~独りじゃない~(スキットなし)
――いつから歯車が狂い始めた?
世界を食い荒らし、満たされて、それでも足りなければまた次の世界を探すつもりでいたのに。
こんな、弱くて脆い、小さなモノ達に。
どうして、まだ抵抗されているというんだ?
それどころか……――
「一度はこの圧倒的な力で捩じ伏せられたはずだ……それなのに、何故!」
浄化の力を帯びた刃で斬りつけられ、“総てに餓えし者”が叫ぶ。
はじめこそ人々の負の感情から集めた力で圧倒していたが、次第にその勢いをなくしていた。
「何故? そうだな、それはお前のその力が、そこで満足して頭打ちになっちまってるからじゃねーか?」
「根性が足りん! というやつじゃの」
コンジョウ?
“中”を探れば、随分昔に喰った騎士の記憶にあった言葉だった気がする。
だがそれは、魔物にとっては不可解な、意味のわからないモノであった。
「せいやぁっ!」
思考にとらわれ動きを止めた魔物に、すかさずイシェルナが奇襲をかける。
「沢山の生き物から記憶と知識を吸収したって割に、なんにもわかってないのね!」
彼女はそう言いながら、気合いの入った掛け声と共に流れるような連打をかます。
「おらぁッ!」
「ぐふっ!?」
そして止めの一撃を入れ、飛び退くと次はオグマが小刀を手に懐に入り込んだ。
「確かに、お前は強大な力を手にした。そして我々は一人一人……いや、束になっても、単純な力だけではお前には敵わないかもしれない」
左手に携えた刃と、魔力で造り出したのだろう右手の投げナイフの、途切れることのない連撃。
「それでも……!」
最後に両手を小刀に添えて構え、無詠唱で氷術を放ち、その反動で後退する。
そこに、
「どっかぁーん!」
タイミングを合わせたのか、今度はリュナンが飛び込み、斧槍に全体重を乗せて振り下ろした。
「あんたがそこから動かないなら、俺達の力が届くかもしれないってこと!」
「調子にッ……!」
やられっぱなしでなるものかと“総てに餓えし者”が振るった腕は、透明な壁によって阻まれる。
フィノによる、一瞬の絶対防御の術である。
「まだ、わたし達は戦える!」
「こいつで正面から堂々、勝負じゃ!」
ここまででたっぷり詠唱時間を稼いだミレニアがシュクルと並んで進み出る。
「その身に宿せ、大精霊……全乗せじゃあああああ!」
全身全霊をこめたミレニアの叫びが響き渡る。
直後に放たれた目映い輝きと爆発は、ツギハギの塔の外からも見えたという。
世界を食い荒らし、満たされて、それでも足りなければまた次の世界を探すつもりでいたのに。
こんな、弱くて脆い、小さなモノ達に。
どうして、まだ抵抗されているというんだ?
それどころか……――
「一度はこの圧倒的な力で捩じ伏せられたはずだ……それなのに、何故!」
浄化の力を帯びた刃で斬りつけられ、“総てに餓えし者”が叫ぶ。
はじめこそ人々の負の感情から集めた力で圧倒していたが、次第にその勢いをなくしていた。
「何故? そうだな、それはお前のその力が、そこで満足して頭打ちになっちまってるからじゃねーか?」
「根性が足りん! というやつじゃの」
コンジョウ?
“中”を探れば、随分昔に喰った騎士の記憶にあった言葉だった気がする。
だがそれは、魔物にとっては不可解な、意味のわからないモノであった。
「せいやぁっ!」
思考にとらわれ動きを止めた魔物に、すかさずイシェルナが奇襲をかける。
「沢山の生き物から記憶と知識を吸収したって割に、なんにもわかってないのね!」
彼女はそう言いながら、気合いの入った掛け声と共に流れるような連打をかます。
「おらぁッ!」
「ぐふっ!?」
そして止めの一撃を入れ、飛び退くと次はオグマが小刀を手に懐に入り込んだ。
「確かに、お前は強大な力を手にした。そして我々は一人一人……いや、束になっても、単純な力だけではお前には敵わないかもしれない」
左手に携えた刃と、魔力で造り出したのだろう右手の投げナイフの、途切れることのない連撃。
「それでも……!」
最後に両手を小刀に添えて構え、無詠唱で氷術を放ち、その反動で後退する。
そこに、
「どっかぁーん!」
タイミングを合わせたのか、今度はリュナンが飛び込み、斧槍に全体重を乗せて振り下ろした。
「あんたがそこから動かないなら、俺達の力が届くかもしれないってこと!」
「調子にッ……!」
やられっぱなしでなるものかと“総てに餓えし者”が振るった腕は、透明な壁によって阻まれる。
フィノによる、一瞬の絶対防御の術である。
「まだ、わたし達は戦える!」
「こいつで正面から堂々、勝負じゃ!」
ここまででたっぷり詠唱時間を稼いだミレニアがシュクルと並んで進み出る。
「その身に宿せ、大精霊……全乗せじゃあああああ!」
全身全霊をこめたミレニアの叫びが響き渡る。
直後に放たれた目映い輝きと爆発は、ツギハギの塔の外からも見えたという。