力なのか? ニンゲンがヘルポメベロスに求愛されるとはな」
「へっ、きゅ、求愛っ!?」
ただ戯れついてるだけとかじゃなくて?
「へぇ、だとしたら“ハーレム”たァ想像以上に恐ろしい特性かもしれやせんね。老若男女問わないどころか魔物にまで効いちまうなんざァ」
「そ、そうだな……ちょっと怖くなってきた……」
これ本当に早く帰らないとマズいのでは?
そんな思いから俺は無意識に歩調を速めたのだが、
「ウォルド、老若男女って言ったわよね……待って、男に効いてる場面あったかしら……?」
そのお陰でルルリエが何やらぶつぶつ言っていたことは、幸い……なのかは知らないが、俺には聴こえなかった。
正直女の子と何話したらいいかわからないし、うっかり“ハーレム”発動したら大変だし、同じ男のウォルドが一緒に来てくれて助かると思う。
「異世界の服って変わってやすね、シャラクの旦那ァ」
「うん? まあ、そっちから見たら浮いてるよな。これが俺の世界での戦闘服なんだよ……ある意味な」
「見慣れなくて不思議な感じですけど、シュッとしてスタイリッシュで素敵だと思います」
スタイリッシュ、ねぇ……考えたこともなかった。
自分には縁遠い言葉だと思っていたから、そう言われるとちょっと照れくさいような、くすぐったいような。
「首に巻いた布は何かしら? 引っ張るの? なんだか興奮する飾りね」
「絞まるわ! 殺す気か!」
ネクタイをうっとり見つめながらサラッと物騒な発想をするルルリエ、やっぱりコイツが一番怖い。
……と、そんな呑気な会話をしていた時、先頭を歩いていたレーシィがふいに立ち止まる。
「シャラク、気をつけろ。魔物がいるぞ」
「へ、魔物?」
その視線の先、道を塞ぐように立つ四足の獣がいた。
大きさは俺の膝より下くらい、ふさふさもふもふとした毛に覆われて、つぶらな瞳でじっとこちらを見つめている。
赤々とした口を開け、綺麗に生え揃った牙を光らせる小さな獣。
いや、待て、これはどう見ても。
「異世界にポメっ……」
「シャラクさん、お気をつけください! 凶暴な魔獣、ヘルポメベロスですっ!」
「ヘルポメ……なに……?」
凶暴な魔獣って……強いて言うなら申し訳程度に悪魔っぽい翼生えてるけど、どっからどう見ても超絶きゃわわなポメラニアンじゃねーか!
「えっこれやばいのか?」
「体こそ小さいが好戦的で狙った獲物は逃さぬ魔界の狩人だ。勇者とはいえニンゲンのシャラクなど油断すれば容易く喉笛を掻っ切られるぞ」
魔族のレーシィがヘルポメベロスについて解説してくれたが、とてもそうとは思えない愛くるしさだ。
しかし……
バキィッ、と音を立て、近くの木がへし折れて倒れる。
ヘルポメベロスはその小さな体で弾丸のように突進して、力を見せつけてきた。
「……やばいな」
「やばいっしょ?」
無惨な姿で横たわる木、ようやく恐ろしさを理解した俺。
だがヘルポメベロスは無情にも真っ先に俺に狙いをつけ、再び突進の構えをみせる。
「シャラクの旦那、危ねぇ!」
「うわ……っ!」
お、思ったより速いっ!
反応が遅れた俺はヘルポメベロスが胸に飛び込んでくる光景に、全身を襲うだろう痛みを覚悟し……
覚悟…………あ、あれ?
「シャラク、さん?」
「え、えーと……」
背中は痛いけど、喉笛を掻き切られてはいない。
ヘルポメベロスは俺を押し倒すと、きゅうんきゅうんと鳴きながら俺の頬を舐めている。
「ちょ、うわ、くすぐったいっ」
「魔界の狩人ヘルポメベロスが、ニンゲンに懐いてるだと……?」
驚いていないで助けてくれ、レーシィ!
予想外の展開に俺もみんなも動けないでいると、ヘルポメベロスはふんふんニオイを嗅ぎながら他の場所も舐めてきて……
「ひゃ!?」
く、首筋はダメだ、弱いんだよっ!
引き剥がそうと睨むも、無邪気に懐いてきてるだけのポメ相手じゃ罪悪感が……いやヘルポメベロスだけど!
「そこまでです!」
「あ……た、助かった……」
ヘルポメベロスを後ろからひょいっと抱え上げ、俺を助けてくれたのはピュアリアだった。
彼女は興奮するヘルポメベロスをそっと降ろすと、すっかり乱れた格好になった俺に手を差し伸べる。
「シャラクはわれのモノだ! あっちへ行け!」
「シャラクさん、大丈夫ですか?」
「あ、ああ……ありがとう二人とも」
唸るヘルポメベロスを威嚇して追い払うレーシィ。
なにげにすごいことしてる気がするけど、何かこう、格上オーラでも出てるんだろうか。
とにかく、二人のお陰で助かったんだけど……
「……そこの二人はなんで胸を押さえてうずくまってんだ?」
「い、いやあ、ヘルポメベロスって意外と可愛いかなー……なんつってですね?」
「可愛いと可愛いが戯れ合う楽園であたしは死んだわ」
なんだそりゃ、意味がわからん。
いや、後者はわかりたくもないが。
「それにしてもこれも“ハーレム”の力なのか? ニンゲンがヘルポメベロスに求愛されるとはな」
「へっ、きゅ、求愛っ!?」
ただ戯れついてるだけとかじゃなくて?
「へぇ、だとしたら“ハーレム”たァ想像以上に恐ろしい特性かもしれやせんね。老若男女問わないどころか魔物にまで効いちまうなんざァ」
「そ、そうだな……ちょっと怖くなってきた……」
これ本当に早く帰らないとマズいのでは?
そんな思いから俺は無意識に歩調を速めたのだが、
「ウォルド、老若男女って言ったわよね……待って、男に効いてる場面あったかしら……?」
そのお陰でルルリエが何やらぶつぶつ言っていたことは、幸い……なのかは知らないが、俺には聴こえなかった。
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