~信じて頼る~

「む、うぅ……」

 ぴこぴこ、と頭巾の下の猫耳が動き、衣服の一部にカムフラージュされた長い尻尾が波打つ。
 赤銅の猫目をゆるりと開けた時、カッセは何も、出口すらもない部屋に独りだった。

「何がどうなって……デュー殿、皆!?」

 辺りに仲間の姿を確認することはできず、それならばと聖依獣の優れた五感で探ってみるが壁の向こうにもそれらしき気配は感じられない。
 となれば少なくとも、近辺にはいないのだろう。

「とりあえずここを出てみるか……単独行動も久しいな」

 元々マンジュの長の命でデュー達を影ながら見守っていたカッセは、単独の隠密行動を得意としている。
 仲間と共にいるのが当たり前のようになってしまっているなど、少し前の自分に言ったら信じるだろうか。

 首から提げている勾玉の形をした蛍煌石を手にすると意識を集中させ、壁にマナを照射した。
 細く鋭い光がゆっくりと静かに、小柄なカッセが通れるだけの穴を開ける。

「……これでよし。あとはどこに向かうかだが……」

 物音を立てず、気配を消すのも慣れたもので、身を隠し警戒しながら通路に出て歩いていくと、

「――!」

 曲がり角の先に、微かだが自分以外の生物の気配を察知した。

 仲間、だろうか?

 折り畳み式の戦輪を展開させ、研ぎ澄ました感覚を体現するようにすうっと目を細め、足音を消して頭を下げ踏み込む。

 曲がると同時に遠心力を受けた武器は……

「「!」」

 同様に構えていた仲間……デューの、喉元近くで止められた。

「デュー殿……?」
「カッセか?」

 二人は互いに視線を絡ませたまま、武器を引いて距離をおく。

 この状況で仲間の一人と合流できたのは喜ばしいことだが、

(……タイミングが良すぎる。これはもしや、偽者……?)

 カッセの胸中に湧いた疑念が、衣服の下に隠した体毛を逆立てさせていた。
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