~銀世界の再会~
白き大地の有名なマナスポットがある霊峰近く、雪灯りの都ネージュにて。
聖依獣の長老に楔の術を託されたオグマはイシェルナと共に、霊峰アラザンへ発つ準備をしていた。
「いきなりアラザンへは飛ばしてくれなかったのね……って、当たり前か。さすがに準備は必要だものね」
ちら、とイシェルナが仲間を視線で窺う。
同行と言うには妙に遠い微妙な位置で、彼は道具屋の品物を手に取りながら心ここに在らずといった風にぼんやりしていた。
「……ねぇ、大丈夫なの?」
「あっ、いやその……すまない」
しっかりしてよね、と溜め息が漏れる。
王を浄化したかと思えば友人であるザッハの暴走、結界の崩壊……いろいろと理解が追いつかない状況が続いているが、それでも前に進むためには、肝心のオグマの足元が覚束ないようでは困るのだ。
「どうしてデュー君はあたしとあなたを二人っきりにしたのかしら……」
「それは戦力面を考えてだと言っていたようだが。あと、この土地との相性らしい」
オグマはアラザン霊峰に満ちる氷のマナと同調し、術の威力を高めていた。
そして各地を旅しているからかイシェルナは雪道にも強く、他のメンバーよりもこの厳しい土地で動けるようだった。
他と違い人数が心許ないがどうやってもどこかしらこうなってしまうため、戦闘経験豊富な二人なら、とデューはチームを分けたのである。
「わかってるわよそんなこと」
「なら、」
「あたしが言ってるのは、これから二人で力を合わせなきゃいけないのに、なんでさっきから微妙に気まずい空気作ってんのってこと!」
ずい、とイシェルナが詰め寄れば距離が縮まった分だけオグマもさがる。
彼にとってそれは無意識のことらしく、ハッとして慌て出した。
「す、すまない、そんなつもりじゃ……」
「わざとじゃなかったのね……女性と二人っきりって状況が苦手なのかしら?」
「そうかもしれない……そういえばそんな状況、滅多になかったな」
他人事のように呟く男の隣で溜め息がまたひとつ。
こんな調子でマナスポットへ向かって、役目を果たせるのだろうか、と。
「ねぇ、やっぱりザッハさんと戦うのは、やりづらい?」
するりと潜り込むように、イシェルナが距離を詰める。
人目をひく美人でプロポーションも抜群、そんな魅力的な女性が誘うような色香を漂わせ上目遣いでのぞきこんでもオグマは反射的に顔をそらすだけで、
「…………そう、だな。彼は私の王都で初めてできた、大切な友人だから」
水浅葱の瞳に陰を落として、そう答えるのだった。
聖依獣の長老に楔の術を託されたオグマはイシェルナと共に、霊峰アラザンへ発つ準備をしていた。
「いきなりアラザンへは飛ばしてくれなかったのね……って、当たり前か。さすがに準備は必要だものね」
ちら、とイシェルナが仲間を視線で窺う。
同行と言うには妙に遠い微妙な位置で、彼は道具屋の品物を手に取りながら心ここに在らずといった風にぼんやりしていた。
「……ねぇ、大丈夫なの?」
「あっ、いやその……すまない」
しっかりしてよね、と溜め息が漏れる。
王を浄化したかと思えば友人であるザッハの暴走、結界の崩壊……いろいろと理解が追いつかない状況が続いているが、それでも前に進むためには、肝心のオグマの足元が覚束ないようでは困るのだ。
「どうしてデュー君はあたしとあなたを二人っきりにしたのかしら……」
「それは戦力面を考えてだと言っていたようだが。あと、この土地との相性らしい」
オグマはアラザン霊峰に満ちる氷のマナと同調し、術の威力を高めていた。
そして各地を旅しているからかイシェルナは雪道にも強く、他のメンバーよりもこの厳しい土地で動けるようだった。
他と違い人数が心許ないがどうやってもどこかしらこうなってしまうため、戦闘経験豊富な二人なら、とデューはチームを分けたのである。
「わかってるわよそんなこと」
「なら、」
「あたしが言ってるのは、これから二人で力を合わせなきゃいけないのに、なんでさっきから微妙に気まずい空気作ってんのってこと!」
ずい、とイシェルナが詰め寄れば距離が縮まった分だけオグマもさがる。
彼にとってそれは無意識のことらしく、ハッとして慌て出した。
「す、すまない、そんなつもりじゃ……」
「わざとじゃなかったのね……女性と二人っきりって状況が苦手なのかしら?」
「そうかもしれない……そういえばそんな状況、滅多になかったな」
他人事のように呟く男の隣で溜め息がまたひとつ。
こんな調子でマナスポットへ向かって、役目を果たせるのだろうか、と。
「ねぇ、やっぱりザッハさんと戦うのは、やりづらい?」
するりと潜り込むように、イシェルナが距離を詰める。
人目をひく美人でプロポーションも抜群、そんな魅力的な女性が誘うような色香を漂わせ上目遣いでのぞきこんでもオグマは反射的に顔をそらすだけで、
「…………そう、だな。彼は私の王都で初めてできた、大切な友人だから」
水浅葱の瞳に陰を落として、そう答えるのだった。