ハーレム粉砕☆勇者様っ!
コンビニの自動ドアを潜ったら異世界で勇者にされておまけに勝手にモテモテになるとか言われてもう帰りたい。
途方に暮れていたところで出会ったピュアリア姫にもさっそく効力を発揮している“ハーレム”の特性……年齢的にだいぶ犯罪臭するんで勘弁してほしいんだけどクーリングオフは不可らしい。
「シャラクさん?」
「あ、ああ、すまん。ボーッとしてた」
「お疲れなのですね……急に異世界に来てしまって、慣れないことも沢山ありますよね」
「うん、まあ……どこか休めるところはないのか?」
いくら能力強化されているとはいえ、立て続けにいろいろあれば疲れもする訳で……
この場合、精神的疲労がほとんどなんだけど、そもそも俺仕事帰りだからな。
「近くに村があります。宿を借りておりますのでそこで一晩休みましょう」
「村の宿ねぇ……そういや、ピュアリアはお姫様なんだよな。なんでひとりでこんなところに?」
「シャラクさんが召喚された魔法陣のある神殿、あそこを守るのが王族の役目でして……そして先日神殿に勇者様が現れると、女神様からお告げがあったのです」
「それで管理人として見回りに来たと」
「はい」
普通に話している分には、ピュアリアは素直でいい子だと思う。
ただその“いい子”は近所とか親戚の歳の離れた子供に対するアレで……一回り以上離れているんだから、当たり前の感覚だろう。
だから……
「そうしたらこんな素敵な勇者様に出逢えたんです……!」
「あー、はいはい」
頼むからそのキラキラした目をこっちに向けないでくれ……いたたまれねえ!
と、
「キサマが勇者かぁ!」
「は?」
突然の不意討ち……容赦のない斬撃が俺を襲った。
「あっぶ……なにするんだよ!」
「フン、さすがに伝説の勇者ともなるとそう簡単にはいかんか」
ていうか俺、今ずいぶん軽やかに避けたな?
女神が言うように身体能力がだいぶ強化されてるみたいだが、今はそんなことに気を取られている場合ではなさそうだ。
「えーと……お嬢ちゃん、そんな刃物振り回したら危ないぞ?」
「お嬢ちゃんではない! 我が名はレーシィ、誇り高き魔族ぞ!」
「魔族……! シャラクさん、油断してはいけません!」
レーシィと名乗った少女はピュアリアより小柄で、少し年下に見える。
紫色のショートヘアに褐色肌、キツめの赤い目、尖った耳。
黒を基調とした服装といい、全体的な印象はピュアリアと対象的のようだ。
「魔族って、雰囲気的に魔王の手先?」
「はい。見た目は可愛らしいお嬢さんですが、恐らく高い能力を秘めているかと……」
「かっ、可愛らしい言うなぁ!」
可愛い、は御法度らしく怒りに大きく開いた口からは鋭い牙が覗く。
うーん、なんだろうこの猫が威嚇してる感。
「それでその誇り高き魔族が何か用か?」
「それはもちろん勇者、キサマを倒すために……なっ!?」
えっ、なに、なんかあった?
レーシィは俺の顔をじっと見つめ、固まっている。
「漆黒の髪に黒曜石の瞳……髪も目も美しい黒、だと……上位魔族でもそうそう揃っていないぞ……!」
いやうちの世界、というか国にゴロゴロおりますが。
「えーとピュアリア、黒髪黒目ってこの世界じゃ珍しいの?」
「言われてみればそうですね……茶髪や赤毛は多いのですが。あの反応を見るに黒色は魔族のステータスのようですね」
「はあ……まあ、ところ変わればいろいろ変わるわな」
ていうかあのお嬢ちゃん、俺を見て美しいっつったか?
「はっ!? ゆ、勇者め、そんな姿でわれを惑わすとは卑怯な!」
「どんな姿に見えてんの!?」
あっこれもう“ハーレム”効いちゃってるなこの子……
「お、落ち着くんだお嬢ちゃん! 今の俺は女神に勝手に授けられた特性のせいで……」
「お嬢ちゃんじゃない!」
俺の言葉に強く否定を返したレーシィは、直後顔を赤らめるともじもじして、
「……レーシィと、呼べ」
……自惚れるつもりはないけど、さすがにこの熱視線の意味がわからない俺じゃないぞ。
「だっ、だめです! 魔王の手先が勇者様に恋だなんて……は、離れてくださいっ!」
「ふん、勘違いするなよ! われが勇者に惚れたのではない、勇者はわれのモノになるだけだ! キサマこそ離れろ、ニンゲン!」
う、うわー、二人に挟まれて両側から引っ張られて、俺ハーレムラブコメの主人公みたーい……
「いやちょっと勘弁っ……誰か助けてぇー!」
村への道のり、異世界の空に俺の情けない悲鳴が響き渡る。
どこか遠くで女神が無責任に朗らかに笑う声が聴こえた気がした。
途方に暮れていたところで出会ったピュアリア姫にもさっそく効力を発揮している“ハーレム”の特性……年齢的にだいぶ犯罪臭するんで勘弁してほしいんだけどクーリングオフは不可らしい。
「シャラクさん?」
「あ、ああ、すまん。ボーッとしてた」
「お疲れなのですね……急に異世界に来てしまって、慣れないことも沢山ありますよね」
「うん、まあ……どこか休めるところはないのか?」
いくら能力強化されているとはいえ、立て続けにいろいろあれば疲れもする訳で……
この場合、精神的疲労がほとんどなんだけど、そもそも俺仕事帰りだからな。
「近くに村があります。宿を借りておりますのでそこで一晩休みましょう」
「村の宿ねぇ……そういや、ピュアリアはお姫様なんだよな。なんでひとりでこんなところに?」
「シャラクさんが召喚された魔法陣のある神殿、あそこを守るのが王族の役目でして……そして先日神殿に勇者様が現れると、女神様からお告げがあったのです」
「それで管理人として見回りに来たと」
「はい」
普通に話している分には、ピュアリアは素直でいい子だと思う。
ただその“いい子”は近所とか親戚の歳の離れた子供に対するアレで……一回り以上離れているんだから、当たり前の感覚だろう。
だから……
「そうしたらこんな素敵な勇者様に出逢えたんです……!」
「あー、はいはい」
頼むからそのキラキラした目をこっちに向けないでくれ……いたたまれねえ!
と、
「キサマが勇者かぁ!」
「は?」
突然の不意討ち……容赦のない斬撃が俺を襲った。
「あっぶ……なにするんだよ!」
「フン、さすがに伝説の勇者ともなるとそう簡単にはいかんか」
ていうか俺、今ずいぶん軽やかに避けたな?
女神が言うように身体能力がだいぶ強化されてるみたいだが、今はそんなことに気を取られている場合ではなさそうだ。
「えーと……お嬢ちゃん、そんな刃物振り回したら危ないぞ?」
「お嬢ちゃんではない! 我が名はレーシィ、誇り高き魔族ぞ!」
「魔族……! シャラクさん、油断してはいけません!」
レーシィと名乗った少女はピュアリアより小柄で、少し年下に見える。
紫色のショートヘアに褐色肌、キツめの赤い目、尖った耳。
黒を基調とした服装といい、全体的な印象はピュアリアと対象的のようだ。
「魔族って、雰囲気的に魔王の手先?」
「はい。見た目は可愛らしいお嬢さんですが、恐らく高い能力を秘めているかと……」
「かっ、可愛らしい言うなぁ!」
可愛い、は御法度らしく怒りに大きく開いた口からは鋭い牙が覗く。
うーん、なんだろうこの猫が威嚇してる感。
「それでその誇り高き魔族が何か用か?」
「それはもちろん勇者、キサマを倒すために……なっ!?」
えっ、なに、なんかあった?
レーシィは俺の顔をじっと見つめ、固まっている。
「漆黒の髪に黒曜石の瞳……髪も目も美しい黒、だと……上位魔族でもそうそう揃っていないぞ……!」
いやうちの世界、というか国にゴロゴロおりますが。
「えーとピュアリア、黒髪黒目ってこの世界じゃ珍しいの?」
「言われてみればそうですね……茶髪や赤毛は多いのですが。あの反応を見るに黒色は魔族のステータスのようですね」
「はあ……まあ、ところ変わればいろいろ変わるわな」
ていうかあのお嬢ちゃん、俺を見て美しいっつったか?
「はっ!? ゆ、勇者め、そんな姿でわれを惑わすとは卑怯な!」
「どんな姿に見えてんの!?」
あっこれもう“ハーレム”効いちゃってるなこの子……
「お、落ち着くんだお嬢ちゃん! 今の俺は女神に勝手に授けられた特性のせいで……」
「お嬢ちゃんじゃない!」
俺の言葉に強く否定を返したレーシィは、直後顔を赤らめるともじもじして、
「……レーシィと、呼べ」
……自惚れるつもりはないけど、さすがにこの熱視線の意味がわからない俺じゃないぞ。
「だっ、だめです! 魔王の手先が勇者様に恋だなんて……は、離れてくださいっ!」
「ふん、勘違いするなよ! われが勇者に惚れたのではない、勇者はわれのモノになるだけだ! キサマこそ離れろ、ニンゲン!」
う、うわー、二人に挟まれて両側から引っ張られて、俺ハーレムラブコメの主人公みたーい……
「いやちょっと勘弁っ……誰か助けてぇー!」
村への道のり、異世界の空に俺の情けない悲鳴が響き渡る。
どこか遠くで女神が無責任に朗らかに笑う声が聴こえた気がした。