~流れ星は霊峰へ~

 その呼び名に相応しい景観が訪れた者の溜め息を誘う雪灯りの都、ネージュにて。

 街の入口でデュー達が出会ったトリフとヴァニーユという夫婦は、今は遠く離れた中央大陸のフォンダンシティにいる名工・ガトーの関係者でオグマのよく知る人物であった。
 その関係というのがまた一同を驚かせるものだったが、二人は娘のショコラに会いに行く途中で、話はその先でしようと言う。

「あの強面頑固親父の娘さん、ですか……」

 リュナンの脳裏に三ヶ月もの間みっちりとしごかれた、というかパシリに使われた記憶がありありと甦る。
 ギラギラとした眼光は別に怒っている訳じゃない、とは本人談。

 そのガトーの娘だというならやっぱり迫力ある怖い人なのか、などとまだ見ぬ女性にあることないこと失礼な妄想を膨らませていると、

「身内を前に随分な言い様だな」
「はひっ、すすすすいません!」

 こちらはクリスタリゼの空気を思わせる、キンと鋭く射貫くような眼。
 ガトーの兄だというトリフは、弟のような見るからに鬼瓦な見た目ではないが、種類の違う恐怖をリュナンに植え付けた。

「いいのよリュナン君、あの人ずっとあの調子なのね。どうにも素直じゃなくて……元気にしてるかしら?」
「え、ええ、それはもう……」

 対してヴァニーユは少し困ったような柔和な笑顔で「素直じゃないのは兄弟揃ってなんだけど」と小声で付け足す。

 そんな青年を挟んだ対照的な夫婦の構図を前に、

「春の女神と冬将軍、ね」
「……だな」

 イシェルナとデューはこっそりと感想を口にした。
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