~踏まれた花~
デュー達全員が各属性の精霊と契約を終えた後、報告と今後の相談、そしてあれほど釘を刺したにもかかわらずホイホイとフォンダンシティまで外出していたモラセス王がきちんと城に帰ってきているかの確認を兼ねて、一旦王都に戻ることにした。
しかし……
「あ、スタードさん!」
「騎士団長様!」
城下町に着いて早々に、住人が一行の中にスタードの姿を見つけると飛ぶように駆け寄り、押し掛けてくる。
「よしてくれ、私はもうとっくに団長を退いて……」
「慕われてるんですね、スタードさん」
「教官はモテるからなぁ」
にやにやと妙に含んだ物言いをする教え子を視線で窘める元騎士団長だったが、住人達の次の言葉で表情が一変する。
「最近フローレットお嬢様の姿が見えなくて、屋敷も様子がおかしくて、騎士団で捜索にあたってるって……騎士団長さんなら何か詳しい話知らないか?」
「なんだと?」
フローレットといえば、貴族街に住む穏やかで美しい令嬢だ。
トランシュの婚約者でもあり、彼の仕事が忙しくてなかなか会えないが仲は睦まじく、健気に帰りを待ち続けていたのをデュー達は知っていた。
「それとつい最近、トランシュ様が久し振りに帰ってきたと思ったら慌てた様子で王都を飛び出して行ったわ。一体どうしたのかしら……」
トランシュに最後に会ったのはイシェルナとオグマが北大陸へ向かった時で、そこでは特に変わった様子はなかったのだが……
「ただ事じゃなさそうだな……皆、すまないが」
「一度フローレットの屋敷に寄りたいんだろ。わかってるって」
みんなもいいよな、と聞くまでもないことは、全員の表情が物語っていた。
「お嬢様は優しくて、いつもにこやかで、いるだけで城下町が華やかになるんだよ」
「トランシュ様だって王都の英雄でアイドルよ。なにかあったら、私……」
不安がる町の人々を「わかったわかった」と宥めると、スタードは咳払いをする。
「こちらでも調べてみるから皆はもう少し待っていてくれ」
「そうとなったらお嬢様の屋敷へ行ってみましょう。何か手懸かりがあるかも」
デュー達はマーブラム城を目指していた足の行く先を変え、ぞろぞろと貴族街の方へ歩き出す。
王都の空には、その全体を結界で包んで守る蛍煌石のモニュメントが、高く輝いていた。
しかし……
「あ、スタードさん!」
「騎士団長様!」
城下町に着いて早々に、住人が一行の中にスタードの姿を見つけると飛ぶように駆け寄り、押し掛けてくる。
「よしてくれ、私はもうとっくに団長を退いて……」
「慕われてるんですね、スタードさん」
「教官はモテるからなぁ」
にやにやと妙に含んだ物言いをする教え子を視線で窘める元騎士団長だったが、住人達の次の言葉で表情が一変する。
「最近フローレットお嬢様の姿が見えなくて、屋敷も様子がおかしくて、騎士団で捜索にあたってるって……騎士団長さんなら何か詳しい話知らないか?」
「なんだと?」
フローレットといえば、貴族街に住む穏やかで美しい令嬢だ。
トランシュの婚約者でもあり、彼の仕事が忙しくてなかなか会えないが仲は睦まじく、健気に帰りを待ち続けていたのをデュー達は知っていた。
「それとつい最近、トランシュ様が久し振りに帰ってきたと思ったら慌てた様子で王都を飛び出して行ったわ。一体どうしたのかしら……」
トランシュに最後に会ったのはイシェルナとオグマが北大陸へ向かった時で、そこでは特に変わった様子はなかったのだが……
「ただ事じゃなさそうだな……皆、すまないが」
「一度フローレットの屋敷に寄りたいんだろ。わかってるって」
みんなもいいよな、と聞くまでもないことは、全員の表情が物語っていた。
「お嬢様は優しくて、いつもにこやかで、いるだけで城下町が華やかになるんだよ」
「トランシュ様だって王都の英雄でアイドルよ。なにかあったら、私……」
不安がる町の人々を「わかったわかった」と宥めると、スタードは咳払いをする。
「こちらでも調べてみるから皆はもう少し待っていてくれ」
「そうとなったらお嬢様の屋敷へ行ってみましょう。何か手懸かりがあるかも」
デュー達はマーブラム城を目指していた足の行く先を変え、ぞろぞろと貴族街の方へ歩き出す。
王都の空には、その全体を結界で包んで守る蛍煌石のモニュメントが、高く輝いていた。