~銀世界~
パータ、キャティの兄妹と出会ったデュー達は、彼らの船・ブラックカーラント号によってまっすぐ北大陸へ向かっていた。
「おらおらァ! 振り落とされんなよてめーら!」
腹の底から響くような荒々しい声はいったい誰のものだろうと顔を見合わせれば、寡黙な操舵士・パータのそれだった。
「びっくりした? パータ兄ぃ、舵を握るとキャラ変わるんだよ」
「あら、男らしくて素敵じゃない。あたしは好きよ、こういうの♪」
どこかの誰かさんと違って、とイシェルナは視界の端で屍と化しているリュナンを一瞥する。
「船酔いは大丈夫だったんじゃないのかのう?」
「こっ……この船、近道できるのはいいんですけど、船が通れないとこを下の亀ががしょーんって、その揺れでっ……うぷ」
ブラックカーラント号の下で船を動かしているのは、巨大な亀ヨーグル。
深い部分ではすいすい泳ぎ、浅くて通常の船なら通れないような場所ではその四本の足で歩いて渡る、という仕組みでマンジュ島からクリスタリゼへの直航を可能にしているのだが、いかんせん歩く時の揺れが激しいのだ。
「けど、便利よね。こうやって世界のあちこちに行けるんだから」
「君達は何か目的があって旅を?」
「まぁね~……あ、見えてきたよ、クリスタリゼ大陸!」
キャティが示した先には、グランマニエともジャンドゥーヤとも違う、灰色の空の下に広がる白の大地が。
魔物化したモラセス王は、本当にこの大陸のどこかにいるのだろうか。
「けどけっこー寒いよ、準備はできてる? 特にフィノ」
「え、わたし?」
「ジャンドゥーヤの神子姫さんでしょ? 東大陸なんて一番ここに縁なさそうだもんね」
東大陸と北大陸は基本的に中央大陸を横断しなければ行き来することが出来ず、交流も少ない。
フィノだって今回のようなことがなければ、恐らく一度も訪れる機会がなかったかもしれない。
(本当に、数奇な廻り合わせが重なってここまで来たのね……パスティヤージュで暮らしていた頃は想像もしなかった、こんな冒険)
不謹慎とは思いながらも、彼女は静かに胸の高鳴りを感じていた。
「おらおらァ! 振り落とされんなよてめーら!」
腹の底から響くような荒々しい声はいったい誰のものだろうと顔を見合わせれば、寡黙な操舵士・パータのそれだった。
「びっくりした? パータ兄ぃ、舵を握るとキャラ変わるんだよ」
「あら、男らしくて素敵じゃない。あたしは好きよ、こういうの♪」
どこかの誰かさんと違って、とイシェルナは視界の端で屍と化しているリュナンを一瞥する。
「船酔いは大丈夫だったんじゃないのかのう?」
「こっ……この船、近道できるのはいいんですけど、船が通れないとこを下の亀ががしょーんって、その揺れでっ……うぷ」
ブラックカーラント号の下で船を動かしているのは、巨大な亀ヨーグル。
深い部分ではすいすい泳ぎ、浅くて通常の船なら通れないような場所ではその四本の足で歩いて渡る、という仕組みでマンジュ島からクリスタリゼへの直航を可能にしているのだが、いかんせん歩く時の揺れが激しいのだ。
「けど、便利よね。こうやって世界のあちこちに行けるんだから」
「君達は何か目的があって旅を?」
「まぁね~……あ、見えてきたよ、クリスタリゼ大陸!」
キャティが示した先には、グランマニエともジャンドゥーヤとも違う、灰色の空の下に広がる白の大地が。
魔物化したモラセス王は、本当にこの大陸のどこかにいるのだろうか。
「けどけっこー寒いよ、準備はできてる? 特にフィノ」
「え、わたし?」
「ジャンドゥーヤの神子姫さんでしょ? 東大陸なんて一番ここに縁なさそうだもんね」
東大陸と北大陸は基本的に中央大陸を横断しなければ行き来することが出来ず、交流も少ない。
フィノだって今回のようなことがなければ、恐らく一度も訪れる機会がなかったかもしれない。
(本当に、数奇な廻り合わせが重なってここまで来たのね……パスティヤージュで暮らしていた頃は想像もしなかった、こんな冒険)
不謹慎とは思いながらも、彼女は静かに胸の高鳴りを感じていた。